第7回グラフィック「1_WALL」グランプリ受賞者個展
誰でもないヒロインに、漫画とはちがった形で物語を与えたい
大門光は、一見するとどこかで見た事のあるような少女漫画のヒロインたちを、フリーハンドで会場の壁面に直接描いた「ゲンガ」で第7回グラフィック「1_WALL」のグランプリを受賞しました。鉛筆で大きく描かれた少女の絵に、審査員からは「あのタッチの絵が額縁に入ってくることを想定していたのを、良い意味で裏切ってくれた」、「場を与えた時に的確に返すクレバーさを持っている」、「タッチの面白さだけでなく、描かれた人物が魅力的」と評されグランプリを獲得しました。
「小さな頃、少女漫画に憧れて、何度も何度も真似て描いたかつてのヒロインたちが、ペンを持つと無意識のうちに顔を出してきてしまう」。多くの漫画を模写したことで、意図せずからだに染みついた目や輪郭、加えて予備校時代に学んだデッサンの線が混ざりあう少女の絵に、大門自身これが一体誰でこの先どこに進むのか分からずに持て余していたと言います。「ゲンガ」はそんなヒロインたちに、漫画とは違う物語を与えたいという思いから制作されました。今回の個展では、「ゲンガ」を新たに会場のなかで制作、展示いたします。壁全体にもっと大きく描きたいと意気込む大門の手の中から、どれだけスケールアウトした少女たちが現れるのか。ぜひ会場でご覧下さい。
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展示によせて
ことの発端は、わたしが何の気無しに描いた絵を見て「これはすごいよ」と、友人が言ってくれたことでした。当時のわたしにとって、漫画のような絵を褒めてくれる人がいる、ということは、ひどく衝撃的なことだったのです。しかし、自分の中で漫画絵を描くことを良しとすると、自分の絵に、今まで見えなかった不思議な奥行きが見えてきたり、絶対何とかなる、という妙な確信が生まれたり、ことは驚く程、倍速で進んでいきました。おそらく誰にも、何かをつくる上で自分にぴったり合う方法、というものがあるのだろうと思います。それがわたしにとっては「ゲンガ」であり、それを見つけられたことは、本当に大きな幸運だったと、今でも思っています。
大門光
審査員より
つくり続ける人には、情熱と信念をもって目標にむかう姿をとかくイメージしがちだが、それは違う。主体を感じない優柔不断な態度、場に応じて変化するかまえ、暗示にかかりやすい性格、小さな悪意、目の前のささいな問題に打込む地味さ、ちょっと悔しいと思う瞬間、人まかせ、寸前にきらめく開き直り、そして「なんだこれで良いんだ」と気づく体験。大門光が備えているこれらの特徴が、つくり続けるためのコツそのものなのである。
都築潤(イラストレーター、グラフィックデザイナー)
第7回グラフィック「1_WALL」展
2012年8月20日(月)~9月13日(木)開催
公開最終審査会 2012年8月30日(木)
以下の審査員により、大門光さんがグランプリに選出されました。
[審査員]
居山浩二(アートディレクター、グラフィックデザイナー)
大塚いちお(イラストレーター、アートディレクター)
柿木原政広(アートディレクター)
菊地敦己(アートディレクター)
都築潤(イラストレーター、グラフィックデザイナー)
※五十音順・敬称略
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