第5回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展
写真の魅力と言葉を組み合わせた独自の表現
清水裕貴は、一見何を見ているのかわかりにくい構図もピントも不安定な写真に詩のような言葉を添え、独特の世界観を紡ぎだした作品「tky⇔almgrd」で第5回写真「1_WALL」グランプリを受賞しました。写真と言葉を一緒に展示した意欲作は、審査員には「何気ない写真なのにサブリミナルに浸透してくるような不思議な力を感じる」「写真を見て、こんなにイメージの力に連れ去られることはそうそうない。言葉も魅力的だが、言葉なくても成立していると思う」と評されました。
清水は気になるイメージをスナップで撮りためて自由に組み合わせ、目の前の写真をインスピレーション源に物語を紡ぎ出していく手法で作品制作をしています。“物語で写真を導く”と、写真と言葉で新しい写真の見せ方の確立を目指す清水ですが、その物語は明解な結末があるものではなく、もっととらえどころがなく、ゆるやかで曖昧なものです。
今回の個展では、アメリカのニューメキシコ州にあるアラモゴードやホワイトサンズを旅して撮影したグランプリ受賞時の作品と、清水自身の身の回りの写真を混ぜ、物語をさらに広い空間に展開していきます。白昼夢なのか天国なのか、白い砂漠なのか雪原なのか、見る者をミスリードし、引き込んでいく物語の世界。ぜひ会場でご覧ください。
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展示によせて
写真は光を殺し、いくつもの視線、記憶を含んだ、あたらしい時間軸へとうみなおす。
わたしたちの世界は同音異義語の迷宮なので、
似ているけれど違うものは、隠れたところで繋がっている。
聞き間違いや見間違いは、時の深層へ導く鍵だ。
鏡を覗き込むようにイメージすれば、雪原、海の泡、白い砂漠は相似して交錯し、
歩いていた場所は波に消えて、風にさらわれて、どこにも留まる事のない旅が始まる。
これは白い砂漠をめぐる物語。
写真から言葉が生まれ、両者は連奏し、ミスリードを繰り返しながら、
終わらない旅の行き先を描く。
清水裕貴
審査員より
清水裕貴の「ホワイトサンズ」は、写真と、そこから呼び覚まされた言葉とが響き合い軋み合いながら、見る者を連れ去っていく。一瞬だけではない時間。何処でもない何処か。その物語はピークを持たない。もともとの意味や名前を手放した“勘違い”に導かれ、不条理に宙吊りになりながら、あらゆる境界を超えてゆく旅。写真と言葉、そのイメージの力が突き詰められて生まれる、新しい場所、新しい空白に期待したい。
姫野希美(赤々舎代表)
第5回写真「1_WALL」展
2011年9月20日(火)~ 10月13日(木)
最終公開審査会 2011年9月29日(木)
以下の審査員により、清水裕貴さんがグランプリに選出されました。
[審査員]
有山達也(アートディレクター、グラフィックデザイナー)
小林紀晴(写真家、作家)
鈴木理策(写真家)
姫野希美(赤々舎代表取締役、ディレクター)
光田ゆり(美術評論家)
※五十音順・敬称略
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