東京デスロック

十数人の普段着姿の若者が、舞台に正対して横一列に並んでおり、やがて笑い始める。 延々、笑い続けた後、ホリゾントに「ロミオと………ジュリエット」のタイトルロールが流れだす。…の部分は、マキューシオ、キャピュレット家の人々など、ロミジュリの全キャスト名。あの笑いの渦は、実は『ロミオとジュリエット』であった、という仕組み。

多田
東京デスロック主宰の多田と申します、ありがとうございました。10分間でみんながなるべく知ってるストーリーということで『ロミオとジュリエット』を選びました。
渡辺
今日のは即興ですか? 演出されたものですか?
多田
はい、もう一回同じことができます。タイミングはありますけど、笑いの質は、シビアでないですね。気になったところはダメ出しをしている、という感じです。稽古は、『ロミオとジュリエット』にしてから2日間くらいしました。それまで「笑う」っていうエチュードを、ワークショップでやってたりしたので。
渡辺
メンバーは、ユニットなんですか? 劇団ではなく。
多田
メンバーは役者2人と僕の3人しかいないので。あとは公演に合わせて人を呼んでいます。
『ロミオとジュリエット』の具体的にどの場面、どの役とかという設定はないんですか?
多田
冒頭から、一幕から五幕まですべてやってます。まず、映像を出すまで何も分からないので、人が笑っていてコミュニケーションを取ってる様とか、取らなかったりだとか、笑い方だとか、何をきっかけに笑いを取ってるかとか、観察してほしくて。でもそれは、実は『ロミオとジュリエット』という戯曲によって構成されていて、人間関係も描かれている。それで「あ、『ロミオとジュリエット』ってすごいんだ」と思っていただければ。最初っから『ロミオとジュリエット』だと思って観てほしかったわけではないんです。
ウニタ
一次審査のビデオ(『再生』)は、宴会をえんえん繰り返しやっていたので、何かドラマ的なものに反対した作りをしてるのか、あるいは意味みたいなものから逃れたいとか、そういう意図があるのかなと。最初ただ笑ってるだけの情景を見て、これはやっぱ反・演劇的なもので、むしろ絵画とか音楽として見るべきものなんだろうかと思って見てたんですけど、今の説明を聞いて、非常に意味・背景がよく考えられている、とハタと気がついたのですが。ということは、例えばビデオにあったお芝居も、そういった背景に基づいて作られている?
多田
あれは過渡期の作品だったんですけど。基本的には、例えば絵画として見てほしいとかいうことはなくて、演劇が好きで作ってるので。あれは『ロミオとジュリエット』みたいな下敷きがなかったので、死んでいくっていう話のバックボーンに、コミュニケーションをどう乗せるか、とかいうくらいで。ビデオの作品よりかは、今はもうちょっと具体的に演劇のことを考えるようになってきたと思います。例えば僕は今回のも演劇だと思ってるんですけど。それが、見たお客さんが「演劇ってこんなこともできて面白いんだ」って思っていただければいい。
坂口
俳優さんに何人か、笑ってるときの感覚を聞きたいな。
多田
じゃあ、工藤さんと夏目。モンタギュー家の夫婦です。
夏目
ずっと笑いつづけるって難しいんで、そのつど何かを見つけます。あと笑ってる自分がだんだん楽しくなってきたりとか。お客さんは全然見えてないです。
工藤
私は、運動として反復みたいな感じで。それがまた楽しくて、感情としても笑ってる状態がずっとキープできて、勝手に一人で笑ってます。ワークショップでもそうでしたけど、逆に人と近い距離でコミュニケーション取ると、笑いにくかったりとか。内向的にしたほうが笑いやすかったりします。笑い方にもいろいろあるんだなあと。私は一方的に笑う人間なんだなと。背景にある物語とかは、まったく意識してないです(笑)。
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