第11回グラフィック「1_WALL」グランプリ受賞者個展
中島あかねは、鉛筆で描いたシンプルな線をスキャニングしてデータ化し、写真加工・編集ソフトで色を加えて制作した、言葉になる前の何ものでもない「何か」を表現した作品で第11回グラフィック「1_WALL」でグランプリを受賞しました。一見して生き物にも見える何にも当てはまらない抽象的な形の面白さや、思わず目を引く淡い色合いの作品の魅力が、審査員から高く評価されました。
中島が描く線は、決して成り行きにまかせたものではなく、内省を繰り返しながら生み出されています。明確な目的地を持たない線は、いかようにも発展する可能性を持ち、その集積はとらえどころがないままに見る者を不思議な感覚へと引き込みます。
今回の個展では、受賞時の作品と、新作を展示します。受賞から約1年後となる初の個展を、ぜひ会場でご覧ください。
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展示に寄せて
「なにものでもないなにかを描く」
これが1年前この制作をはじめた時の決まりでした。
しかし1年経った今では、その決まりはもうほとんど守っていません。
ずっと同じことを続けていると、その時々で大切にすべきことは変わってくるからです。
やっていることは「よく考える」ことと「手を動かすこと」の繰り返しであり、その連なりの
先を見ようとしています。
糸を紡ぐようにしてできていくその連なりを頼りに、どこなのか分からない場所を目指し
て探検するような気分で、知らないことに出会いたいという願いから「レジャー」という
展示タイトルを掲げます。カタカナの「レジャー」です。
中島あかね
審査員より
「目を奪われる」という言葉があるが、中島さんのグラフィックを初めて目にしたときの印象はまさにそれだった。なんだこれ……。意味を求めて、言葉の器に容れようとすればするほど、つるつるとはみ出していってしまう。試しに真似して描いてみる。もちろん似ない。簡単に描けそうな線なのに、似ないのには圧倒的な理由がある。ここに描かれたものたちは、なにかを「捉えている」ものというよりも、「捉えようとしている」現在進行形の線の痕跡なのだ。
大原大次郎(グラフィックデザイナー)