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中島古英写真展「肌の温度 葉の温度」作家インタビュー

中島古英さんは在学時代に『ひとつぼ展』に入選しました。大学院卒業後は株式会社ライトパブリシテイにフォトグラファーとして入社し、現在、キユーピー、花王の広告やCFなどで活躍しています。今回の作品は、公募展に応募していた当時から撮り続けている、老婦のポートレートと植物の写真ですが、このテーマにいたるまでのいきさつを中島さんに、うかがいました。

写真との出会い
写真に関心を持つようになったのは中学生くらいです。家にアーヴィング・ペンやリチャード・アベドンの写真集がありよく眺めていました。写真を始めるきっかけは、高校一年生のとき、父から一眼レフのカメラをもらったことです。友人を撮ったり、撮られたりしていましたが、その当時は撮ることより写真を見ることのほうが好きでした。だから大学でも、「見ることが好き」ということで芸術学を学ぼうと思っていました。でも、芸術学は年齢を重ねてからでもできる。写真は若くて体力のあるうちしかできないと考え、写真学科に進みました。撮るのが楽しいと思いはじめたのは、学生時代に『ひとつぼ展』など公募展に出品するようになってからです。応募するため自分でテーマを決めて、ポートフォリオを制作するようになりました。今回のテーマである老婦のポートレートや植物の写真なども、当時から撮影していました。自分が見たことの無い、そして自分という人間を通してしか見えない写真を撮りたいとずっと思っています。

ライトパブリシテイに入社
大学を卒業する時、進路では悩みました。親にも相談して、大学院に進学、もっと自分のテーマを掘り下げようと思いました。当時は操上和美さんや上田義彦さんの写真が好きだった事もあって『コマーシャル・フォト』をよく読んでいました。広告の仕事と自分の創作活動を両立していてすごいと思っていたんです。卒業後はスタジオマンになろうかとも考えたのですが、好きだったアートディレクターの細谷巌さんのいるライトパブリシテイが、たまたま『コマーシャル・フォト』でカメラマンを募集していたので、応募したところ採用されました。

変わることなく撮り続けている老婦と植物
能登は自分の原点ともいえるような場所なんです。縁もゆかりも無い場所なのですが、学生時代から能登の朝市などでおばあちゃんたちを撮っていました。撮影後、撮らせて頂いたおばあちゃんに写真のプリントを渡しに行くなどして幾度か同じ土地を訪れ、写真を撮る上でのコミュニケーションの大切さを強く感じるようになりました。今回10年ぶりに撮影に行って、当時写真を撮らせてもらったおばあちゃんと偶然再会することもできたりして、撮影を続けることの喜びを感じました。
植物も花や野菜に始まりずっと撮ってるんです。今回の植物の写真では、植物の葉の細胞が持つ女性的な感じやたくましさが好きなんです。今回の展覧会でおばあちゃんと葉脈の2テーマでいこうと思ったのは生命の持つ力強さや温もりが似ていると思ったからです。顔のしわや手のしわが葉脈に似ているとか、そういった表面的なことではなく、もっと根源的な生き物としての生命力のようなものが共通していると感じました。もっと本質的なものを表現できればいいなと思っています。今回、自分の写真の原点とも言える能登のおばあちゃんたちの写真を撮ったことで、自分自身の写真を撮るモチベーションを再確認することができました。このことは、今後の仕事にも活きてくると思っています。

中島古英

1973年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業、同大学院映像芸術専攻修了。在学中に「ひとつぼ展」「写真新世紀」等の公募展に入選。1997年株式会社ライトパブリシテイ入社。広告スチール・ムービー、雑誌などの分野で活動中。

展示:2007年「青ノ鳥(ミクニヤナイハラプロジェクト)」/吉祥寺シアターカフェ、「PINK PINK PINK!」/FUJIFILM SQUARE、2006年「CICALA-MVTA meets kohide」/世田谷美術館内ギャラリー、2005年「読書する風景」/エモンフォトギャラリー、2004年「cut」/ギャラリー5610

主な仕事:キユーピー、大塚製薬、花王、KIRIN、クラレ、日本テレビ、セイコー、リクルート、ベネッセなど