第11回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展
吉田志穂は、インターネット上の画像をフィルムカメラで撮影し、暗室での加工を重ねることで、日々目にする膨大な数の画像の断片を物質化することを試みた作品「log」で、第11回写真「1_WALL」のグランプリを受賞しました。携帯やPCに映し出される、ネットイメージに反応する現代的な視点が、完成度の高いポートフォリオや展示と共に、審査員から高い評価を得ました。
風景が映るモニターを複写するだけでなく、実際に現地に赴いてさらに撮影を行うなど、吉田の作品には身体的なアプローチと、プリントでの光学的な作業が幾重にも重ねられています。ひとつのイメージに対して繰り返されるこの一連の行為は、被写体の持つ情緒性や意味性を排除し、本人も予期せぬ未知なるイメージの出現を探っているようです。そうしたプロセスを経て、印画紙という新たな支持体に定着された画像は、一見すると要素の削ぎ落とされたシンプルな画面でありながらも、写真の中に隠れた虚偽性や撮影者との関係を鑑賞者に問いかけ、「見る」ということの正体を改めて考えさせます。今回の展覧会では、受賞後に制作された新作を中心に発表予定です。吉田の初の個展を是非ご覧下さい。
■作家在廊予定日
7.21(火)7.23(木)7.24(金)7.25(土)7.29(水)7.30(木)7.31(金)8.1(土)
時間:1:00p.m.-6:00p.m
※作家の都合により、在廊日時が変更になる場合がございます。最新の在廊情報は、
twitterをご確認ください。
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展示によせて
日々沢山の写真を見ています。自分にとってそれは何かの誘導や別の文脈で情報を見ているように感じています。撮影した写真に対して何度も処理をかけると、見た景色とはかけ離れたエラーのような像が生まれます。既存の指示も文脈も無い物質を構築し直し、ものを写すこと、見るということについて新しいシステムをつくりたく、その方法を考察しています。
吉田志穂
審査員より
見えるものと言えば漠然とした情緒性だけ。被写体の描写にも内面の吐露にも依拠することのないこれらの作品を前にすると、失語症に陥ったような感覚になる。ここには言語というものが得意とする物語性は皆無である。
真に新しい表現には言葉を拒絶するところがあるものだが、この作品も同様である。優れて視覚的としか言いようのないこの作品に、今は静かに向き合うときではないかと思う。言葉を紡ぐにはもう少しの時間が必要だ。ただ、ひとつ言えるとすれば……(続きは個展の会場で)
鷹野隆大(写真家)