第15回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展
田中大輔は、ある年老いた象を撮影した映像を含む作品「elephant sea」で、第15回写真「1_WALL」のグランプリを受賞しました。審査員からは「目には見えない被写体の息遣いを丁寧に捉えようとしている」「言葉で言い表せないことを表現する感覚が優れている」と高く評価されました。
田中は、撮影する対象に真摯に向き合い、目に見えない何かを捉えようとしています。そして、その被写体から感じる一瞬を、持続して切り取る撮影行為により生み出された作品は、人間の根源的な感情に訴えかけます。作家のその場の体験を内包した写真や映像は、見る者を圧倒する力を持っています。
本展では、グランプリ受賞時に展示した象の映像作品と、新たに撮影した写真作品を中心に展示します。
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展示によせて
いつも通る帰り道で、燃えさかる火を見た。
ある夕暮れに砂浜で聞いた言葉と
波の音をずっと思い出していた。
途切れ途切れに訪れては消えて行く
身体と意志だけがただそこに在る。
見えることと、見えないことの向こう側。
持続する瞬間はひとすじの線になり、どれもが静かに燃えている。
田中大輔
審査員より
彼の写真からは「観る」という感覚が、視覚のみならず体感として伝わってくる。深くゆっくりと動く視線は、切実で優しく、そして執拗だ。そのきわめて集中した観察を我々は全身で追体験することになる。これは確かな才能だ。しかし、なぜ彼がそれほどまでに、その対象を観ていたのかは不明だ。
菊地敦己(アートディレクター)