フィリップ・ワイズベッカー原画展
フランス人であるフィリップ・ワイズベッカーは、3歳までセネガルで過ごし、パリの国立装飾美術学校を卒業してから、1968年にニューヨークに移り、グラフィックデザインを経験した後、イラストレーターとしての活動を開始しました。現在はパリとニューヨークを行き来しながら、「ヴィレッジ・ヴォイス」、「ザ・ニューヨーク・タイムズ」、「ル・モンド」などをはじめとするエディトリアルや、広告ではIBM、ハーマン・ミラー、エルメスのカタログなどを数多く手がけているアーティストです。
シンプルで気に入った形のオブジェを、シンプルな画材である鉛筆、色鉛筆、定規で描くワイズベッカー。オブジェのデザインばかりが目立ち、機能性が見えにくくなってきている物が多い中で、工事用の道具や実用車などの、機能するオブジェの持つピュアな美しさに注目し、それらを無駄のない線と色の組み合わせによって、印象的でしっかりとした輪郭をもつ作品に描きあげています。
会場では、イラストレーション原画約40点と、新聞・雑誌などの印刷物約50点を展示いたします。日本では初の個展です。お見逃しなく。
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展示内容
イラストレーション原画約40点と、新聞・雑誌などの印刷物約50点を展示。
展覧会によせて
ワイズベッカーの絵は新しい感性に包まれたクールな静物画だ。少年のころ出会った懐かしいトラックや大工道具が、デッドストックのノートに色鉛筆で彩色され、知的で品のいい構図を創りだしている。カリカリと描かれた鉛筆のタッチやひかえめな着彩に、誰もが忘れ去られた古いデザイン画を覗き見するような興奮を味わうだろう。 プロダクツやインテリアデザインの世界がにわかに活気ずいている今、エルメスが2000年のカタログに採り上げたように、流行に敏感なファッション関係の人たちがワイズベッカー.の世界を見逃すはずがない。フィリップ・ワイズベッカーはADとしていま、最も注目しているアーチストであり、個人的にもライフスタイルのやけに気になる同年代作家の一人だ。
藤本やすし(キャップ)
おそらく、簡潔な線にはふたつの種類がある。シンプリシティを極めた、澄みきったこころから生み出されるシンプルな線。そしてもうひとつは、世の中のどろどろや、自分の中のぐちゃぐちゃを、力づくで押し込めようとするかのような、不安と緊張に満ちたシンプルな線だ。ワイズベッカーの簡潔なドローイングに、僕は抑えつけられた感情のざわめきを聞く。
都築響一