The Second Stage at GG #53
ガーディアン・ガーデンでは「The Second Stage at GG」シリーズの53回目として、光岡幸一展「ぶっちぎりのゼッテー120%」を開催します。本シリーズは、若手アーティストを応援するガーディアン・ガーデンの公募展入選者の中から、各界で活躍する作家の、その後の活動を伝えるための展覧会です。
光岡はリサーチに基づいたプロジェクトベースの作品を、インスタレーションやパフォーマンス、写真、ドローイングといった手法を使って制作してきました。その中で、身近な友人たちのポートレート作品で第13、14回写真「1_WALL」ファイナリストに選出されました。その後も、プロジェクトに巻き込む人々や物事のスケールを増しながら、個展の開催、グループ展、芸術祭への参加など、精力的に活動を続けています。
撤去されようとしていたホームレスの台車を引き取り、補修し、持ち主へ返す様子をドキュメンテーションした「夢をみない夜」では、社会の中でかき消されそうな事象をすくい上げ、開示してきました。渋谷にある展覧会会場の下に湧いている地下水を会場内に引き込み、写真の上に泥でドローイングを行った「もしもといつも」では、展示空間の特性を引き出しながら、同時に渋谷という街の構造をあらわにしました。本作品は2021年写真新世紀優秀賞を受賞しています。いずれの作品にも独自のユーモアが盛り込まれており、そこからは偶然の出会いと物や場所の特性を面白がり、想像力を働かせることを楽しんでいる様子がうかがえます。
今回のタイトル「ぶっちぎりのゼッテー120%」は、光岡がアルバイト先で倉庫整理中に見つけたメモ帳に書かれていた一節から取られています。他者の言葉をタイトルにすることからも、偶然出会う物事や人々との関わりを積極的に作品の中に取り込んできた光岡の制作姿勢が見受けられます。本展覧会ではガーディアン・ガーデンの場所をキーワードに新作インスタレーションを展示します。開館から22年の時間、銀座の地下にあるということを踏まえ、光岡が2023年8月に閉館するガーディアン・ガーデンの空間から立ち上げるものは何か。ぜひ、会場でご覧ください。
作家挨拶
期限切れの紙のクーポン券の事が気になっている。最近はほとんど見なくなったが、今でもたまに薬局やラーメン屋のレジで半強制的に渡され、店員の目の前でレシート箱に放り込むのも何となく気が引けてしまいとりあえず持ち帰るのだが使ったためしはなく、気が付くと財布の奥底でひっそりと期限を切らしている。そうなるといよいよ機能を失った紙屑になってしまい捨てるしかなく、そうさせてしまった自分は、いつもクーポンに対して少し申し訳ない気持ちになるのだ(かといっていざレジではその存在を忘れるのだが)。そこでクーポンと何かできないかと考えた。とりあえず家中の紙クーポンをかき集めたところ、期限が2年過ぎた長老クーポンに出会った。そこからそのクーポンとの協働が始まったのだ。自分はいつもこんな感じで気になったモノと、自分なりの関わり方を探っていくうちに、たまにそれが作品になったりもしている。その相手は人であったり、植物や風や石、あとは歴史や風景などいろいろだ。そして今回の展示にこのクーポンは関係ないのであしからず。
光岡幸一
会場映像
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