第16回グラフィック「1_WALL」グランプリ受賞者個展
時吉あきなは、原寸大の犬を立体コラージュで制作した作品「ワンオール」で、第16回グラフィック「1_WALL」のグランプリを受賞しました。受賞作は「芸術に関心のない人でも巻き込まれる勢いを感じさせる」と審査員に評価されました。
時吉は、スマートフォンで撮影した犬の写真をコピー用紙に出力し、対象を原寸大の立体コラージュとして再現する作品を制作しています。正確に再現しながらも、平面の写真を強制的に立体にすることで不自然な歪みや独特の表情を持つ犬たちは、どこか違和感やユーモアを感じさせます。自身の部屋を撮影した写真で現実空間にその部屋を再現する作品や、さらにそれを解体し、平面に再構成したブックの制作も行っています。平面と立体を行き来しながら、複製を繰り返すことによる表現を試みています。
本展では、犬の立体コラージュを中心に、写真作品や、新作インスタレーションを展示します。1月15日(月)にはイラストレーターの白根ゆたんぽさんをゲストに迎え、二人の創作の秘密に迫るトークイベントを開催します。
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展示に寄せて
「あんた、犬を紙で作るやつ幼稚園の時もしてたやん〜! 変わってないわ!」って母は言います。
写真を見返すとたしかに作っていたし、頭の中で想像していることもあまり変わらないんじゃないか?と少し不安です。
私は小学生になってもらんま1/2のらんまと付き合えると思っていたし、中学校はホグワーツ魔法魔術学校に入ろうと思っていました。サンタクロースも高校生までちょっとだけ信じていました。
どこかでそんなのは作り話だと気付いていても、そういう夢のある話を信じたいし、本当にあれば楽しいのにな〜って思ってしまいます。
私が今、なんの役にも立たないな〜でもこれ最高!と思って作っている作品はそれに近いような気がします。
時吉あきな
審査員より
時吉の作品は「ネット」と「リアル」,「あちら」と「こちら」の境界が喪失してしまった時代を,魔術的リアリズムとオカン的テクネによって描き出す。私的体験の集積がデジタル空間のなかから物理空間に反転させられ,二重のリアリティをもって表れる。それは自らがかつて動物として溶け込んでいた「世界」から切り離された人間が,言葉や絵によって世界や他者を捉えなおそうとする人類史的企ての最末端でもある。そこに犬がいる。
室賀清徳(『アイデア』編集長)