初の単独エキシビション
グラフィック・デザインの世界的な中心地はどこかと聞かれれば、私はロンドン、ニューヨーク、東京と答えます。これらの都市にはデザインの伝統が強く息づいています。初の単独エキシビションが、東京で開催されることになり、本当にうれしく思います。 ポスターアートはもう終わりだと言う人もいますが、私はまだまだ活気にあふれていると思っています。毎年手掛ける、業種も異なる様々なクライアントへの膨大な作品数がそれを物語っており、展覧会でも多種多様なポスターで壁一面を埋め尽くす予定です。 チャリティ団体や政府機関向けの小規模プロジェクトからロンドンやパリのクライアントの巨大地下鉄ポスターまで、デザインの規模は色々ですが、私にとって一枚のポスターは、クライアントの課題に応えることのできるツールであり、とても挑戦のしがいのあるものなのです。私たちはどんなに大規模なブランド・プロジェクトに携わるときでも、必ずポスターから取り掛かることにしています。 作品には、言葉やユーモアも取り入れています。プロジェクトごとに複数のデザイナーでディスカションをし、デザイン段階に入る前に熟考を重ね、アイデアを詰めていきます。ロンドンのデザイン関係のライターの間で私たちの言葉の扱い方がよく話題になっているようですが、言語、言葉の扱いはデザイン事務所でありながら、私の得意分野と言っていいでしょう。私たちにとってコミュニケーションとは、言葉とイメージの相互作用、コンビネーションなのです。
問題を解決するデザイン
アートディレクションとは、クライアントが抱えている問題点をデザインの力で解決することだと思っています。重要なことは「これは必要なことを伝えうるだろうか?」と言う点です。ポスターでも装丁でも、また大きなブランド・プロジェクトであっても、アプローチは変わりません。
「私たちの言おうとすることは理解しやすいだろうか?」と、いつも自問します。だめならそのアイデアは見送って、また初めからやり直しです。私たちが、よくある美的感覚と自己表現一辺倒のイギリスやアメリカのデザイナーたちと一線を画しているのは、たぶんこの点でしょう。強調したいのは、いわゆる「独自のスタイル」を持つことに興味はないということです。私は、自分のクライアントには、彼ら自身の個性にふさわしいアイデアを提供したいと思っています。私たちの仕事は、一つの解決策をどのクライアントにも売りつけることではなく、毎回新しいアイデアを見つけ出すことだと考えています。
Royal Mail(英国郵政サービス)の切手
展覧会では、ポスター以外に、企業ロゴ、ブックデザイン、さらにRoyal Mailのための作品も展示する予定です。これはシールタイプの切手で、 子供たちがもっと手紙を書くようにという思いを込めてデザインしました。手紙の送り主が、ベースとなる野菜や果物に目や口などのパーツを自由に選んで貼ることで、 自分だけのオリジナル切手をつくることができるので、昨年の発売開始以来大変な人気です。Royal Mailには、あたりまえのことですが「切手は非常に重要で貨幣のように権威あるもの」という認識が現在でも残っており、シール付きの変形切手が受け入れられ、実現するまでに何年もかかりました。しかし、結果をみればそれだけのことはあったと思います。 Johnson Banksの次の展開ですか? そうですね、私たちと同じような考え方をする人を探して世界中にネットワークを広げたいと思 っています。日本でもそういう人がきっと見つかるでしょう。 ユニークな課題に挑む興味深い人々……私たちがいつも興味津々なのはそんな人たちです。 近いうちに日本でも仕事をしたいと考えています。日本の皆さんが、私たちの作品や仕事のやり方に興味を持ってくださることを願っています。