第14回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展
佐藤麻優子は、自分の感覚を友人に投影し、撮影した作品で第14回写真「1_WALL」グランプリを受賞しました。審査では「若い世代の抱える閉塞感や退屈さを的確に表現している」「写真の持つリアリティーが鑑賞者にも伝わる作品だ」と、審査員から高い評価を得ました。
雑然とした家具売り場、イスが並んだ市民プールの待合席、アパートの部屋など日常的な風景の中に写る佐藤の友人や自身の姿は、世界から浮いているような違和感が感じられます。絵コンテを描いてコンセプトをモデルに伝えてから撮影を行い、その後写真をデジタル加工して、意図的にイメージを作り込んでいます。人生に対する焦りや、いつまでも若いままでいたい、人から愛されたいという自身の欲望に向き合い、写真をそのはけ口にするかのように制作された作品には、23歳の作家自身の抱える悩みなど等身大のリアリティーが映し出されています。
本展では、グランプリ受賞作品「ただただ」と、受賞後に撮影した、「もうない」「まだ若い身体です」「夜用」の4つのシリーズを中心に展示します。また、2月9日(木)にはアートディレクターの菊地敦己さんをゲストに迎え、トークイベント「20 代の話・ご飯を食べていくにはどうしたらいいのかの相談」を開催します。
PREV
NEXT
展示によせて
こうしたいとかああなりたいとか、これをしたくないとかこうなりたくないとか、生れた瞬間からずっと今まで、自分にはとんでもない数の欲求があります。
ただ、自分のことなのにどうしたいのか、はっきりとわからない場合もあります。そして、わからないまま流れるように進むことがあります。逆に、はっきりと望むことはみえているのに、それがかなえられない場合もあります。その場合には、どうしたらかなえられるのか、どうしたら自分の気が済むのか、どうしたらそのストレスから逃げられるのかを考えたりします。
自分が2015年から2016年のいままでに感じたことを、テーマに分けて撮りました。よろしくお願いします。
佐藤麻優子
審査員より
写っているのは彼女の友達たち、そして彼女自身。どう見てもありがちな日常のスナップショットだ。カメラはなんと、「工事専用カメラ」の「現場監督」だという。だが写真を見ているうちに、それがまぎれもなく「23歳の今の自分が感じたこと、感じていること」のリアルな表現であることに気がつく。「こうありたい」という欲求や希望が、あらかじめ奪いとられ、どこか「置いてけぼり」になってしまったような時代の気分。そこには東日本大震災から5年後の、宙ぶらりんなニッポンの光景が確実に写り込んでいる。
飯沢耕太郎(写真評論家)