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展覧会・イベント

タイムトンネルシリーズ Vol.10

『土田ヒロミを数える』

  • 会期:1999.11.1 月 - 11.26 金
  • 時間:●第1部 1999 年11月1日(月)〜11月26日(金)第一会場:クリエイションギャラリーG8 「ベルリン1999」第二会場:ガーディアン・ガーデン 「ONE3」Part.1 ●第2部 2000年1月17日(月)〜2月10日(木)ガーディアン・ガーデン 「ONE3」Part.2 11:00a.m.-7:00p.m. 土曜・日曜・祝日休館 入場無料

「タイムトンネルシリーズ」は、第一線で活躍するクリエイターの若き日にスポットを当てる展覧会です。ガーディアン・ガーデンでご紹介する、 学生時代の習作やデビュー当時の作品など、今となってはほとんど日の目を見ない作品には、作家の創作の本質ともいうべき発想の原点、 表現手法を理解する上でのヒントがたくさん隠れていると思います。また、クリエイションギャラリーG8との共同開催によって、 現在の作品と対比させながら、作家の全体像をご紹介しています。今回は、写真家・土田ヒロミさんにお願いしました。
常に明快なコンセプトのもとに、同時にいくつかのテーマを撮り分ける写真家・土田ヒロミ。
その一つ一つを時間をかけて丁寧にまとめ、 発表してきました。現在も10余りのテーマを同時進行中です。なぜ、全く視点の異なる作品を同時期に撮るのか、その根底にある変わらぬ モノとは何なのか。自己と時代を見つめるドキュメンタリストの、デビュー当時から現在にいたるまでの足跡をたどります。

『ベルリン 1999』企画趣旨/土田ヒロミ
ベルリンの壁が崩壊してから10年の歳月がたとうとしています。崩壊後、東西の冷 戦構造は急激に消滅にむかっております。たしかに大きな政治的対立は解消したか にみえます。 しかし、現状は日々あらたな闘争が続発し、平和で調和のとれた社会状況にないこ とも事実です。それらの多くは、異民族間に生じる文化的摩擦からくる争いであっ たり、経済的対立であったりと、かつての政治的イデオロギー対立とは異質な争い ですが、調和融合の確立にはほど遠い状況が現実です。 ベルリンの壁は、かつて、東西冷戦の象徴でしが、崩壊、撤去されたその痕跡は、 21世紀に遺されたテーマ??文化、経済摩擦からくるストレス??を具現化した新 たな対象としてあり続けていると考えます。 わずかに残る廃墟としての壁、記念碑として遺された壁、撤去できずに遺されてい る壁、それらが痕跡化されてきている境界線。また、かつての壁の存在が都市の中 に残しているであろう歪みと都市空間、等々を検証することは、21世紀を前に新し い思考を構築するために有意義であると考えます。 また、この作業は、写真美学的視点から見ると、大変おもしろい問題を提起するこ とにもなると考えられます。すなわち、不可視なる構造(差別、差別意識、境界意 識)を、その物理的実体を喪失した壁の痕跡を探し視るという行為をとおして意識化 することが可能となるはずだからです。 物理的実体を喪失し不可視なるモノと化した対象(壁)を凝視するという視覚感覚 における逆説的な矛盾。この作業は、現代の映像時代において肥大してしまった視 覚感覚に対して、真に主体的に“視る”ということの意味を明らかにすると考えら れます。 以上述べましたように「社会科学的視点」と「写真美学的視点」の両面 を内包した 作業として『ベルリン 1999』を撮影記録したいと考えております。

土田ヒロミ

1939年福井県生まれ。福井大学工学部在学中に写真を始める。工場の解体現場を大胆な画面構成でとらえた作品「KU」で、初めて応募した『カメラ芸術』に入選。1963年卒業後、ポーラ化粧品本舗に入社し、研究所に勤務(静岡)。翌年東京勤務となり、サラリーマン生活を送りながら、東京綜合写真専門学校夜間部に通う。1971年、浅草を撮りながら自分自身の中に潜む土俗的な部分に気づいた「自閉空間」で太陽賞を受賞。同年退社しフリーとなる。その延長でまとめた「俗神」(1969~1976年)、群れたがる日本人をとら えた「砂を数える」(1975~1990年)、粘り強く広島の被爆者を訪ね歩いた「ヒロシマ1945~1979」 などを撮る一方、写真はしょせん表層しかとらえられないのだという考えから、美しいゲイを撮った「青い花」(1972~1980年)、時の流れを確認するかのごとく風景や自分自身を定点観測した「ヒロシマ・モニュメント」(1975~1990年)や「Ageing」(1986年~)など、常に明快なコンセプトのもと、同時にいくつかのテーマを撮り分けていくスタイルで現在に至る。 また、双子の弟として生まれた自分自身への興味もつきない。現在は、壁崩壊後10年のベルリンなどを 撮影中。1978年伊奈信男賞、1984年日本写真協会年度賞、1986年J・C・J 奨励賞受賞。

展示内容
現在撮影中の最新作「ベルリン1999」を展示。10年前のベルリンの壁崩壊後を定点観測した作品を、あえてデジタル画像で発表。

タイムトンネルシリーズ小冊子
この小冊子は、タイムトンネルシリーズの展覧会開催にあわせて制作したもので、 学生時代の習作やデビュー当時の作品など、今となってはほとんど日の目を見ない 作品に秘められた、作家の創作の本質ともいうべき発想の原点をさぐり、作家の 全体像をご紹介するものです。
体裁:天地210×左右148mm、全56ページ、モノクロ
価格:500円(消費税込み)

主催
クリエイションギャラリーG8 ガーディアン・ガーデン

後援
ドイツ連邦共和国大使館

協力
富士写真フイルム株式会社 株式会社写真弘社 com.コム-田島茂雄
日本ヒューレット・パッカード株式会社