「ダ・ヴィンチ」
1994年4月6日、『ダ・ヴィンチ』は創刊しました。その媒体コンセプトは、“本から入らない本の雑誌”。例えば、装丁の美しさに惹かれて未知の著者の一冊を手にする。腰巻き(帯)のコピーに誘われて興味がなかったはずの領域に足を踏み入れる。その不意を突くような出会いを、私たちは素晴らしい出来事だと考えました。そんな思いを託し、創刊号以来、本誌の巻頭に「今月の装丁・腰巻き大賞」を連載してきました。毎月一回、多忙を極める仲畑貴志さんと葛西薫さんに実際に書店に足を運んでいただき、店内を他のお客と同じようにウロウロ回ってもらって選びます。店頭での出会いを重視するが故の審査方法です。お陰様で、当初より好評を博し、なかでも装丁を担当された方々からは多くの激励と感謝のお言葉をいただきました。恐縮です。ただ、恐縮しつつも、選出してきた作品のレヴェルの高さには自信があります。そこで、5周年を迎えるにあたり、これまでの入選作品を一挙ご紹介する展覧会を企画しました。(ダ・ヴィンチ編集部)
展示内容
『ダ・ヴィンチ』誌上で、仲畑貴志(コピーライター)、葛西薫(アートディレクター)、長薗安浩(ダ・ヴィンチ編集人)の3人が選んだ装丁大賞、腰巻き大賞の受賞作品をご紹介します。1994年5月創刊号より毎月選出された装丁4冊、腰巻き5本、5年間で合計約500冊を一挙に展示します。
展覧会開催にあたって
『ダ・ヴィンチ』が創刊されて2年余が過ぎた頃、“ダ・ヴィンチBOOK”シリーズを刊行しました。連載を中心に本誌の好評企画を単行本化するものです。現在も元気に継続しています。最初はもの珍しさも手伝って、嬉々としながら編集作業を進めました。しかし、どうしても立ち止まらざるを得なかったのが、装丁と腰巻き(帯)の作成です。雑誌編集者には無縁の世界です。まさに、言うは易し行うは難しでした。そんな時、審査員のお二人の言葉を思い出しました。仲畑さん曰く「いずれにしても腰巻きのコピーは広告文なのだから、内容紹介という本筋を踏み外さないことが肝心」「小手先のテクニックよりも強さが大事」。葛西さん曰く「装丁の良さというのは表紙のデザインだけではなく、本の大きさや厚さ、重み、紙質などトータルで表すもの」「腰巻きコピーには信頼性が必要だと思う」……お二人とも、振り返れば、とても基本的なことを指摘してくれています。その上での完成度を毎月選考してきたわけです。抜群のセンスと絶妙のバランス、と両者が絶賛した南伸坊さんの『顔』などはそのお手本でしょう。いやいや、あらためて過去の入賞作品を眺めてみれば、そのどれもが、今も私には十分なお手本たちなのです。
(もうひとりの審査員 ダ・ヴィンチ編集人 長薗安浩)
主催
ダ・ヴィンチ編集部(株式会社メディアファクトリー)
協力
ガーディアン・ガーデン