愛知県豊橋市の職人が日本の伝統的な技術で織り上げた生地に、144人のクリエイターの個性豊かなデザインを染め抜いた、オリジナルの前掛けをつくりました。約100年前のTOYOTA製シャトル織機を使って、厚くてしなやかな“100年経っても使える”丈夫な前掛けをお届けします。
酒屋や米屋などで見かける前掛けは、正式には「帆前掛け」といい、その起源は諸説ありますが、室町時代までさかのぼるともいわれています。体の前に掛ける(垂らす)ことから、「前掛け」「前垂れ」と呼ばれ、日本の伝統的な仕事着としていまも使われ続けています。
前掛けの産地である愛知県豊橋市では、1950~70年代、多い時には1日に1万枚が出荷された時期もあったそうです。日本の経済成長とともに、酒蔵や米屋、味噌屋、醤油屋などさまざまな業種で社名や店の屋号、商品名などが入った前掛けがつくられ、全国に広がりました。
前掛けは、ひもを腰でしっかりと締めて使うため、重いものを運ぶ時に腰を支えたり、肩に前掛けを当てて木箱などの重い荷物を担いだりなど、働く人の体を衝撃から守るミニマムな仕事着として、また、生地に染め抜きを施すことで広告宣伝媒体やユニフォームとして活用されている実用的なアイテムといえます。
この前掛けを、会社やお店ではもちろん、キャンプなどのアウトドアやガーデニング、キッチンなど、お仕事や生活スタイルにあわせて、永く愛用していただきたいと願っています。大切な人への贈り物にもおすすめです。
7月に開催したオンラインワークショップ「クリエイション・キッズ・ラボ 2021」で子どもたちがデザインした前掛けも展示します。
本プロジェクトによる販売収益金は、セーブ・ザ・チルドレンに寄付し、新型コロナウイルス感染症の影響で経済的に困難な状況にある家庭への食の提供や、子どもの貧困問題の解決や虐待の予防など、未来を担う日本の子どもたちの支援のために役立てられます。作品を購入していただくことで、どなたでもチャリティーにご参加いただけるプロジェクトです。
日本のものづくりとデザインの価値や魅力を子どもたちに伝えるチャリティープロジェクト。
多くの方々にアートやデザインの楽しさを感じてもらおうと、1990年からはじまった毎年恒例のチャリティープロジェクト。2つのギャラリーと交流のあるクリエイターの方々にボランティアで制作していただいた作品を展示・販売し、収益金をチャリティーとして寄付しています。2009年より「Creation Project」と題し、2011年〜2015年は東日本大震災の復興支援として、被災地での産業を応援しようと地元の職人さんとものづくりをし、合計約1134万円を義援金として寄付、2016年は熊本地震の義援金として158万円を寄付しました。2017年から、生産地を日本全体に広げ、日本のものづくり・産業をデザインの力で発信していくプロジェクトとして継続し、セーブ・ザ・チルドレンに合計約313万円を寄付しました。
2011 印染トートバッグ展、2012 アロハシャツ展、2013 石巻バッグ展、2014 東北和綴じ自由帳展、
2015 伊達ニッティング、2016 藍色カップ、2017つつの靴下展、2018 ちいさな豆皿、2019 ふろしき百花店、2020「〼〼⊿〼」益々繁盛(枡)
クリエイションギャラリーG8展示風景
ガーディアン・ガーデン展示風景
展覧会によせて
前掛けは江戸時代から形を変えず働く人たちの体を守ってきました。
紅白の帯(腰ひも)には「紅白」=おめでたい、商売繁盛、という意味が込めらており、下にひらひら付いている「フサ」は、神社のしめ飾り由来と言われています。
弊社エニシングは東京に本社があり、豊橋に工場のある、ベンチャー企業です。
2005年に帆前掛けの企画販売を開始し、豊橋の職人さんたちと出会い、技術を学び、その後、2019年に豊橋に新しい工場を建設、100年前のトヨタ製シャトル織機を使って現在も製造を続けております。
その日本伝統の仕事着・前掛けを、「百年前掛け」をテーマに、144名の国内外のクリエイターさんがデザインし、アート作品に生まれ変わりました。
伝統の帆前掛けを踏襲し、1色、しかも柄を「染め抜く」ことで表現するのは、多くのご苦労があったかと思いますが、我々も1点1点、最高級1号前掛け生地を使ってしっかり製造させていただきました。
16年前、2005年に私が初めて産地豊橋を訪れた時には、職人さんたちから、
「俺たちもそろそろ辞めようと思っている。我々が辞めると日本から前掛けは無くなるかもしれない。だが、それも時代の流れだから仕方がない。」
と言う声も聞かれた前掛けですが、今回このような貴重な機会をいただいたことを励みに、世界中で愛され、「MAEKAKE」が普通に使われる言葉、日常に根差した文化、になっていくよう、我々もひたむきに努力を続けていきたいと思います。144名のクリエイター×日本伝統の前掛け、ぜひゆっくりとご覧ください。
有限会社エニシング 代表取締役社長 西村和弘
前掛け生地作り
約100年前のTOYOTA製シャトル織機を使用し、昔ながらの伝統的な製造方法でつくる前掛け1号帆布。日本唯一の前掛け産地・愛知県豊橋の職人達と、前掛け本来の生地の厚みを復活させた、最高級の前掛けです。太い糸を、空気を含ませながらゆっくりと織るため、厚くて丈夫ながら軽く、使い込むほどに柔らかい風合いになります。
1. 経糸(たていと)の整経
832本の経糸を太いローラーに巻きつけます。均一なテンションを保ちつつ、糸の傷などコンディションもチェックして巻きつける、前掛けのベースをつくる大事な工程のひとつ。
2. 生地を織る
織り機に設置された経糸(たていと)が1本おきに上下交互に動く間を、シャトルにセットされた緯糸(よこいと)が左右に勢いよく走り、1段1段が織られていきます。
前掛け2枚分の長さを織ったら、緯糸を数センチ分飛ばして、また2枚分織って、を繰り返し……。緯糸を飛ばしたところがフサになる部分。
8台ある織り機の動力源は、天井近くの高い場所に置かれた小さなモーター1台。モーターがバーを回すことで、ベルトで繋いだ織り機それぞれの歯車に伝わって動いています。
3. 検反
織った生地に傷や汚れがないかどうかを、ひとつひとつ丁寧に確認して生地を整えます。明るい場所で生地を光に透かしながらチェックします。
染め抜き
染め抜きは、一度染め上がった生地から、絵柄の部分の色を抜く(生地本来の色に戻す)ことで絵柄を浮かび上がらせる染色方法。生地にインクをのせるプリント方法と異なり、柄の部分の劣化がなく、表面がゴワゴワするということもありません。職人の手作業で一枚一枚染め抜くため、昔ながらの味わいのある仕上がりになります。