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展覧会・イベント

第24回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展

白井茜展「とどまって、聞いている」

  • 会期:2022.10.25 火 - 11.26 土
  • 時間:11:00a.m.-7:00p.m.
  • 日曜・祝日休館 入場無料

    *11.11 金 はトークイベント準備のため、ギャラリーの開館は6:30p.m.までとなりますのでご了承ください。

    *ギャラリー入口で体温測定、手指消毒、マスク着用のご協力をお願いします。ご来場者様同士の社会的距離2mを確保いただき、37.5℃以上の発熱、咳・咽頭痛、全身倦怠感などの症状がある方は来場をお控えください。

白井茜は、「家族とは何か」という幼少期からの疑問を起点に、自身の家族である白井家と高校時代の恩師の家族である多胡家、二つの家族を撮影した映像作品「繋」で第24回写真「1_WALL」グランプリを受賞しました。白井家と多胡家の映像を二つ並べたモニターで同時再生し、左右に設置したスピーカーからそれぞれの音声を出力することで一つの作品になるよう構成しました。
審査員からは、被写体はありふれたどこにでもある家庭ではあるものの、家族という存在が含み持つ繋がりと束縛のアンビバレントさを映像化した点が高く評価されました。

個展では、グランプリ受賞後、少しずつ家族の状況が移りかわるさまを撮影し、再構成した映像作品をさらに大きな二つのスクリーンで同時に上映します。
白井の祖母との食事風景や、庭の花を手入れする様子、多胡家が墓参りに向かう後ろ姿、多胡家に友人が来て会話をする様子、ベッドに横たわる姿など、白井は約2年間にわたって二つの家族を撮影し続けてきました。家族の中に、心の支えである安心感と束縛される不自由感が同時に存在している様子を表現しています。
また、会期中11月11日(金)には、キュレーターの小原真史さんをゲストに迎え、トークイベントを開催します。グランプリ受賞から約一年後の個展を、ぜひご覧ください。

展覧会ハンドアウトはこちらから

会場映像

白井茜

1998年 滋賀県生まれ 2021年 京都造形芸術大学 写真・映像コース 卒業 受賞 2021年 京都芸術大学 卒業制作展 学長賞 2021年 第24回写真「1_WALL」グランプリ

展示に寄せて

2020年の夏から、多胡家と白井家二つの家族を撮り始めた。きっかけは「家族とは何か」という一つの問いだったが、撮影を進めていくうち、安易に答えなど出せないことが分かった。日常の中に小さな喜びを見つける、彼女たちの豊かな視点に驚かされる一方で、日々変化していく身体の様子や、互いを家庭に縛りつける一面が、生々しく映し出されていた。そこには思い描いてきた生優しい家族像はなく、私はただカメラの前で立ち尽くすことしかできなかった。
撮影を始めてから2年ほどが経ち、これまで撮った素材を見ているうちに、私は自分の家族との出来事を思い出していた。私たちが互いに傷つけ合ったことや、肌を触れ合ったこと、心地よさを感じたことが、確かな実感として、少しずつ思い起こされた。そして家族を繋いでいるものの輪郭が、薄らと描き出されていくように感じた。
「家族とは何か」ということについて、今の私が語るのは難しい。ただ今は、カメラを通してこの場所にとどまり、二つの家族の語りを聞き続けようと思う。

白井茜

 

審査員より

「1_WALL」のグループ展で目にした白井茜の映像は、今でも強く印象に残っている。それは白井家と多胡家(白井の高校時代の教師の家)という異なる二つの家庭のありふれた日常の様子がディプティックのモニターで同時に再生されるという、一見するとシンプルな展示だったのだが、既視感と未視感とが同居するような奇妙な感覚に襲われた。とりたてて何か特別なことが起こるわけではない、ありふれた日常の豊饒さに驚かされたと言えばいいだろうか。そうした細部が画面のそこかしこで毛羽立つような存在感を示していて、いつまでも見ていられるようにも思えた。
白井は自分の家族と別の家族とを親密さと疎遠さがないまぜになったような適度な距離感で捉えている。そして、このことが異なる二つの家族の映像を分かち難く結びつけながら、そこに映されていない別の家族へと繋がる水脈を作り上げているように見える。私自身がそうだったように、多くの観者は、白井の映像の中に自分がこれまで通り過ぎてきたさまざまな家族の姿を幻視するのではないだろうか。

小原真史(キュレーター)

主催:ガーディアン・ガーデン