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佐野研二郎展_ボツ 作家インタビュー

デザインはボツの連続
今回の展覧会では、「LISMO!」や「ニャンまげ」など、これまで手がけてきた仕事のアイデアスケッチやボツ案が主役なんです。前からデザインの仕事というのは、“ボツ”の連続だなって思っていて。電車の中で手描きで描いたラフの段階でボツにしちゃうのもあるし、最終段階で、文字の形が微妙に変更になったり、いろんな段階で“ボツ”が出てくるんですね。僕のデザインって、楽そうだなって思われるんですけど(笑)、完成するまでにはいろんな試行錯誤がある。そのプロセスも含めてデザインだし、それを見てもらったらおもしろいかなって思ったんです。
あとね、ガーディアン・ガーデンって、イメージ的に、出品者にとって木の根っこようなものなんです。根っこって地中に隠れているけど、実際は地上に出ている部分よりも大きいでしょ。実際、ガーディアン・ガーデンも地下にあるし、そういうイメージと重なって。完成の裏には、悪戦苦闘したボツの山があるんだよって、そこにきた若い人に見てもらって、刺激を受けてもらえたらいいなって思うんです。

「LISMO!」ができるまで
僕はいつも予習をすごくするんです。「LISMO!」の時もまずオリエンの前に、自分なりの解釈でいくつか案を考えました。au=音楽というイメージを更に強めたいということだったから、「au」の文字や、携帯の電波のアイコンを音符で表現してマークを作ったらどうかとか、キャラクターを作ってもおもしろいなとか。結局キャラクター案が通って、それも最初は手描きのリスだったのが、次になぜかクマになったり。「LISMO!」という名前もぎりぎりに決まったんです。「LISTEN」から「LSTEN!リス」になったり。最終的にはその時の会社の状況とか雰囲気、関わっている担当者やスタッフの人たちのバランスみたいなもので決まるところがある。時代とか、いろいろなタイミングで決まるのも、デザインのおもしろいところですよね。

SIMPLE, CLEAR, BOLD
前はすごく繊細な部分にこだわったり、情緒的な、ロマンチストみたいなところもあって。キャッチと写真の関係がいいとか、この淡いトーンの写真が情感を誘うとか、苦労した文字組だから、きっとみんな分かってくれるって思ったり。でも、実際は誰も見ていないんですね。
まだ手作業で版下を作っていた頃、正月の新聞広告を作ったんです。文字をピンセットで配置したり、キャッチを小さくしたらかっこいいかなあとか、すごく細かい所にこだわって、時間をかけて、随分徹夜しました。でも、その新聞を読んでいた母親は、僕の広告のページを目もくれずにめくっちゃって。その時、普通の人は、もっと単純で強いものじゃないと、目に留めてくれないんだって気づいたんです。それで、今は、「SIMPLE」「CLEAR」「BOLD」っていってるんですけど、できるだけ簡単で、明快で、芯がはっきりしているデザインを目指しています。

佐野研二郎

1972年東京生まれ。1996年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業、博報堂入社。現在、博報堂/HAKUHODODESIGN クリエイティブディレクター/アートディレクター。商品開発やシンボルマーク、キャラクターデザインをはじめとして広告デザイン、TVCM、店頭POPまで、一貫してSIMPLE,CLEAR,BOLDにこだわった幅広いアートディレクションを手がける。ONE SHOW DESIGN、BRITISH D&AD賞、NYADC賞、東京ADC賞、東京TDC賞、JAGDA新人賞、朝日広告賞、毎日広告デザイン賞、NEW YORK FESTIVAL、グッドデザイン賞、みうらじゅん賞(ニャンまげ)など受賞多数。ADC/JAGDA/TDC会員。

展示:「GRAPHIC WAVE 8(GGG)」、「SHOWROOM:U*MO PRODUCT(GALLERY ROCKET)」

出版:「佐野研二郎のWORKSHOP」(誠文堂新光社)、「GRAPHIC WAVE 8」(トランスアート)、「GRAPHIC」(六曜社)