第4回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展
独自の美的感覚で捉えた最先端科学の現場
畑直幸は「世界が水に沈んだらどう見えるか」というイメージを、写真を水槽に沈めて魚を泳がせて撮影し、その写真をさらに複写した作品で第4回写真「1_WALL」でグランプリを受賞しました。鋭い美的感覚と構想力でクオリティ高く視覚化された作品は、審査員に「やっていることは感覚的だけど、何かの本質に近づいているように見える」「言葉で置きかわらないところに写真をもっていこうとしているところがおもしろい」と評価されました。
畑は、美容師としてのキャリアを持ちながら写真の道へと入ってきた異色の経歴を持ちます。自分の作り上げた髪型をコンテストや雑誌に応募するために仲間と撮影をする中で興味を持ち、本業の傍ら専門学校やワークショップに通い、写真やカメラについて学んできました。グランプリ受賞後には一念発起して職を離れ、2011年夏よりオランダの美術大学で写真について学び始めました。初個展となる今回のグランプリ受賞者個展では、東京工業大学の原子炉工学研究所などに通って撮影した作品をお見せします。あらゆる機器と無数の配線コードとが混沌と存在する最先端研究の現場を感性そのままに捉えています。今、自分は何を見ているのか、見るという行為とはどういうことなのかについての興味を持っている畑が見つけた新しいテーマに、どうぞご注目ください。
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展示によせて
「3UH-HC ペレトロン(3 Units Horizontal-High Current Pelletron)は最高ターミナル3MV、横型シングルエンドの静電加速器である。設置当初の研究課題は大別して「重イオン線による研究」と「中性子線による研究」であったが、1990年頃からは「中性子線による研究」に特化している。
「中性子線による研究」の内の中性子核データ測定に関しては、keV中性子捕獲ガンマ線スペクトル及びkeV中性子捕獲断面積の測定を一貫して行ってきた。」
(我が国の核データ測定施設の展望と世界情勢(2) 東京工業大学原子炉工学研究所 井頭政之)
コード、そのコードと。codeという符号とそれについて。
目で見ている全ての物は意味を変えて映し出される。
コードはただの線になり符号になったそれは組み合わされて行き場を失い、画面を覆う。
新しい言語になったその呼び方をしらない。
畑直幸
審査員より
畑直幸の写真は対象の持っている秩序を意識的に忘却させるための写真であり、それは方法的に痴呆化される田本研造や被爆直後の長崎の光景を、青空のピクニックと意識的に混同させる忘却の山端庸介的場所に自らの写真を立ち上げる。
空っぽであること。世界の何処ともつながらない。記憶の集積の上に立ち上げるのではなく世界の何処にでも無責任に接続できる極北的な場所を、記憶の廃棄、忘却のピクニックを自らの立つべき場所として選択する。
金村修(写真家)
第4回写真「1_WALL」展
2011年4月4日(月)~ 4月28日(木)開催
※震災の影響により、当初ご案内の会期(3/28-4/21)より変更になりました。
公開最終審査会 2011年3月10日(木)
以下の審査員により、畑直幸さんがグランプリに選出されました。
[審査員]
金村修(写真家)
鈴木理策(写真家)
鳥原学(写真研究者)
町口覚(アートディレクター)
光田ゆり(美術評論家)
※五十音順・敬称略
第4回写真「1_WALL」展の情報はこちら