ガーディアン・ガーデンでは、「The Second Stage at GG」シリーズ第39弾を開催する運びとなりました。若手表現者を応援しようと1992年から2008年まで開催した公募展『ひとつぼ展』、2009年にスタートした「1_WALL」の入選者の中からは、各界で活躍する作家が数多く登場しています。このシリーズは、そうした卒業生たちのその後の活動を伝えるための展覧会です。今回は「1_WALL」の作家の中からこれからのグラフィックの新たな潮流を感じさせる、同時代の作家4名を、グループ展という形でご紹介します。
過去のグラフィック「1_WALL」で選出してきた作品を振り返ると、これまでのジャンルの中には収まりきらない表現の台頭がみられます。それは特定の技法や媒体の制約を受けない、ジャンルを超える発想から生まれた、新世代のグラフィックと呼べるかもしれません。この状況を踏まえ、2013年から「1_WALL」展会期中に4回にわたって「グラフィックのいま、これから」と題したトークイベントを開催し、グラフィックとは何かという問いに対して議論を重ねてきました。
“動く印刷物”というアニメーションとの境界を探る小川雄太郎。ベクターデータによって無限の拡大縮小の中で絵の物質性を問う下野薫子。漫画の紙面からはみ出すように、自在なサイズ可変によって空間を少女でジャックする大門光。ストロークやモチーフなど対象が持つイメージから、視覚伝達における速度の限界に迫る林香苗武。実に様々なアプローチが、新たな価値を備えた独自の表現として注目を集めています。この4名の新作にぜひご期待ください。
小川雄太郎 Yutaro Ogawa
シャワーを浴びるとき、滴が延々と落ちていく様子を見ていると、だんだん無心になってゆく。日常の中で、ぼーっと見てしまう動きには“繰り返す”という共通点がある気がする。歌を歌う時も、ただ同じフレーズを繰り返しているだけで気持ちよくなってきて、歌詞の意味が体の中でどんどん増幅されるような感覚になる時がある。繰り返しには不思議な力がある。単純に反復していればそのような効果が得られるわけではなく、繰り返しにはそれに適した“分量”があるのだと思う。
下野薫子 Yukiko Shimono
絵は三次元に描かれるとサイズが決められ無二のものになります。しかしそれは、絵の特性ではありません。絵を頭のなかで思い描くとき、それはサイズもキャンバスに描くか紙に描くかということさえ決まっていないイメージとして存在しています。ベクターデータでの絵において、形而上の線は、プリントやモニターにサイズをかえて何度でも視覚的に再現されます。それは絵の表し方の一つの選択肢なのではないでしょうか。
大門光 Hikari Daimon
漫画を描くことについて考えるようになったとき、自分が重視しているのは“線”だった。物語やキャラクターというよりも、それらを構成している“線”が必要だったのだ。“線”はそれ以上でもそれ以下でもない、ただの痕跡である。他の人の線を辿るとき、わたしは他の人を自分の中へ誘い、また相手もわたしを誘い、ふたつの線の境界は実に曖昧で甘美なものになるのである。
ブラックジャックによろしく3/p.154
タイトル ブラックジャックによろしく
著作者名 佐藤秀峰
サイト名 漫画 on web
林香苗武 Hayashi Kanae Takeshi
人間は速度の快感を覚えた瞬間からもはや後戻りは出来ないのだ。従順で時に暴力的なスピードを持つフォルムは、空力、重力によって美しく研磨されている。速度主義はあらゆる摩擦・抵抗をものともしない鋼鉄の機械を創造する。速度を描く時代は終わり、芸術が速度になる時代がやってきたのだ。
林香苗武「速度主義宣言」より
1985年 東京生まれ。
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。
同大学大学院デザイン専攻グラフィックデザイン研究領域修了。
同大学生産デザイン学科テキスタイルデザイン研究室勤務を経てフ...
下野薫子
1988年東京生まれ。
2013年武蔵野美術大学卒業。
1987年東京都出身
自称漫画家
2012年 第7回グラフィック「1_WALL」グランプリ
2015年 CCC展覧会企画公募New Creators Comprtition 2016 入賞
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林香苗武
1991年長野県生まれ。2011年より平面表現における速度を主題とし、制作活動を続けている。 現在は速度主義を掲げ「“あらゆる摩擦や抵抗を無くした”機械を創造する」を理念とし、制作を行う。2015年2月20日に「速度主義宣言」を発表。