中世ヨーロッパの宗教画や現代日本の風物の入り交じった幻想的な風景をバックに、倒錯した世界や奇怪な世界を描く山本タカト。ビアズリーの強い影響を受けながら、現代の浮世絵スタイルともいうべき、甘美なエロティシズムを表現しています。
作品はとても緻密で、下絵で細部まで描写し、それを面相筆で独得の色彩によって仕上げています。現在のイラストレーション界では、活躍のジャンルは非常に限られていますが、執拗なまでの表現は、多くの人を惹きつける力を持っています。
会場では、1994年以降のオリジナル作品を中心とした、美少年、美少女をテーマとした甘く優美な幻想もの、怪奇幻想もの、そして耽美小説や官能小説の挿絵など約100点の原画をご紹介いたします。
肉体の美しさを象徴した官能的なイラストレーションの数々を、ぜひお楽しみください。
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展示内容
1994年以降のオリジナルイラストレーションと小説の挿絵(原画)約100点。
作品集を会期中、ギャラリーにてサイン入りで販売します!
『緋色のマニエラ』山本タカト画集
1998年3月5日発売予定
定価:2,800円(消費税別)
体裁:B5変形判(253×188mm)80ページ、オールカラー、図版39点、
ハードカバー箱入りクロス装
発行:トレヴィル 発売:リブロポート
お問い合わせ:TEL 03-3481-5611(トレヴィル)
展覧会によせて
内なる夜闌の果てしない侵蝕の中、黄昏の甘美な金色(こんじき)の褥を想いつつ薄情な眠気を誘うために描いたような甚だ頽廃的で自慰的な作品を、恥ずかしながらご披露することになりました。
主に描いたのは自分自身の肉体と一体化したかのような小部屋の色褪せた時代遅れの装飾模様の壁に設えた覗き窓から見え隠れする儚い不安定な境界線上─たとえば、昼から夜に移行する気懈い午後、夕暮れの朧、中性的な肉体の脆弱な美しさが煌めく一瞬、内と外を曖昧に隔てる窓や扉の周辺、植物と昆虫が誘惑する庭先、異形の存在が蠢く光と闇の狭間など─のエロティックな光景です。物語の時間と空間の凝結したオブジェである書物の窓として設えた挿絵の贅沢な役割を全うしたいと思っています。僕自身、逃れる事のできない挿絵に対する偏愛から生まれ出た作品群が皆様を心地良い悪夢へとお誘いできれば幸いです。
山本タカト