第4回グラフィック「1_WALL」グランプリ受賞者個展
電気配線の美しさ、力強さを描く
電気工事士の石原一博は、小さい頃から好きだった電気配線を中心に描いた作品で、第4回グラフィック「1_WALL」でグランプリを獲得しました。「技術的に上手いとか下手というのを越えて、グッとくるものがある」「醸し出す雰囲気は今っぽくないが、それがすごくオリジナリティになっている」と審査員に言われたように、“好き”という純粋な気持ちと時代に逆行した男らしい力強い表現が目を引き、グランプリを射止めました。
石原は、電機工場を営む家で育ち、小さい頃から機械に慣れ親しんできました。デザイナーを経て、今では実家の仕事を手伝い、電気工事士として働いています。5〜6年前から独学で絵を描くようになり、その素材はいつも目にしていた機械や配線でした。石原は、機械の中に張り巡らされている配線を血管のようだと言い、よく好んで描きます。その配線は自由に想像して描いたものですが、電気工事士として培ってきた経験があるからこそ、描ける世界です。個展では、900×600㎜のサイズを中心に、キャンバスやベニヤ板にアクリル絵の具で描いた作品を発表します。人の手で、何回も配線の点検を繰り返すことで動き出す機械。そういう機械に人間味を感じ、描くときも人の存在を意識しながら描くという石原。彼の作品には人工的なモチーフのなかにも生命を感じさせる力強さがあります。ぜひ会場でご覧ください。
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展示によせて
小さい時から慣れ親しんだ実家の電気工場。自分自身も電気工事の仕事を経験してきて感じた配線の美しさと機械たちの存在感。
機械の中にある電線は、目には見えないが、絶えず力強く動いている。地球上に血管のように隈なくめぐっている配線は、情報とエネルギーを送り、無限の用途が生まれている。交通機関の動力源、空気調節、照明、電気通信、コンピュータなど。
絵描きにとって必要な“伝える”を追求し、世界にエネルギーを伝導している、見えているようで見えない世界を、自分の経験と技術と感覚で表現します。
石原一博
審査員より
石原くんは大阪で生まれ育った。お父さんは、遊園地で使用する操作盤や基板をつくっていた。工場の名は『巽電気』。彼がそこで、配線を1本1本描いていることを想像してもらいたい。石原くんが操作盤を組み立てている同じ工場内で、もうひとりの石原くんが、それを描いている。たくさんの機械に囲まれた無機的な空間で、石原くんは配線を丹念に描き、それを生き物に変え続けている。無数の配線は、束になって未だ伸び続け、この先どこまで行くのかは、本人すら知らないところである。
有山達也(アートディレクター・グラフィックデザイナー)
第4回グラフィック「1_WALL」展
2011年2月28日(月)~3月31日(木)開催
公開最終審査会 2011年3月10日(木)
以下の審査員により、石原一博さんがグランプリに選出されました。
[審査員]
有山達也(アートディレクター、グラフィックデザイナー)
大塚いちお(イラストレーター、アートディレクター)
佐野研二郎(アートディレクター)
成田久(アートディレクター、アーティスト)
平林奈緒美(アートディレクター、グラフィックデザイナー)
※五十音順・敬称略
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