160人のクリエイターがデザインし、大垣の職人が一つ一つ木を組み、ヒノキの枡をつくりました。
「増す」や「益す」とも読めることから、縁起が良いとされる枡。おめでたい柄や、物語性のあるデザインなど、160種類の枡ができました。手に取ると良い香りが広がるヒノキ枡は、端材を活用して作られ環境にも優しいプロダクトです。
この機会に、お気に入りの枡を見つけて、益々素敵な生活を送りませんか。
枡は、大きさを一升、一合などと容量の単位で表すように、古くは穀物を計る道具として、年貢の計算などに用いられてきました。計量器として広まった枡ですが、今ではお祝いの席で活躍したり、小物を入れたり、飾ったり、アイディア次第で使い方はさまざまです。
岐阜県大垣市は、木枡の全国生産量の8割を担う日本一の生産地です。時代の移り変わりを経てもなお、市内には3つの製造業者が残り、職人たちが、釘を使わない組み木の枡づくりの技術と伝統を守っています。時勢の流れでお祝いの席が減り、枡を使う機会が少なくなっている今も、多様な使い方を提案しながら、現代に通じる枡の価値を伝え続けています。
8月にオンラインで開催したクリエイション・キッズ・ラボ 2020で、子どもたちが絵柄をデザインした枡も会場で展示します。
本プロジェクトによる販売収益金は、COVID-19の影響を受けた世帯への緊急子ども給付金提供などの活動や2020年7月豪雨への緊急支援をはじめ、未来を担う日本の子どもたちの支援のために、セーブ・ザ・チルドレンに寄付します。購入することでチャリティーにつながるプロジェクトに、多くの方にご参加いただけることを願っています。
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日本のものづくりとデザインの価値や魅力を子どもたちに伝えるチャリティープロジェクト。
多くの方々にアートやデザインの楽しさを感じてもらおうと、1990年からはじまった毎年恒例のチャリティープロジェクト。2つのギャラリーと交流のあるクリエイターの方々にボランティアで制作いただいた作品を展示・販売し、収益金をチャリティーとして寄付しています。2009年より、「Creation Project」と題し、2011年〜2015年は東日本大震災の義援金として合計約1134万円を寄付、2016年は熊本地震の義援金として158万円を寄付しました。2017年からは、生産地を日本全体に広げ、日本のものづくり・産業をデザインの力で発信していくプロジェクトとして継続し、セーブ・ザ・チルドレンに合計約283万円を寄付しました。
2011 印染トートバッグ展、2012 アロハシャツ展、2013 石巻バッグ展、2014 東北和綴じ自由帳展、
2015 伊達ニッティング、2016 藍色カップ、2017つつの靴下展、2018 ちいさな豆皿、2019 ふろしき百花店
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クリエイションギャラリーG8展示風景
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ガーディアン・ガーデン展示風景
(両会場撮影:中村彰宏)
展覧会によせて
1300年間ずっと日本で使われている道具「枡」。はかりとしての枡、そして近年はハレの日の祝杯としての枡にこれまで関わってきた日本人が重ねてきた様々な思いを私たちは今に蘇らせ、木のぬくもりと伝統文化を伝えることが当社の最大のミッションとして枡づくりに邁進しています。「枡を粋でかっこよく!」、「枡をエンターテイナーに!」を合言葉に私たちはいつも枡がみなさんのライフスタイルに彩りを添えられるように提案しています。
この度ご縁をいただいて160人のクリエイターやアーティストがこの伝統の枡に感性の彩りを添えるという光栄な機会をいただくことが出来ました。デザイン感性溢れる方々が枡にインスピレーションを感じて描く世界観は想像だにしなかったもので、作品のデザインが届く毎に驚きと喜びを感じながら、年末の展示会ではどんな世界が見られるのだろうとワクワクしています。それと同時に作り手としてそのデザインが映えるように丁寧な枡づくりを心掛け、いつもは内製化しているシルクスクリーン印刷をその道のプロに託し繊細な機微を忠実に表現できるように体制を整えて臨みました。枡が映えるというと何か安っぽいですね。枡にとってみれば晴着をまとったようにいつもの自分と違う姿を見せられるという晴れ舞台だと思います。枡とアートが織りなすこれまでにない伝統と感性の融合を「枡を粋でかっこよく!」「枡をエンターテイナーに!」を目指す私たちの具現化した姿を多くの人に見てもらいたいと願っています。
有限会社大橋量器
代表取締役 大橋博行
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枡づくりには、材料の仕入れから完成まで12の工程があります。釘を使わずに木を組んで製作するため、隙間や歪みができないように、どの工程も職人による丁寧な作業が欠かせません。
1. 仕入れ
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枡の素材には、住宅建築時などに出るヒノキの端材を仕入れています。端材を無駄にせず活用できるため、エコなプロダクトといえます。仕入れた木材は工場の外の屋根のついたスペースに積み、保管しています。
2. 乾燥させる
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木の水分量が多いと製作の過程で歪んでしまうため、最初に木材をしっかりと乾燥させます。工場2階の日当たりと風通しの良いスペースで、木材を桟積みにし、数ヶ月かけて乾燥させます。枡はお正月や節分に使われることが多いため、冬の繁忙期に向けて、夏から大量に乾燥させておくそうです。繁忙期には、燻して数日で乾燥させることもあります。
3. 駒をつくる
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乾燥させた木材の表面を削り、加工しやすくサイズを整えて、枡の側面と底面のパーツをつくります。側面のパーツは駒と呼ばれ、枡の大きさに合わせてカットした板材を特殊な機械に通し、断面を削ることで、木を組むための凹凸をつくります。木材を削りカットする工程では、カンナ屑や細かな木屑が大量に出るため、工場内は常にヒノキの良い香りがしています。カンナ屑は、納品する際の緩衝材にしたり、香りを楽しむグッズとして販売したりしています。
4. 木を組む
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刷毛で駒にのりを塗り、機械に4面をセットすると、枡の側面が組まれていきます。その後、底板と側面をのり付けし、機械で20分かけて圧着することで、枡の形ができあがります。底板をつける作業は、昔は機械がないため、上から重しをのせて、時間をかけて圧着していたそうです。
5. 整える
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3枚の刃が高速回転する、円盤カンナと呼ばれるカンナで側面を削り、表面を滑らかにします。手の感覚で枡の厚みを調整し、一合枡の場合は11mm程度の厚みになるようにしています。刃を扱う機械は、その日の天候によって切れ味が変わるため、毎日、職人による調整が必要です。円盤カンナは特に繊細な作業です。円盤カンナで表面を整えた後は、12箇所ある枡の角をサンダーにかけて、職人が一つ一つ出来栄えを確認します。
6. 焼印
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最後に枡の底面に焼印を押します。今では機械を使って電気熱で焼印する方法が殆どですが、昔は直火で熱したコテを枡に押し当てて焼印していたそうです。今ではもうコテをつくれる職人がおらず、新しいデザインは機械で焼印していますが、昔から枡をつくっているお寺などのコテは大切に保管されていて、今でも直火で焼印しているそうです。
こうして、さまざまな工程を経て、組み木の枡が完成します。