第7回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展
仲田絵美は、14年前の母親の死という経験から、「人が死んでしまうこと」「人が生きていくこと」について考えて生まれた作品「美しい速度で」により、第7回写真「1_WALL」のグランプリを獲得しました。父親と二人で暮らす日々、母親の遺品や家族に関係する写真を組み合わせて展開し、「ポートフォリオでも力がこもっていたが、展示でもまた違う次のものを見せようと挑戦していた」、「完成度の高い作品であり、強い意志を持っている作家」と、審査員に評価されました。
今回の個展では、仲田自身が更に深く作品にのめり込んでいきます。母親の遺品である洋服や小物などを家の中で撮影し、それらに込められた母親の記憶をひとつひとつ写真に置き換えていきます。また、母親の遺品を身に纏った自分自身を撮影し、時おり父親にもシャッターを切ってもらいます。亡き母親を想いながら繰り返し撮影を行うことで、父親との距離を測り、少しずつ近付いていきます。仲田は自分自身の体も母親が遺したもののひとつと考えています。その体を被写体として、父親とともに写真を撮ることで、母親の死に力強く対峙します。「よすが」という言葉は「縁」と書き、身や心のよりどころをさします。仲田が見つけ出した「よすが」を、ぜひ会場でご覧下さい。
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展示によせて
14年前、母が死にました。
我が家ではこれまでの間、母の遺品を保管していました。
しかし去年の父の定年を機にこれらを処分することになり、私は母の遺品撮影をはじめました。
私が撮った遺品写真
母の遺品を身に纏った自分自身を撮影した写真
また、その姿を父に撮影してもらった写真
など
これらの写真から見えてきたもの。
それが 身や心のよりどころ、
すなわち「よすが」でした。
仲田絵美
審査員より
仲田絵美は身のまわりのことを撮るが、“日常”を撮っているわけではない。そのことは、新作「よすが」によって鮮明になったように思う。
母の遺品をまとい父にシャッターを押してもらう彼女の、写真の中に身を投じた、凝固した眼差し。自らを刻みながら、世界に対する触手がふるえるセルフポートレート。「よすが」は、写真の存在そのものであり、仲田がそこから生と死に向けてたどたどしくも生み出そうとしている関係のことだ。写真家・仲田絵美のゆくえを、私は身をもって見つづけたい。
姫野希美(赤々舎代表取締役・ディレクター)
第7回写真「1_WALL」展
2012年9月18日(火)~ 10月11日(木)
公開最終審査会 2012年9月27日(木)
以下の審査員により、仲田絵美さんがグランプリに選出されました。
[審査員]
秋山伸(グラフィックデザイナー、パブリッシャー)
鈴木理策(写真家)
土田ヒロミ(写真家)
姫野希美(赤々舎代表取締役、ディレクター)
増田玲(東京国立近代美術館主任研究員)
※五十音順・敬称略
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