鈴木:金魚×10の鈴木ユキオです。ありがとうございました。
司会:はい。それではい、堤さんお願いします。
堤:よく拝見させていただいてるんですけれども、個人で作品を作る時、もしくは金魚でやりたいと思っていることを直接伺ったことないんですよね。どういう風にカンパニーの中で、創作の作業を進めているのか教えてください。
鈴木:僕が好きな形というのが、非常にコンタクトがないというか、チームで作るときも基本的にはすれ違うっていうか、すべて関係ないようだけれども、全体としてみると関わってるというか。関わってるわけじゃないですけれども成立していくみたいな、そういう感じをグループで作るのが好きですね。
堤:ユキオさんの方からこうして欲しいとか、あるいは普通のダンスみたいに、ここはこういう動きでって振付けるようなことはするんですか? それとも一人ひとりのキャラクターとか身体性を見ていってそこからチョイスしたり、ピックアップする?
鈴木:今日のは、この女の子二人に関しては確実につけています。今日はたまたまダンサーがいなかったというのもありまして、体に合うとか合わないとかではなく、振り付けをしてしまっています。そのほかに関しては、その人のキャラクターと個性というものを、いかに作品の中で生かすかっていうことも考えて作っています。
堤:全体として何か訴えたいものとか、ここを見て欲しいというものは?
鈴木:特に言葉として言いたいというものはないんですけど。基本的に毎回、やりたい事ってのは同じ。核は同じことがある。僕の場合は映像として頭に浮かんでくるので、その映像を作品にしていくという感じです。言葉で何か言いたいというものはないんですけど。
伊藤:ちらっとでもいいので、そのいつも浮かぶ映像みたいなものを教えていただけると。
鈴木:ロシアの映画とかが結構好きで、あの時間の感じというか、ああいう感覚。悲しいようなおかしいような、どちらでも見られるというか、自分のその時の気持ちによって作品が見えるというようなものがすごく好きです。
伊藤:例えば作品の中で、今、身体だけ使ってやっていらっしゃるんですけれども、言葉、例えば声を使ってみたり、身体以外のものを使ったりすることはあるんですか?
鈴木:公演によっては言葉を。単純に言葉として、詩の朗読のようにしてしまうこともありますし、あとは実際に動きながら言葉を使うこともあります。今のところそれくらい。
ウニタ:大雑把な言い方をしまうと、舞踏とコンテンポラリーの融合したものというような見方が、ちょっとできちゃうんですけど。今日のは、舞踏的なひとつひとつの動きが時々見出されつつ、それをコンテンポラリーダンス風に構成されたような雰囲気があった。それと一次審査の時のビデオは、舞踏的な動きをコンテンポラリー的な動きが切断していくように見えて。鈴木さんの経歴を見ますと、長らく、1997年から舞踏をやっていたということもあって、舞踏っていうベースと、今やろうとしている表現っていうのが、どういうプロセスを経て今、ここに来ているのかな、と。舞踏というものになんらかの限界を覚えているのか、でも舞踏自体の動きが残ってるってことは、それなりに舞踏の良さみたいなものをより新しい形で拡大しようとしてるのか……。
鈴木:そうですね、この場ではそういう風に舞踏とコンテンポラリーダンスという言葉で言ってしまいましょう。僕、元々は典型的な舞踏というものをやってまして。舞踏もすごい狭い世界ですので、色々制約がある。だんだん窮屈になってきまして、もう少し自由にやりたいなと、飛び出したところですね。舞踏のお客さんからは、やっぱりそっぽを向かれてしまいまして。それならいいや、もっと自由に関係なくやろうと、ダンスも色々みるようになって。もっとダンスの人たちも自由なんだなと。僕もダンスに対して固定観念がありまして、見ることもなかったんですけれども、見出したら結構自由だし、体に対する追求というのは舞踏と同じようにやってると思う。そういうところでジャンルというものは関係ないんだなって。突き抜けてしまえば多分みんな目指す所は一緒というか、同じ所だと思うんで。
ウニタ:割と舞踏的な動きを取り入れてるのは意識的なもんですかね。それとも無意識で?
鈴木:そうですね。前回のビデオ審査は分からないんですけど、今回に関しては部分を強調させるっていうのを試してみようと思った。10分間で舞踏作品をもってこられないと思ったので、じゃあ何かひとつやってみようかなってことで。
ウニタ:それが結果的に舞踏的な動きになっちゃったんですか?
鈴木:うーん、そうですね、僕はそれを舞踏的だなと思ってやってるわけではないですけど。ただ、いわゆるダンスにはならないようにというのは意識します。
ウニタ:あと、笑いの要素ですね。今日もズボンが落ちたりするところあったりして、おかしかったんですけど、ビデオで見た作品とか結構笑えたりして。その辺、笑いっていうものは意識してらっしゃるんですか?
鈴木:好きで、作品として自然に生まれてくるものは好きなんですけども、笑いをとりたいとかいう気持ちはないです。
ウニタ:あと、金魚×10というグループ名は、やってる作品の方向性となんか関係している名前なんですか?
鈴木:そうですね。最初はひらめきと、金魚ってめでたいんで、10人くらいの人数でなんか楽しいことできないかなっていうのでつけたんですけど。今は、特に。今やりたいことを常にやっていければって思ってるんで。
天野:あの伸ばしていた、あの袖ですね、こんなのしてましたよね。Tシャツの袖。この公演に至るまでにどういうプロセスを経て、ああいう状態に? この公演のために? あの人が日常で偶然ああしちゃってたのを利用したのか?
鈴木:あれに関しては特に意味はなくて、彼に関しては、今日の即興性担当なので、こうしろということはなくて、場所だけを指定している。
天野:でも、ああなるまでに相当時間かかりますよね(笑)。つまり、この公演が始まる時点でどの程度ができていたのかと。彼が?
鈴木:はい。今日やってきました。
堤:参考までに彼のあのシャツは普段から、ああいうシャツなんですか?
鈴木:そうですね。結構普段通りです。これは。
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