挿絵や装画の仕事において、曾野綾子『流行としての世紀末』、浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』をはじめ、数々の作家とコンビを組み、「上品でシックな、しかもどこか陰を秘めた人物」を巧みに描きあげる井筒啓之。彼の描く人物や風景は、切り取られた時間の中で静かに佇み、時として現代人の心に内在する 「闇」の部分を秘めながら、見る者に静かに迫ってくるようです。
今回は、「BLUE」と題して、この7~8年の近作から、展覧会のために描きおろした15点を含む約200点を展示いたします。 数年前まで、不動産広告やPR誌などの仕事で、「幸せそうな都会の家族」を描いていた井筒氏が、本当に自分の描きたいものを探りながら辿り着いたのが現在の作風です。そんな「毒性」を孕んだ作風に至るまでの作品の変遷を紹介すると共に、井筒氏の考える「男と女」「孤独」などについてのミニエッセイも展示。イラストレーター井筒啓之の視点が作り上げた人間像と、そこにある思いをご紹介します。井筒氏の魅力あふれるイラストレーションの数々にご注目ください。
※2001年1月15日から1月27日まで、表参道のPinpoint Galleryにて井筒啓之原画展「RED」を同時開催いたします。
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展示内容
新作15点を含むイラストレーション原画約200点を展示。
展覧会によせて
個展は自分をすべてさらけ出さなければならない。自分自身を振り返ってみればそれ程の勇気もないのだが、今更じたばたしても始まらない。偶然にも21世紀のスタートとほぼ同時にこの展覧会が開催されるという事は何か僕に対する皮肉でもあるような気がするが、多少の事は目をつぶって頂く事にして、ここ7、8年の作品の中から気に入っている絵を展示する事にした。
改めて過去の作品を見渡すと、やはり僕は挿絵が好きなのだと思う。文芸誌等に描いた作品や単行本の装幀画等を中心に、私的要素の高い作品、あるいは未発表の新作を潜ませ皆様に楽しんで頂けたらと考えている。 井筒啓之