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居山浩二展「文字景-typescape」作家インタビュー

2008.6.1 日

居山浩二さんとの出会いは、1991年多摩美在学中に、オープン当初のガーディアン・ガーデンでグループ展を開催してもらったところまでさかのぼります。その後、大学を卒業、日本デザインセンター勤務、ウェブ制作会社を経て、独立されました。現在は、集英社「ナツイチ」キャンペーンを手掛けるなど、アートディレクターとして活躍されています。今回は、現在に至るまでのお話、デザインする上で大切にしていること、そして、個展についてのお話を伺いました。

日本デザインセンター入社、新人時代
大学4年生の時に、デザインとか広告を本気でやりたいって思い始めました。デザインセンターに入ってからは、当然ですけど、いきなり面白い仕事をまかされるわけでもなく、地味な仕事をこつこつやっていました。一方で、こんなものを作ったら面白いんじゃないかっていうアイデアがたくさんあって、それをどうにか形にしたくって。当時はとにかくポスターが作りたくて、シルクスクリーンでやるしかないと、知り合いにお願いして工房を使わせてもらいました。仕事が終わってから、そこへ刷りに行って。すぐ朝になっちゃって、家に帰って仮眠して会社へ行く。そうやって、一生懸命作ったものが、ADC年鑑に掲載されたり、海外のポスターのコンペに入選しました。きちんとやることをやったら反応があるんだな、と思ったんです。

JAGDA新人賞受賞
デザインセンター退職後、ウェブデザイナーを経て、独立。仕事もそこそこあって満足してたんですけど、2〜3年するともの足りなさを感じてきました。もっと違う仕事の展開ができないだろうか、と思っていた時に、JAGDA新人賞にチャレンジしてみようと考えました。こんなのを作ったら面白いって思えるものをとにかく形にするべく、トライしていったんです。JAGDA新人賞展(クリエイションギャラリーG8)を何度も観に行って、イメージトレーニングしたり。僕は来年ここで展覧会をやるんだから、どの壁に何を展示しようかシミュレーションしてみては、これじゃ全然足りないし、様にならないぞって焦ったりしながら、とにかくやるんだって思い込んだんです。それから2年、2005年に出品する前に作品を並べてみたら、これはかなり充実してるぞ、これでダメだったらもう無理だ、と思える作品群になっていました。これ以上エネルギーを使うことはそうそうできる事じゃないと思って。でも、なかなか連絡がこない。「もうダメだったんだ」ってあきらめてたら、電話がきた! もうバカみたいに、本気で喜びました。

オリジナリティ
クライアントの求めているものをよりよい形で定着させること、基本ですよね。課題に対して、どう回答するかという道筋をきちんと示す。それを念頭において仕事をすることで、自分にとっての「もの作り」が見えてくる。でも、知らず知らずのうちに「自分」っていうフィルターを通って自分の個性が滲みでちゃうのは、もうどうしようもない。自分の個性を全面に出すよりも、あくまでもクライアントの意向を大切にした上で形になったものが、結果的に居山っぽいということになっていればいいと思う。デザインセンター時代のシルクスクリーンのように、自分の表現をつきつめていた時があったからこそ、そういうことになるんだと思うんです。遠回りしながらも経験してきたことが、きっと糧になってるんですよね。

今回の展覧会「文字景 –typescape」について
アートディレクションを担当した、ある本のタイトル文字を空中につり下げて撮影したことをきっかけに、今回の展覧会では、文字の一部分を分解したパーツを使って、とにかく大きなモビールを作りたいと思いました。それから、その分解した文字のパーツがいろいろな空間にあったら面白いなと思って、風景の中に文字のパーツを吊ったり置いたりしたポスターを作りました。パーツは、造形的におもしろい形のものを中心に、それ自体だと文字として読み取れないけれど、風景の中に置いてみることで、別の意味にも読み取れそうなものを選んでいます。展覧会を見ていただく方が、自由に思いもよらない解釈をしてくれると、すごく嬉しいですね。撮影場所は、あたりをつけて行ってみてから、どのパーツが合うんだろうってその場で選ぶ。だんだんその作業に慣れてきて、この風景にはこのパーツだってどんどんイメージがわいてくる。きりないですよ、いくらでもできちゃう。本当に文字と共に旅した感じです。

居山浩二

1967年生まれ。アートディレクター/グラフィックデザイナー。1992年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。日本デザインセンター、atomを経て、イヤマデザイン設立。

受賞:JAGDA新人賞、N.Y.ADC銀賞、銅賞、特別賞、香港国際ポスタートリエンナーレ銀賞、銅賞、メキシコ国際ポスタービエンナーレ銅賞、ブルーノ国際ポスタービエンナーレThe Union of Visual Artists of the Czech Republic Awardなど

主な仕事:集英社文庫「ナツイチ」キャンペーン、ロート製薬「AOHAL CLINIC」クリエイティブディレクション、東京大学医科学研究所、EUジャパンフェスト「European Eyes on Japan」アートディレクションなど。