特別公演「iOJO!」稽古場レポート
次世代の若い表現者を発掘し、新しい表現の実験的な場を提供しようとするのが、このガーディアン・ ガーデン演劇フェスティバルのコンセプト。厳しいコンペティションを勝ち抜いて選ばれた三団体が、果たして本番でどのような作品を創り出すのか? そしてその稽古場の実態は? 今年も例年同様、前回出場団体の主宰者が、稽古場をこっそり覗き見。作品の裏側に秘める真実を赤裸々にレポートします。
第四週目は「iOJO!」の特別公演。稽古場に「イデビアン・クルー」の斉藤美音子さんが潜入しました。






レポーター:イデビアン・クルー 斉藤美音子さん


斉藤:艶っぽいシーンでしたね。
人見:そうですね。
斉藤:私はダンスばかりなので、演技をしたことが無いのですが、やっぱりすごい女優はすごいなぁと、ただひたすら感心して見させていただきました。
黒川:せっかく来ていただいているので、わざとそこ(艶っぽいシーン)をやってみました(笑)。
斉藤:やったぁ(笑)。女優さん、スタイルがすごく良かったですよね。
人見:すごいですよね。
斉藤:ちょっと自分と比較して「私じゃなー」って(笑)。
黒川:演劇の現場はあまり見たことが無いんですか?
斉藤:そうですね。演劇の中でのダンスシーンということでお仕事をしたことはあるんですけど、ダンスの稽古が中心なので、お芝居のシーンをこんなに細かく創っていく過程は初めて見ました。回数を重ねていくごとに「この瞬間がよくなってる!」ってすごく思えたので「わーっ」って見ていました。
黒川:(笑)たいしたことないですよ。
斉藤:そうですか?
人見:今日は取材ってことだったから(笑)。
斉藤:よそ行きな雰囲気だったんですか?
黒川:ただ、あのシーンは肝だと思っているから、やっぱり丁寧にしなくっちゃと思って。さっきスタイルがいいって言っていた中坪は、私とサークルの同期でなんですけど、今まで一緒にやったことが一度も無くて、今回、初めて一緒にやるんですけど……彼女が「ドン」としてますね。
斉藤:うん「ドン」としてた。
黒川:ハイレグジーザスにいたんですよ。だからある程度までのシモ系には慣れています。
斉藤:シモ系(笑)。ユーモアがあって、押し倒すところも迫力があって、すごくよかったですよ。
黒川:確かに。あれだけ大胆にやってくれると、何でも言えるし、ちゃんとこたえてくれるからやりやすいですね。
斉藤:やっぱり演出家って、言ったことをちゃんとやってもらえるのがいいですよね。
黒川:うん。でもこんなにスムーズにいくとは思いませんでした。もうちょっと手こずるのかなって……。

斉藤:いつも稽古が終わったあとは飲みに行くんですか?
黒川:まあ、行きますね。行かれるんですか?
斉藤:あんまり行かないんですよ。お芝居の人達はわりといつも飲みに行くイメージが勝手にあるんです。
黒川:ダンスの方は、行かないイメージがある。
人見:ダンスの人の方が、ちょっといい汗かいて、終わった後飲みに行きたい感じがするんですけどね。
黒川:汗かくね。確かに。
斉藤:とにかく「早く帰ってお風呂入りたいー」って(笑)。皆さんは飲みに行ったら、やっぱり話すことは舞台のことなんですが?熱く話しているイメージがあるんですけど(笑)。
黒川:うーん。どうなんでしょう……。今回に限っていえば、題材がシェイクスピアで、しかもちょっと意味がわからない話だから、みんなで解釈してたりしますね。
斉藤:ホントに複雑そうで。複雑っていうか……ドロドロ?
黒川:もともとは長男を殺された女王が、タイタスに復讐するというお話なんですけど、それが途中からあまりにも残忍で、逆にタイタスが復讐に立ち上がるという話ですね。最後は2人ぐらいしか生き残ってないという、すごい変な話なんですよ。シェイクスピアっぽくないから、もしかすると違う人が書いたんじゃないかと思ったりしてるんですけど。
斉藤:そうなんですか?
黒川:なんじゃないかなーと思うくらい。完成度もある意味低いし(笑)。 前半が濃厚で、後半があれよあれよという間に終わってしまうという粗い作品なんですよ。でも逆にそこが面白いなと思って。
斉藤:なんで古典をやろうと思ったんですか?
黒川:なんでだろう。今までオリジナルしか書いたことが無かったから、やってみたいとは思っていたんですけど、まさか最初に自分がシェイクスピアに手を出すとは思わなかったですね。この「タイタス・アンドロニカス」という、ほんとにバカバカしくて、古典を感じさせないくだらなさがあって……私、卒論がベケットだったので、古典をやるならベケットや前衛的なものをやるんだと思ってたんですけど、まさかシェイクスピアに手を出すとは思わなかった。
斉藤:そうなんですか。
黒川:悲惨であればあるほど笑えちゃう、悲劇なのに喜劇みたいで、それは別にかわいそうな人を笑うというのとは違うんですけど、そういう悲劇と喜劇の間みたいなモノを観せられればいいなと。とにかく古典という概念をとりたい。もっと身近な物にしたい。
斉藤:笑うしかないってことですよね。
人見:うん。そうですよね。
黒川:エリザベス朝の頃の作品みたいで、当時の人達もあんまりにも酷くて最後は笑ってたそうなんですよ。そんなニュアンスが出ればいいな。
斉藤:私のカンパニーでも、転んで痛いんだけど、格好悪くて笑っちゃうとか、そういったことをダンスにすることもありますね。悲劇っぽく見えるんだけど、本人は笑ってるとか、楽しんでるとか。そういうちょっと切ないけどおかしいって作品が多いですね。だからその悲劇と喜劇の間みたいなことは「なるほどなー」と思います。
人見:イデビアン・クルーは、結成してどれくらいですか?
斉藤:えーと、じゅう……何年だったかな? 大体12年位かな。
黒川:オッホがガーディアン・ガーデンのフェスティバルに出て、その翌年がイデビアン・クルー。
斉藤:次の年ですね。結成は専門学校時代で、フェスティバルに出たのよりも前ですね。ちょっと前(笑)。あんまり覚えてない……。
人見:じゃあ僕らは同期位じゃないですか?
斉藤:オッホさんは?
黒川:劇団にして10年目ですけど、ホントはその2、3年前からやってましたね。
斉藤:オッホという名前が付いたのは?
黒川:92年かな。
人見:92年ですね。そうするともう13年も前だ。
黒川:95年に劇団にしたんで、2005年で10年目。

黒川:転換期ですか?
斉藤:多分、そうだと思います。ここの所、いろいろと挑戦してるような気がしてますね。最近は……劇団イデビアンみたいな。
黒川:セリフを言ったり?
斉藤:そうそう。演出のときも、ホントにお芝居のようなことを言ったりするんですよ。
黒川:井手さんの演出が?
斉藤:そうです。井手さんが。やっぱりお芝居の影響なんでしょうか。転換期なのかな?
黒川:やっぱり言葉が有ると無いでは大きく違うんですかね?
斉藤:やっぱりセリフって何なんだろうって思うんですよ。ごまかしが利かない様な気がして。ダンスはちょっと間違えても、なんかうまくこう……ダンスに関しては、私なんかもうアドリブ女王なんですけど、もしセリフだったらどうなんだろう。どうなんですか?
人見:やっぱり3行飛ばしたりしちゃいますけどね。
斉藤:そうするとストーリーがおかしくなっちゃったりします?
人見:いや、でも何回も練習しているから、「あいつ飛ばしたな」って思って調整したり、「ちょっとそこ飛ばされると困るよ!」みたいなこともあるし。
黒川:でも今回の「タイタス・アンドロニカス」は原作自体に、そういう強引な所とかがあるんで、そこは別にセリフを飛ばしたわけじゃないってことを今のうちに言い訳しておきます。
人見:後半もあっという間に話が進んでいくので、誤解されないようにしないと。ラストもね。
斉藤:私、前回のフェスティバルで初めて自分で演出と振り付けをやったんですけど、やっぱり最後が一番どうしようって悩んで、結局いまだに反省してるんですけど。最後って……やっぱり難しいですよね。
人見:最後のシーンがスッキリすると、お客さんもスッキリしますもんね。
斉藤:そうなんですよね。
人見:最後のシーンに作り手のスッキリした気持ちがないと、お客さんも内容うんぬんは抜きにして、気持ち悪いですよね。
黒川:まー、ハテナにならないで、笑ってもらえるといいなと思って創ってます。ハテナって思うとどこまでもハテナになっちゃう戯曲なので。







セリフ……、声の出し方、言い方、色々な方法で変化をつけ、色んなものにヘンシンできる言葉のマジック。
ダンスを通してもヘンシンできるけど、なかなかムズカシイ。だからちょっと羨ましい気持ち。。。でした。
お芝居は声と空気のダンスなんだ。
私もいっかい………、只今、喉を痛めて??声、負傷中のワタシにはやっぱり務まらないかしら??
斉藤美音子(イデビアン・クルー)