タイムトンネルシリーズVol.28
タイムトンネルシリーズは、第一線で活躍しているクリエイターの若き日にスポットをあてる展覧会です。28回目を迎える今回は、写真家・山崎博氏にお願いしました。
1969年、23歳で写真家としてスタートした山崎氏。当初、舞台や雑誌の仕事を手掛けていましたが、被写体自体が主張する写真や、被写体を探すという行為に対して次第に興味を失っていきました。
そして、自宅の窓から見える風景を撮り始めます。窓枠をフレームとして規定し、手法を単純化することで見えてくる写真というメディアを模索します。いつもと変わらぬ窓枠の中に飛行機雲が出現したとき、そこに時間という概念が刻み込まれ、与えられた状況の中でも写真が成立することを確信するのです。
「地球上に存在する一番プリミティブな形」として、被写体に選んだ太陽と海を長時間露光で撮影した代表作「HELIOGRAPHY」では、太陽の軌跡が肉眼では見ることのない世界を描き出しました。また、日本人にとって特別な存在である桜も被写体に据えています。太陽を触媒にして撮る桜は、桜という既成概念を見事に裏切ります。写真のみならず、映画も撮り続けていますが、それぞれが影響し合い、独自の思考と表現に高めることになりました。
「写真を成り立たせる最小の要素は光軸と時間軸」と考える氏の作品は、時には難解な印象を与えます。しかし、その写真の根底にあるのは「Simple is best」であり、カメラという道具を使って、誰も試みたことのない方法で「写す」ことを追求し、新しい表現を生み出してきました。
本展では、初期の作品「EARLY WORKS 1969-1974」から、代表作「HELIOGRAPHY」、「水平線採集」、「櫻」を中心に、現在にいたるまでの写真と映画をご紹介します。
展示内容
第一会場(クリエイションギャラリーG8)
初期の「EARLY WORKS 1969−1974」、海や太陽を撮った代表作「HELIOGRAPHY」、「水平線採集」、「OPTICAL LANDSCAPE」、「CRITICAL LANDSCAPE」などを展示いたします。
第二会場(ガーディアン・ガーデン)
初期から撮り続けている「櫻」シリーズの四部作を展示いたします。超望遠レンズ、野外フォトグラム、トイカメラなど、自身が独自に開発した手法で「櫻」を追いかけています。
※両会場とも、写真作品にあわせて、それぞれに関連する映像作品もご紹介いたします。
展覧会によせて 山崎博
例えば、ヤン・ディベッツ。「オランダの山」というタイトルの作品がある。それは、水平線の写真を横に多数連ねた作品であるのだが、その横長に連ねられた細長い写真達は、直線ではなく、歪曲し、中央が持ち上げられたり、引き下げられたり、と構成され一つの画面となっていた。最初に目にした若い時には「エレガントなコンセプト」といった様な時代性を感じたものだった。
最近オランダの作家を通して風土を語る「オランダの光」というビデオを見て、ディベッツがオランダ人であること、風景が本当に平らである事に改めて着目させられた。
彼の「山」はコンセプトである以前に、風土から生まれた「夢」だったのだと思えた。モンドリアンもそんな風土が生んだ抽象であったのだ。
DNAのなかの「風土」が気にかかる年代になった、そんな事だろうか。
なんだか写真に関係の無い、コメントになってしまった……。
主催
クリエイションギャラリーG8 ガーディアン・ガーデン