アジアンフォトグラフィー第6弾
1994年にはじまった「アジアンフォトグラフィー」シリーズでは、近隣アジア諸国の若い作家たちに注目してきました。2年ぶりとなる第6弾では、世界を舞台に活躍する韓国の気鋭な作家4名をご紹介します。独自の写真表現を模索し、新たな方向へと進む韓国写真界の動向をぜひご覧ください。
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出品作家
兪載學(ユー・ジェーハク YU,Je-Hak)
金玉善(キム・オクソン KIM,Ok-Sun)
朴昇勳(パク・スンフン PARK,Seung-Hoon)
權正峻(クォン・ジョンジュン KWON,Jung-Jun)
展覧会カタログ
会場およびホームページにて販売(1000円、A4判カラー32ページ、日/韓/英語対応)
展覧会に寄せて/金升坤(キム・スンコン)
性別も年齢もキャリアも違う4名の作家をご紹介します。当然、関心や方法も異なり、皆しっかりとしたそれぞれの方法論を確立しています。彼らは現在の韓国写真界を代表する作家ですが、それらの作品は韓国でいま流行りの写真の傾向が一目で分かるような構成ではありません。
兪載學の生き方と写真を区別することはできません。数年前から江原道の小都市に移り住んでいる彼は、ソウルの喧騒に触れた後の数日間は何も手に付かないほどの極端な繊細さをもっています。手作りの木製カメラに4☓5のカラーネガを詰め、助手席と後部座席を取り払い板を敷いた中古車に寝泊りしながら、風景と自分の内面がシンクロする場所と時間を探します。空間的、心理的に可能な限り中立的な角度で撮影された植物たちは、カオス的でありながら純粋な生命感に満ち溢れています。
金玉善は教育学を専攻した女性写真家で、国際結婚をしたカップルたちの姿を階段や居間のソファー、キッチンなど日常の生活空間の中で撮影しています。彼らの視線はそれぞれ異なる場所に注がれ、夫婦としての親しさはほとんど感じられず、まるで演劇の一場面のようなよそよそしさです。韓国の既婚女性には、いまだ家父長制や厳しい儒教思想、根深い男性優越主義など乗り越えなければならない壁が多いのが現実です。また、同様の主題として異質の文化や制度をとらえ、彼女は同性愛カップルなども撮り続けています。彼女自身、国際結婚をしています。
大学で観光学を学んだ朴昇勳は、増殖し続ける都市に関心をもっています。ソウルの中心を流れる漢江の数十㎞にわたる高水敷地を大型カメラを担いで歩きながら、両岸に林立した高層アパート群を一年間かけて撮影した写真を季節と時間帯毎に分類し並べた作品や、16㎜映画フィルムで撮影したフィルムのコマを切り取りパズルのように再構築した都市景観作品には、物理的な時間や空間とともにソウルという巨大都市のもつ複雑で矛盾した意味など、あらゆるものが圧縮され織り込まれています。
權正峻の作品は、我々の眼にそれがどのように見えようとも、分子のレベルまで拡大すれば全てのものは平面であるという認識から出発しています。そのため、眺める視点が重要になってきます。たとえば、彼は丸い形のリンゴを6つの方向から撮影した写真を正六面体に貼り立体に置き換えます。立方体になったリンゴはあまり美味しそうには見えませんが、見る者の想像力と知的な遊び心をかきたてるような楽しさがあります。西洋画専攻の彼にとって、写真は何かを写すための道具ではなく、表現のためのメディアに過ぎません。
韓国展は今回で3回目を数えます。これまでガーディアン・ガーデンで紹介された若い写真家たちは、いま韓国の現代写真の第一線で最も活発に活躍しています。ここに紹介される4名の作家たちにとっても、この展示が必ずや意義深い経験になるに違いありません。
[金升坤プロフィール]
1940年生まれ。高麗大学文科大国文科卒、日本大学芸術学部写真学科卒、筑波大学大学院芸術研究科修了。現在、国立順天大学教授、東北アジア写真交流会会長。’83年以来、写真展や学術シンポジウム、『写真批評』誌の発行など、韓国内外で写真を中心とした活動を数多く手掛ける。’95年第一回東京国際写真ビエンナーレ審査員、2004年日本写真協会国際賞受賞
主催
ガーディアン・ガーデン
企画協力
金升坤(キム・スンコン KIM,Seung-Kon)/韓国写真評論家