第11回亀倉雄策賞受賞記念
1997年に急逝したグラフィックデザイナー亀倉雄策の生前の業績をたたえ、グラフィックデザイン界の発展に寄与することを目的として、1999年、亀倉雄策賞が設立されました。この賞の運営と選考は社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)が行い、毎年、年鑑『Graphic Design in Japan』出品作品の中から、最も優れた作品に対して贈られます。
第11回となる今回は、植原亮輔氏「ファッションブランド『THEATRE PRODUCTS』のグラフィックツール」に決定しました。
植原氏は、DRAFT/D-BROSに所属し、フラワーベース「Hope forever blossoming」、架空のホテルから生まれるプロダクト「ホテルバタフライ」などの商品企画・デザインを手がけるほか、「パナソニック電工」「ウンナナクール・LuncH」などのグラフィックを担当するなど、幅広く活躍しています。
植原氏がアートディレクションを手がけた「THEATRE PRODUCTS」は、2001年に設立された、「劇場」をコンセプトとするファッションブランドです。植原氏は、新たな試みを続ける同ファッションブランドをインパクトあるグラフィックで表現し、グラフィックデザインが社会の中で機能することの重要さを印象づけたとして評価を受け、今回の受賞となりました。
この受賞を記念して個展を開催いたします。
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展示内容
受賞作「ファッションブランド『THEATRE PRODUCTS』のグラフィックツール」のポスター、ショップカード、グッズなどの数々をメインに展示の予定です。
亀倉雄策賞について
1997年急逝した亀倉雄策の生前の業績をたたえ、グラフィックデザイン界の発展に寄与することを目的として遺族の寄付により設立された亀倉雄策賞。亀倉が設立から長く会長を務めた社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)に運営を一任し、毎年国内賞「亀倉雄策賞」を、さらに3年に一度「亀倉雄策国際賞」を授与する。「亀倉雄策賞」は『Graphic Design in Japan』応募作品の中から、「亀倉雄策国際賞」は富山県立近代美術館で開催される「世界ポスタートリエンナーレトヤマ」の応募作品の中から、最も優れた作品の制作者を表彰するもの。「いつになっても東京オリンピックの亀倉と呼ばれること」を嫌い、亡くなる直前まで「今」の仕事で若い世代と競い、グラフィックデザイン誌『クリエイション』の編集を通じて、グラフィックデザインの芸術性、本質を追求した亀倉の遺志を尊重し、普遍性と革新性をもったグラフィックデザインを顕彰していく。賞金はいずれも50万円。賞状は佐藤卓によるデザイン。
〈これまでの亀倉賞受賞者〉
第1回 田中一光 第2回 永井一正 第3回 原研哉 第4回 佐藤可士和 第5回 仲條正義
第6回 服部一成 第7回 勝井三雄 第8回 受賞者なし 第9回 松永真 第10回 佐藤卓
主催
クリエイションギャラリーG8
共催
社団法人日本グラフィックデザイナー協会 亀倉雄策賞事務局
受賞のことば
初めて亀倉雄策さんの作品を目の前にしたのは、数年前にクリエイションギャラリーG8で行われた展覧会でのことでした。当時、僕は小さなモノをつくることに必死になっていたのですが、亀倉さんの作品を目の前にして、そのパワーに圧倒され、愕然とうなだれてしまうのと同時に、何か未来への期待感のようなものも感じながら会場を後にしたのを覚えています。それは、デザインというものの奥深さとともに、デザインの仕事には社会との関わりそのものが現れるものだということを学ばせていただいたのだと思います。しかし、あれから何年も経たずにこのような大きな賞をいただくことができるなんて、想像もできませんでした。
モノづくりというものは、ディテールに向かってしまいがちで、ともすれば、自分一人でもがくことになってしまいます。社会との関わりの無いところで苦しむのは、いわば滝に打たれる修行僧のようなもので、デザインは苦しいものだと勘違いしてしまいがちです。これに対して、社会との関わりの中から生まれたデザインには、どこか明るく、力強いものがあります。ただ、一方で、ディテールへの配慮に欠け、すぐに見飽きてしまうものも少なくはないと思います。
僕は、あの亀倉さんの展覧会で見た作品の多くに、ディテールへの興味と社会との関わりの両面を感じ、強く心が揺さぶられたのを覚えています。
シアタープロダクツの仕事は、彼らの社会に対する強烈な想いがかたちになったものです。ファッションの世界で自立し続けることは、想像を絶する苦労を要し、この度、亀倉雄策賞として「光」をあてていただいた仕事は、彼らの「汗と涙の結晶」であると、僕は確信しています。