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展覧会・イベント

第21回グラフィック「1_WALL」グランプリ受賞者個展

田中義樹展「ジョナサンの目の色めっちゃ気になる」

  • 会期:2020.9.15 火 - 10.17 土
  • 時間:11:00a.m.-7:00p.m.
  • 日曜・祝日休館 入場無料
    ※来場登録制は終了しました。直接会場にお越しください。

    *オープニングパーティーについて
    新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、ご参加いただく皆さまの健康と安全を考慮し開催を中止します。ご理解いただきますようお願いいたします。

    *ギャラリー入口で体温測定、手指消毒、マスク着用のご協力をお願いします。ご来場者様同士の社会的距離2mを確保いただき、37.5℃以上の発熱、咳・咽頭痛、全身倦怠感などの症状がある方は来場をお控えください。来場者多数の場合は入場制限を行うことがあります。

田中義樹は、2019年5月の香港でのデモを題材にした作品「気分はサイトシーン」で第21回グラフィック「1_WALL」のグランプリに選ばれました。3種類の紙幣を拡大したドローイング、犬のオブジェ、レジデンスで香港に滞在していた時から、展覧会に至るまでの日記で構成された展示は、審査員から「現在進行形の難しいテーマを扱いながら、良い意味で軽快な表現に昇華している」「社会問題を自身で深く掘り下げた作品」と評価されました。

大学時代、彫刻を専攻する傍ら、劇団を立ち上げ、役者として舞台に立っていた田中は、大学卒業後もインスタレーションを主軸にした作品を発表する一方、パフォーマンスコントライブを行うなど、発表の形式に捉われることなく、活動をしてきました。それらの活動は、社会的な問題を扱いながらも、メッセージを強く訴えるのではなく、過去の美術作品や、ポップミュージック、映画など、様々なイメージをサンプリングしながら、おかしみに転換しています。

本展では、田中にとって初めて劇場でみた演劇である、チェーホフの「かもめ」をモチーフに、そこから連想ゲームのようにイメージを繋げていき、制作した作品群を展示します。グランプリ受賞から約1年後の個展をぜひご覧ください。

会期中の10月6日(火)には、アートディレクター、グラフィックデザイナーの上西祐理さんをゲストに迎え、作品のアイデアが形になるまでの過程をテーマに、トークイベントを行います。

また、作家が在廊し、毎時0分と30分からパフォーマンス(10-15分程度)を上演いたします。会場でパフォーマンスをご覧になりたい方はイベントページより上演日程ご確認いただき、直接会場へお越しください。また、こちらのYoutube Channelでもライブ配信いたします。

ライブ配信のアーカイブは以下からご視聴いただけます。
9.15 火 「海」より「かもめがぶっ飛んだ」 「主役」
9.25 金 「原」
10.2 金 「雄」
10.9 金 「山」
10.16 金 「展」

会場で展示中の映像作品 「作家を集めてサッカーをする」をYoutubeにて公開しました。

 

 

 

 

田中義樹

1995年三重県生まれ。現在、東京在住。2017年武蔵野美術大学彫刻学科卒業。 グループ展 (2015年まで) 2020年 第23回岡本太郎現代芸術賞(川崎市岡本太郎美術館) 2020年 ...

展示に寄せて

三島みたいに、まじで割腹覚悟で何か世界に訴えてみたいけど、どうせおっさんに野次られて終わる。
この展示はチェーホフのかもめをモチーフに舞台を作ろうと思っているんです。
三重県で高2の時に観た、ある劇団の「かもめ」の舞台が頭に残っています。その時はかもめを読んだことがなかったから、ああ、、、かもめはこういう難解なお話なんだと思っていました。でもコロナの影響でその劇団が過去公演をいくつかネットにアップしていて、その中の1つに昔に自分が観たかもめも見つけたので、再生したら、かもめを再解釈して再構成していました。「かもめ」だけど「かもめ」じゃなかった。チェーホフのかもめをちゃんと読んでから、あの演劇の記憶と戯曲が噛み合わず、何かおかしいと思っていたけれど、ぼくはおかしいと声をあげれなかった。公演の映像はめっちゃ面白かった。
安全だと思っていた原発が爆発することもある。続いていくと思っていた暮らしが一変することもある。思ってたかもめがかもめではなかったこともあるということです。
「静聴せい!我々はデウスエクスマキナを待ちながら生きていく他ないワン!」
「ワンワン!(野次)」
スリー…ツー…ワン…(小さな発砲音)

2020年3月の田中義樹、トレープレフと同い年
※この文章は文字数の関係で前半を大きく割愛しています。全文は展示でご覧ください。

 

審査員より

田中義樹はよく反省をするアーティストである。彼がしばしば過ちをおかして謝っていると言いたいわけではもちろんない。思考の行く先を自分の内面の奥深くに向けることをきちんと課していると言いたいのだ。この「反省」という、美術(あるいは美学)においては極めて大事な能力が具わっていればこそ、彼は、香港でのレジデンスから帰ってきた直後に大規模デモが起こったことに対して抱いてしまったもやもやとした感情を、「気分はサイトシーン」という言葉(概念)にまとめあげつつ、インスタレーションをつくることができるのである。彼はまた、怒りをよく覚えるアーティストでもある。そしてその怒りの感情の共有を望む時、「笑い」に変える必要があることを知っている。怒りを笑いに転化するその姿勢は、きっと彼が大好きだという音楽ユニット「空手バカボン」に由来するのだろう。「パンクの人のおらおらではなくて、弱い人によるおらおら」に共感するという田中が、今の日本においてどこまでの破壊力を持てるのか、期待して見続けたい。

保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)

主催:ガーディアン・ガーデン