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タイムトンネルシリーズ 大橋歩展「歩のあゆみ」インタビューより

’60〜’70年代若者文化をリードした『平凡パンチ』。その表紙を手掛けたのが、当時多摩美大在学中だった大橋歩さん。現在は、衣食住をテーマにした季刊誌『アルネ』を出版し、幅広い年代から支持されています。ここでは、10時間におよぶインタビューから一部を紹介します。

『平凡パンチ』を手掛けるまで
大学では油科だったのですが、西武百貨店の新聞広告を見て、ファッションイラストレーターになりたいと思いました。油科では真面目な学生ではなかったんです。この時から絵を描きだしましたが、なかなかうまくならなくて。それが4年生の夏休みに帰郷した時、たまたま家にあったクレパスで気軽に描いたら、結構面白かった。きれいな色はもうなくて、残っているブルーと茶色が中心だったんです。それが『平凡パンチ』の絵なんですね。それからは夢中で描きました。友達がヴァンヂャケットに知り合いがいるからって連れて行ってくれたんですが、その場で『メンズクラブ』の3ページに絵を描く仕事をいただいたんです。もうびっくりしました。その後、『メンズクラブ』を見た『平凡パンチ』の創刊準備をしていた編集長から、「アルバイトあり」という電報がきたんです。それで、毎週絵を描いて持って行っているうちに、表紙の絵を描いて欲しいということになって。それが1964年。卒業間近に『平凡パンチ』の専属イラストレーターになりました。それから7年半、1971年まで390冊の表紙イラストレーションを手掛けました。

『アルネ』のこと
60ちょっと前くらいから、だんだんとイラストレーションの仕事が減ってきたんです。それで60歳になって、これからは一番したいことをしようと思って、『アルネ』を創刊することにしました。企画から取材、撮影、編集まで一人でやっています。創刊号の特集はインダストリアルデザイナーの柳宗理さん。それでお願いしてみたけど、OKがなかなか出ない……。最終的には奥さまが「私がとりなします」っておっしゃってくださって。実際にお目にかかると、柳さんはすごくいい方でした。私がカメラを向けると、「こっちがいいですかね」という感じでとても気を遣ってくださるんです。それ以来写真も自分で撮ってます。今はアシスタントがいますが、一人で取材をしていた時は大変でした。写真を撮っていて、気がついた時はもう録音テープがなくなっていたことも。特集はよしもとばななさんや深澤直人さん、佐藤雅彦さんなど、お会いして話を聞きたい人にお願いしています。もちろん面識はありませんよ。部数はいまのままで十分。『アルネ』はあくまでも個人誌、私誌でいいと思っているんです。

展覧会
なにしろこんな大大的な展覧会は初めてなんです。昔描いた絵をお見せするのは恥ずかしい気持ちもありますが、いろんな世代の方に見ていただきたいですね。『アルネ』を買ってくださっている若い人たちに、イラストレーターとしての私の仕事を見てもらえたらうれしいですね。

大橋歩

1940年三重県生まれ。多摩美術大学油絵科卒。1964年『平凡パンチ』創刊号から7年間、表紙のイラストレーションを担当。1980年から1990年まで、ファッションブランド、ピンクハウスのイラストレーションを描く。以後、数々の雑誌や広告に携わるほか、衣食住全般についてエッセイを執筆。『おしゃれは大事よ』、『おいしい毎日』(マガジンハウス)、『日々が大切』(集英社)など著書多数。2002年季刊誌『Arne(アルネ)』を創刊。企画・編集・出版まで一人で手がけている。