70年代イラストレーション
辰巳四郎氏は、早稲田大学法学部卒業後、武蔵野美術大学に学んだ異色の経歴の持ち主です。何よりも描くことが好きで、ペン、鉛筆、筆、エアーブラシ等、あらゆる素材を使いこなし、多種多様な多くの作品を世の中に発表する一方で、自分の絵に対する夢を持ち続けたいと、見せることを前提としない、仕事以外の自分のためだけの絵を描き続けたといいます。
そんな氏は、ある種アクとも言える強い個性を持ち、ヒヤリとした空気を出しながらも見る者を引きつける抽象画、緻密でありながら大胆で強いエネルギーを持つリアルイラストレーション、そして、装丁では多重露光を使い、写真とイラストをフィルムの上で合成するなど、常に新しい表現に挑戦しながら多方面で活躍してきました。
70年代の『朝日ジャーナル』連載の「派兵」のイラストレーションや80年代の『BigA』の表紙ではイラストレーションによる表現の多彩さを披露。90年代の綾辻行人の『十角館の殺人』ではじまる新本格と呼ばれたミステリー小説ブームは、氏のデザイン抜きでは語れないと言われるほど、ミステリーファンに支持されました。また、近年の、財界人・芸能人等を描き続けた『月刊経営塾』『TV Taro』の表紙は多くの人の記憶に残っていることでしょう。
辰巳氏の急逝から1年、本展では、氏が強い愛着を持っていたと言われている1968年に発表したB全3連作品「1968~のイラストレーション」をはじめ、1500点以上もの作品の中から70年代の作品を中心に、未発表のオリジナル作品を含め、原画約200点を展示致します。描くこと、制作することを心から楽しんでいた氏の技とエネルギーを感じとっていただければと思います。
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展示内容
日宣美入賞作品をはじめ、エアブラシ、ペン、リキテックス等で描かれたイラストレーション原画、約100点を予定。