第19回グラフィック「1_WALL」グランプリ受賞者個展
西川©友美は、銭湯の壁に描かれている富士山などの壁画をイメージして制作した作品「誇大妄想。」で、第19回グラフィック「1_WA L L」グランプリを受賞しました。審査員からは、展示空間を意識した構成力や作品の高い完成度が評価されました。
西川がつくりだす作品は、単純な図形の組み合わせのように見えますが、計画的にそぎ落とされ、わかりやすく集約された線で構成されています。常に正面を向いた顔を持つキャラクターは、強い印象を放つと同時に、つかみどころがなく、見る者に想像の余地を残します。本展では、ギャラリーの壁面に、鑑賞者を取り囲むように新作のグラフィック作品を展示します。
会期中7月1日(月)には、東京国立近代美術館主任研究員の保坂健二朗さんをゲストに迎え、グラフィックやイラストレーション、デザインの境界をテーマにしたトークイベントを開催します。受賞から1年後の個展をぜひご覧ください。
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西川©︎友美
グラフィックデザイナー(?)・スーパーイラストレーター(?)おこがましくってアーティストなんて言えないし。でも最近調子に乗ってます。今の時代ってなんでもありなんですよね? と、ホリエモンが言ってました。青森県八戸市出身(バスケ部)→日本女子体育大学中退(ラクロス部、一瞬)→バンタンデザイン研究所→2011年8月よりデザイン事務所10 inc.勤務。私は結構「平成」好きなんですけどね。
展示に寄せて
えっと。©って書いて「ちょも」って読みます。douですか? タイトルは「dou?」です。うーんとタイトルは「do」の文字を入れることだけは決めてました。さらに最初は「forget」をつけようと思っていて「フォーゲットドーター」とか考えていたんですが、ドーターって「do」じゃなくて「da」なんですね…。ボスには「フォーゲットドクター」とか提案してもらって「ドクター」もいいかなぁ~、わたし医者の娘だし。でもまあ、このタイトルどうかなー あのタイトルどうかなー? ん? タイトル「dou?」でよくね? 鼻歌でドゥードゥーみたいなのもあるみたいだし。で、決まりました。絵はゾウとトラといぬおんなとかかきました。というかイラレで作ってカッティングシートはって、色ぬりしました。だからまぁ、「描いている」というとちょっと違う気がするんですけど。。めっちゃ面倒くさくて「これ何になるんだろう? 何のためにやってるんだろう?」とか考えてて、菊地敦己さんに話したら「うん。そういうことはね、だいたい何にもならないんだよ」と言われました。dou?ですか? あと一面なにを作るかまだ決まっていないんですが、ごめんなさい。これであいさつでいいでしょうか?
西川©︎友美
審査員より
一見、乱暴に描かれた落書きのようでいて、よくよく見れば吟味された形です。その形が連想ゲームのようになんとか意味をつなげながら連なっています。そして、わずかな素材の持ち味が引き合わされ、手書き看板のような質を持った作品が製作されています。そのプロセスーー形をデザインすること、その形を構成すること、モノに仕立てることーーは、グラフィックデザインのそれと同じです。
粗雑な感触を残したベジェ曲線の造形や一つの意味に集約しない編集感覚は、この10年くらいのグラフィックデザインの主流とも言えますが、その中においても西川©︎友美(←変な名前)の作品は独特な魅力をそなえています。それぞれのプロセスにおいて、不器用ながらも念入りな仕事がなされ、その積み上げによって獲得した独自性だと思います。場合によっては、突発的な才能よりも強度を持つことになるかもしれません。
菊地敦己(グラフィックデザイナー)