第16回亀倉雄策賞受賞記念
1997年に急逝したグラフィックデザイナー亀倉雄策の生前の業績をたたえ、グラフィックデザイン界の発展に寄与することを目的として、1999年、亀倉雄策賞が設立されました。この賞の運営と選考は公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)が行い、毎年、年鑑『Graphic Design in Japan』出品作品の中から、最も優れた作品とその制作者に対して贈られます。
第16回は、葛西薫氏による平和希求キャンペーンポスター「HIROSHIMA APPEALS 2013」に決定しました。
サントリーウーロン茶やユナイテッドアローズといった長期にわたる広告や、虎屋のCI・空間計画・パッケージ、映画・演劇の広告美術、装丁など、しなやかで静謐な中に強さを持ち、人々の心に深く残るデザインを世の中に送り続ける葛西氏。
「ヒロシマ・アピールズ」は、国内外に向けて平和を希求する活動で、毎年JAGDAを代表して会員1名がボランティアで制作しているシリーズポスターです。16作目にあたる葛西氏の作品は、「グラフィックの原点とも言うべき作品」、「シンプルで力強い黒い線の表現が印象的」と高く評価され、今回の受賞となりました。
この受賞を記念して個展を開催いたします。会場では、受賞作「HIROSHIMA APPEALS 2013」と、作品制作のために描いた数々の原画をもとに空間を構成します。
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受賞のことば
初めて知ったグラフィックデザイナーの名は亀倉雄策だった。中学二年のある日、体育館に東京オリンピックの2枚のポスターが貼られた。今でもはっきり憶えている。ステージの左には日の丸の、右には短距離走のスタートダッシュの写真のポスター。その日からいつもの体育館の空気が一変し、なんだか外国にいるようだった。このときの興奮が今の自分の仕事につながる初めての出来事だった。数十年が経ち、亀倉さんにお会いしたときにそのことを伝えることができた。亀倉さんと会話したのはその一度だけだった。
亀倉さんは第一回のヒロシマ・アピールズの作者でもある。その16作目のポスター制作の指名を受け、僕に何ができるのか、そしてまたポスターに何ができるのか……と緊張し、ずいぶんと苦しんだ。やがて目の前の白い紙を見つめるうちに、その白さが夏の陽のまぶしさに感じてきて、しぜんに筆が動いて止まらなくなった。僕にとっての真夏はいつも短かったが、忘れられない思い出がいっぱいある。青空はときに悲しくもあり、あの人この人の顔が浮かんでくる。この絵は誰かの姿であり僕の姿でもある。今考えると、こうして自分の職業を忘れて僕自身に帰ることで、ヒロシマと向き合うことができたように思う。
このたびの受賞展が少しでも平和の一助になれば、こんなに嬉しいことはありません。
葛西 薫
主催
クリエイションギャラリーG8
共催
社団法人日本グラフィックデザイナー協会 亀倉雄策賞事務局
亀倉雄策賞について
1997年に急逝した亀倉雄策の生前の業績をたたえ、グラフィックデザイン界の発展に寄与することを目的として遺族の寄付により設立された亀倉雄策賞。亀倉が設立から長く会長を務めた公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)に運営を一任し、毎年国内賞「亀倉雄策賞」を、さらに3年に一度「亀倉雄策国際賞」を授与する。「亀倉雄策賞」は『Graphic Design in Japan』応募作品の中から、最も優れた作品とその制作者を、「亀倉雄策国際賞」は富山県立近代美術館で開催される「世界ポスタートリエンナーレトヤマ」の応募作品の中から、国際性と普遍性の高い、優れた作品とその制作者を表彰するもの。「いつになっても東京オリンピックの亀倉と呼ばれること」を嫌い、亡くなる直前まで「今」の仕事で若い世代と競い、グラフィックデザイン誌『クリエイション』の編集を通じて、グラフィックデザインの芸術性、本質を追求した亀倉の遺志を尊重し、普遍性と革新性をもったグラフィックデザインを顕彰していく。賞金はいずれも50万円。賞状は佐藤卓によるデザイン。
これまでの亀倉雄策賞受賞者
第1回 田中一光/第2回 永井一正/第3回 原 研哉/第4回 佐藤可士和/第5回 仲條正義/第6回 服部一成
第7回 勝井三雄/第8回 受賞者なし/第9回 松永 真/第10回 佐藤 卓/第11回 植原亮輔/第12回 浅葉克己
第13回 受賞者なし/第14回 澁谷克彦/第15回 平野敬子 ※全て敬称略
授賞式
2014年6月27日(金)広島にて実施予定〈2014年度JAGDA通常総会会場〉
作品発表
年鑑『Graphic Design in Japan 2014』(2014年6月発行予定/六耀社刊/予価16,200円)