日本のものづくりとデザインの価値や魅力を子どもたちに伝えるチャリティープロジェクト。
多くの方々にアートやデザインの楽しさを感じてもらおうと、1990年からはじまった毎年恒例のチャリティープロジェクト。2つのギャラリーと交流のあるクリエイターの方々にボランティアで制作していただいた作品を展示・販売し、収益金をチャリティーとして寄付しています。2009年より、「Creation Project」と題し、2011年〜2015年は東日本大震災の義援金として合計約1134万円を寄付、2016年は熊本地震の義援金として158万円を寄付しました。2017年から、生産地を日本全体に広げ、日本のものづくり・産業を、デザインの力で発信していくプロジェクトとして継続し、セーブ・ザ・チルドレンに合計約144万円を寄付しました。
2011 印染トートバッグ展、2012 アロハシャツ展、2013 石巻バッグ展、2014 東北和綴じ自由帳展、
2015 伊達ニッティング、2016 藍色カップ、2017つつの靴下展、2018 ちいさな豆皿
167人のクリエイターと京都の職人とともに、手捺染でひとつひとつ染めた、オリジナルの風呂敷をつくりました。
イラストを大胆に描いたものや、伝統的な絵柄をモチーフにしたものなど、多種多様な風呂敷を展示、販売します。つつんだり、広げて飾ったり、敷いたり、工夫次第で七変化する風呂敷を楽しんでみませんか。
友禅染などの染色技術が受け継がれてきた京都でも数軒となった手捺染の工場では、生地の上に絵柄を反映させた版をのせ、手作業で染料を刷ることで、一枚ずつ絵柄を染める、昔ながらの技法を守り伝統を継承しています。
クリエイションギャラリーG8で8月に開催したデザイン・ワークショップで、子どもたちがつくった風呂敷も会場で展示します。本プロジェクトによる販売収益金は、未来を担う子どもたちの支援のために、セーブ・ザ・チルドレンに寄付をします。
購入することでチャリティーにつながるプロジェクトに、多くの方にご参加いただけることを願っています。
クリエイションギャラリーG8展示風景
ガーディアン・ガーデン展示風景
(両会場撮影:矢吹健巳)
展覧会によせて
平成から令和に年号がかわりました。
時代が移り変わっていく中で、昔ながらの職人技である手捺染と日本の文化に根差した風呂敷に注目されたことを非常に嬉しく思います。
167名のクリエイターのアイデアを一版で風呂敷に表現する。伝統産業が根付く京都で受け継いだ職人技でも簡単ではありませんでした。
伝統を守るのではなく作り出す、長い歴史の中で常に挑戦し続けた我々のものづくりの精神が活かされた結果様々なデザインの風呂敷をお届けすることができました。
デザイナー、職人たち、関わった皆の思いが詰まった風呂敷を様々なシーンでお使いいただき、その結果一人でも多くの子ども達の笑顔が増えることを願います。
最後に手捺染の技を通して風呂敷とデザイナーの皆様を繋いでいただいたリクルートクリエイティブセンターの皆様には、心より感謝申し上げます。
株式会社S.NISHIMURA
代表取締役社長 井賀木健吾
製作 株式会社エス・ニシムラ
左:型づくり 藤木道雄(株式会社藤木友禅型製作所) 右:染色 馬場憲生(有限会社馬場染工場)
左:蒸し洗い 西野賢一(有限会社西野蒸工場) 右:整理 丹治克己(丹治織物加工株式会社)
風呂敷は工程を5つの段階に分けて、職人たちが分担して製作しています。京都市内と近郊に集まる工場や工房をまわり、何人もの職人たちの手を経てつくられています。
1. 製版
まずはフレームにスクリーンを貼りつける、紗張りと呼ばれる作業を行います。職人がスクリーンに縦横徐々にテンションをかけていき、圧力計を見ながら、ピンと張ったところでフレームに固定します。次に、スクリーンに絵柄を写します。感光乳剤を塗ったスクリーンに絵柄を印刷し、紫外線に当てます。水で洗い流すと、絵柄が印刷されていない部分はスクリーンに残り、染料を通しません。
2. 染色
気温による発色の変化などを考慮して、職人が手作業で染料を調合します。染料が用意できたら、全長26.5mある台の上に、薄くのりを引き、ロール状の布を手際よくまっすぐ広げていきます。広げた布の上に版をセットし、染料を流し込み、一枚ずつ絵柄を刷ります。染料を乾かすために台が温かくなっているため、工場の中は蒸し風呂のような暑さです。染料が乾いたら、布を次の工程に送ります。
3. 蒸し洗い
染色した布を蒸して、染料を定着させます。蒸した布は井戸水で洗い、のりや不純物を落としていきます。蒸す際に温度が高すぎたり、洗い方が足りないと染料の色が変化するため、職人が布ごとに加減を調節して作業します。洗い終わった布は、天井が高く風通しのよい2階に運ばれ、長い竹に吊るして乾燥させます。
4. 整理
整理の工程では、蒸し洗いで伸縮した布幅を整えていきます。センサーで布の歪みを検知し、蒸気にあて、布の両端をクリップで留めます。1分間で20-40mの布を整えることができる機械は、約30年使われている日本製のもの。布の素材によって色焼けしないように蒸気の温度を変えたり、パジャマは柔らかくなど、用途によって布の硬さを調整したりしています。最後に、シワが寄らないように機械で布を綺麗に折りたたみ、最後の工程へ送ります。
5. 断裁縫製
布端の小さなカットマークを目印に、長い布をはさみで正確にカットしていきます。ここで綺麗にはさみを入れないと布が毛羽立ち、きれいにミシンがかけられないため、熟練の技が必要だそうです。カットした布は、絵柄に馴染む糸の色を選び、上下をミシンで縫います。
こうして工程ごとに様々な職人の手を経て、風呂敷が出来上がります。