タイムトンネルシリーズ Vol.10
「タイムトンネルシリーズ」は、第一線で活躍するクリエイターの若き日にスポットを当てる展覧会です。ガーディアン・ガーデンでご紹介する、 学生時代の習作やデビュー当時の作品など、今となってはほとんど日の目を見ない作品には、作家の創作の本質ともいうべき発想の原点、 表現手法を理解する上でのヒントがたくさん隠れていると思います。また、クリエイションギャラリーG8との共同開催によって、 現在の作品と対比させながら、作家の全体像をご紹介しています。今回は、写真家・土田ヒロミさんにお願いしました。
常に明快なコンセプトのもとに、同時にいくつかのテーマを撮り分ける写真家・土田ヒロミ。
その一つ一つを時間をかけて丁寧にまとめ、 発表してきました。現在も10余りのテーマを同時進行中です。なぜ、全く視点の異なる作品を同時期に撮るのか、その根底にある変わらぬ モノとは何なのか。自己と時代を見つめるドキュメンタリストの、デビュー当時から現在にいたるまでの足跡をたどります。
『ベルリン 1999』企画趣旨/土田ヒロミ
ベルリンの壁が崩壊してから10年の歳月がたとうとしています。崩壊後、東西の冷 戦構造は急激に消滅にむかっております。たしかに大きな政治的対立は解消したか にみえます。 しかし、現状は日々あらたな闘争が続発し、平和で調和のとれた社会状況にないこ とも事実です。それらの多くは、異民族間に生じる文化的摩擦からくる争いであっ たり、経済的対立であったりと、かつての政治的イデオロギー対立とは異質な争い ですが、調和融合の確立にはほど遠い状況が現実です。 ベルリンの壁は、かつて、東西冷戦の象徴でしが、崩壊、撤去されたその痕跡は、 21世紀に遺されたテーマ??文化、経済摩擦からくるストレス??を具現化した新 たな対象としてあり続けていると考えます。 わずかに残る廃墟としての壁、記念碑として遺された壁、撤去できずに遺されてい る壁、それらが痕跡化されてきている境界線。また、かつての壁の存在が都市の中 に残しているであろう歪みと都市空間、等々を検証することは、21世紀を前に新し い思考を構築するために有意義であると考えます。 また、この作業は、写真美学的視点から見ると、大変おもしろい問題を提起するこ とにもなると考えられます。すなわち、不可視なる構造(差別、差別意識、境界意 識)を、その物理的実体を喪失した壁の痕跡を探し視るという行為をとおして意識化 することが可能となるはずだからです。 物理的実体を喪失し不可視なるモノと化した対象(壁)を凝視するという視覚感覚 における逆説的な矛盾。この作業は、現代の映像時代において肥大してしまった視 覚感覚に対して、真に主体的に“視る”ということの意味を明らかにすると考えら れます。 以上述べましたように「社会科学的視点」と「写真美学的視点」の両面 を内包した 作業として『ベルリン 1999』を撮影記録したいと考えております。
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展示内容
現在撮影中の最新作「ベルリン1999」を展示。10年前のベルリンの壁崩壊後を定点観測した作品を、あえてデジタル画像で発表。
タイムトンネルシリーズ小冊子
この小冊子は、タイムトンネルシリーズの展覧会開催にあわせて制作したもので、 学生時代の習作やデビュー当時の作品など、今となってはほとんど日の目を見ない 作品に秘められた、作家の創作の本質ともいうべき発想の原点をさぐり、作家の 全体像をご紹介するものです。
体裁:天地210×左右148mm、全56ページ、モノクロ
価格:500円(消費税込み)
主催
クリエイションギャラリーG8 ガーディアン・ガーデン
後援
ドイツ連邦共和国大使館
協力
富士写真フイルム株式会社 株式会社写真弘社 com.コム-田島茂雄
日本ヒューレット・パッカード株式会社