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国内外の公式イベントのポスターや、サイン計画など国際的に活躍するグラフィックデザイナー

インタビューで訪れた福田氏のご自宅。家の前の道路から少し奥にある玄関の扉を開けようと近くに進むと、道で見た時よりもずっと小さな扉。視覚のトリックを利用したその扉は、実は開かずの扉で、本物の玄関はその隣にありました。氏の作品からは、「びっくりでおもしろい」ユーモア溢れる世界が楽しめます。

迷子のピクトグラム
東京オリンピックのピクトグラムデザインは多くの人が関わって、微妙に違ってしまったという経験から、大阪万博では僕一人でやることになりました。なかでも、迷子のピクトグラムのことが印象に残ってます。それまで、迷子のものって世界中のどこにもなかったんです。というのも、外国では、親は自分の子を迷子になんかさせなかった。でも必要だろうということになって、子供が両手を顔に当てて泣いてるというのをつくりました。火星人みたいだといわれてスカートをはかせ完成。実際、迷子も多くて、すごく有効だったんです。今でも使われてるんですよ。

「VICTORY」
ポーランド戦勝30周年記念ポスターコンペに出す作品を考えていた時、資料の中に、爆撃機が爆弾を落としているスケッチがあった。それをたまたまさかさまに見たんです。まるで、爆撃機の中に爆弾が入っていくように見えて。もう、飛び上がりました。これだって。それがグランプリになりました。自分が考える10のアイデアはみんなも考える。それを超える11番目のアイデアが本当のアイデアだって思います。ちょっとかっこ良すぎるかもしれないけど(笑)。ポスターは花火だって思ってるんです。「VICTORY」は、ストレートで、見れば誰でもわかる。通りすがりに一瞬目にしただけで伝わるものでないといけないんです。

デザインと文化
「外を歩くときは、イヤホンを耳につけて音楽を聴きながら歩くな」ってよく言います。現実の音を聞いて、時代を、社会を、世界を、読まなきゃいけない。ワシントンポストに取材された時、記者が、「日本のグラフィックデザインはすばらしいって言われてるのに、来るまでに見た電車の中のグラフィックは、どこがいいのかわからない」って言うんです。僕は、「あれは朝のラッシュアワーで、動けない状態になって見るものだから、あれだけ細かい字を使うデザインの意味が成り立つんだよ」と言いました。どういう人が、どういう状況の中でそれを見るのか。デザインのすばらしい機能がわかるためには、文化を理解しないと。
そういう文化的な背景を知らなきゃわからないことがある一方で、アフリカの人もアメリカの人もアジアの人もヨーロッパの人も、人間だったら共通して感じることっていうのもあると思うんです。言葉がわからなくても映画を見て涙こぼしたりするでしょ。嬉しいか、怒っちゃうか、哀しいか、楽しいか。人間の感情がこの四つだとしたら、やっぱり僕は、嬉しいのと楽しいのしか無いと思う。どんなに嫌な内容でも、おもしろく伝えないと。それができなければ見てくれないですよ。

福田繁雄

1932年東京生まれ。’56年東京藝術大学デザイン科卒。日本万国博覧会公式ポスター制作をはじめ、国内外の公式イベントのポスター、サイン計画などのデザイン計画に参画制作。チェコ、ポーランド、アメリカ、フランス、フィンランド、ブルガリア、ロシア、メキシコ、国際ポスターコンクール入賞、審査委員歴任。’76年芸術選奨新人賞、’86年毎日芸術賞。’87年NY・ADC名誉の殿堂賞。’97年通産省デザイン功労者表彰。紫綬褒章。2001年岩手県勢功労賞。’02年NY・SVAマスター賞。’06年東京ADC名誉の殿堂賞。社団法人日本グラフィックデザイナー協会会長。AGI国際グラフィック連盟日本代表。RDI英国王立芸術協会日本会員。東京ADC委員。東京藝藝術大学美術学部デザイン科助教授・客員教授歴任。金沢美術工芸大学、大阪芸術大学、日本大学、名古屋造形大学客員教授(日本)。清華大学美術学術顧問、西安・西北工業大学客員教授、成都・四川大学客員教授、長春・吉林芸術学院栄誉教授(中国)。東方技術学院名誉教授(台湾)。