第8回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展
写真の力を信じ「けはい」を捉える
黑田菜月は、幼い少年たちと1対1で対峙した作品「水辺の子ども」で第8回写真「1_WALL」のグランプリを受賞しました。子どもたち特有の、周りの世界に全力でぶつかっていく無邪気さや瑞々しさに憧れ、その姿を写真で捉えたいと挑んだ作品は、「まだ発展途上の人だが、人を真摯に撮ることから始めようとしていて、伸びしろを感じる」、「ある種の理想を求めているからこその素朴さと“ゆるさ”がある」と審査員の注目を集めました。
初個展「けはいをひめてる」では、前作をさらに発展させています。黑田が惹きつけられているのは、ごく普通のあたりまえの風景に潜み、ふとした瞬間に姿を現す、何か神秘的な気配。それを機敏に察知し、戯れる子どもたちを通して、見えない気配の存在を写真で捉えようと取り組んだ今回の新作。ぜひ会場でご覧ください。
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展示によせて
この作品は、私がふと惹き付けられてしまう場と存在について明らかにしようとしたものです。
ありきたりの空間や何気ないものが特別なものに変わる瞬間。そこには私に何かをほのめかし、見過ごせなくさせる気配があります。
“少し怖いけど、近づいてみたい”
わたしは静かにそっと近づいて、その瞬間を待っているのです。
黑田菜月
審査員より
カメラは持つ者の好奇心を増幅させ、未知の光景へと駆り立てる。
何かを見るということは、何かを思い出すことと密接に関わり合っている為だろう。
黑田さんの写真はとてつもなく素朴だ。対象と出会った際の驚きがそのまま写し撮られている。
画面からは撮り手の心の震えがそのまま伝わってくる。
彼女は、写真が可視の事物以上のものを見る者に伝えると固く信じているのだろう。
写真を信頼し、静かに語るその言葉に耳を傾けてみたい。
鈴木理策(写真家)
第8回写真「1_WALL」展
2013年3月25日(月)~4月18日(木)
公開最終審査会 2013年4月4日(木)
以下の審査員により、黑田菜月さんがグランプリに選出されました。
[審査員]
秋山伸(グラフィックデザイナー、パブリッシャー)
鈴木理策(写真家)
土田ヒロミ(写真家)
姫野希美(赤々舎代表取締役、ディレクター)
増田玲(東京国立近代美術館主任研究員)
※五十音順・敬称略
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