アジアンフォトグラフィー第4弾 中国の若手写真家4人展
この展覧会は、欧米の写真家に比べ、とりあげられる機会が少ない、近隣アジア諸国の注目されている若手写真家をご紹介しています。4回目の今回は、中国の写真界で指導的な立場にあるキュレーター呉嘉寶氏にご協力いただき、中国のみならず世界を舞台に活躍する30代の写真家4人の作品を、会期を二会期に分け、二人ずつご紹介します。現在の中国では、急激な経済発展にともない伝統的な価値観・文化が崩壊し、新たな生活様式が生まれているようです。2008年の北京オリンピックを控え、めざましい勢いで発展、変化する中国社会の現状を、写真を通してご覧いただければと思います。
展示内容
第1会期では、自然と共に生きる“天人合一”という中国の伝統的な価値観の下に暮らす人々を追った「儺」晋永権と、近代化の波にのまれ、伝統的な価値観・文化が崩壊していく様を、揚子江三峡ダム建設現場に重ねる「三峡」顔長江の2作品をご紹介します。
第2会期では、中国現代社会の虚無さ、崩壊していく家庭観を描いた「ある日々」王寧徳と、伝統的な写真観からかけ離れ、これまでの枠には収まりきれない「ガラスの裏の丘」丘の2作品をご紹介します。
展示によせて
1978年、鄧小平が「改革・開放」政策を推し進める中、中国の近代写真は急激な変化を世界に示しました。一時、サロン写真やメランコリーな心象写真が現われましたが、’80年代に入ると「紀実写真」といわれる写真が急速に主流になりました。それは、新聞写真、報道写真、ドキュメンタリー、スナップショット等の総体のようなものです。しかし、五千年の歴史を持つ中国文化資産と13億人という巨大マーケットを背景にしたエネルギーは、さらに中国近代写真文化の様相を加速度的に変化させました。2000年を境に地方政府の主催する国際写真フェスティバルが、全国で一気に5つも立ち上がり、さらに、写真学科を持つ大学も2校から30校に急増することで、その勢いをますます加速させます。そして、2003年12月、広州にある広東美術館が主催した「中国人本~近代における紀実写真」展では、250名の中国写真家による640数点にも及ぶ作品が展示されたのですが、結果的には、これが中国の紀実写真時代のピリオドを打つ写真展になったのです。今回の展覧会では、この30年間の中国の写真文化が急速に変貌してきた様子を、4人の若手写真家の作品を通じてお見せしたいと思います。今、中国の人々は、グローバリゼーションの中で近代物質文明の洗礼を受け、自然と共に生きる「天人合一」と呼ばれる伝統的な価値観を捨て去っています。そこには、個人主義的な疎外と孤立のカプセルに入り込むという近代文明の価値観の中に飛び込もうとする中国の現実が見えてくるのです。
呉嘉寶
呉嘉寶 WU Jiabao/1948年台湾生まれ。’76年日本大学芸術学部写真学科卒業。’87年台北視丘撮影芸術学院を創立。現在、台湾中国文化大学情報伝達学科、中国瀋陽魯迅美術学院、大連医科大学影像芸術学院客員教授。’04年中国平遥国際写真フェスティバル総監督を努める。台湾、香港、中国の写真作家を世界に紹介すべく、写真展、学術シンポジウム等の活動を数多く手掛けている。
主 催
ガーディアン・ガーデン
企画協力
呉嘉寶(台湾・キュレーター)
パンフレット
1,000円(税込み) A4判・48ページ・図版点数約90点 中国語訳・英訳付き・11/29発売予定 会場での販売とあわせ、通信販売も行っております。(送料別)