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山本ヒロキ展「渋谷美術学院」 作家インタビュー

山本さんは多摩美術大学在学中に第17回グラフィックアート『ひとつぼ展』(2001年)に入選しました。大学卒業後、メーカー・デザイン部勤務を経て、2004年MARVINを設立し、現在広告やCI、パッケージデザインなどを手掛けています。また、デザイン教育にも強い関心を持ち、2009年から美術大学専門予備校「渋谷美術学院」の講師を務めています。デザインの道に進んだきっかけから独立に至るまで、そして今回の展示作品についてのお話を伺いました。

ファッションからグラフィックデザインへ
中学生の頃から服が好きで、高校生になって進学を考えた時も、ファションに関わることを学びたいと思ってました。でも新宿の百貨店でヨウジヤマモトのポスターを見て、衝撃を受けたんです。こういうファッションとの関わり方もあるのかって。予備校の友人の持っていた『デザインの現場』に、そのポスターを創った澤田泰廣さんが紹介されていて、グラフィックデザイナーという職業を知りました。澤田さんは多摩美術大学の先生をしていたので、もうそこに行くしかないと決めて入りました。 大学で澤田さんに会っても、憧れの存在というよりは、敵対心しかなかったです。超えてみせるという気持ちでした(笑)。3年生の時に澤田さんのゼミに入りました。課題が出ると、普通は創っている過程を見せるものですが、僕は「創っている途中は見せたくない、講評の時に一番いいものを出します」と跳ね返る生徒でした。でも講評の時にちゃんと一番をもらいました(笑)。卒業制作はB1サイズ程度で最低8枚の作品提出が課題でしたが、僕は32枚創ったんです。もっと創ろうかと思っていましたが澤田さんに止められました。(笑)

MARVIN設立
大学を卒業して、あるメーカーのデザイン部に入りました。その会社では、広告からパッケージ、POP、CFまで全て社内でつくります。働いて3年くらい経って、仕事も一人でまわせるようになっていた頃に、ヘルニアで腰の痛みがひどくて動けなくなって、休職せざるを得ない状況になってしまって。精神的にもずいぶん落ち込んでいました。 そんな時に澤田さんから、ギャラは少ないけどいいものを創ってよ、って「国際絞り会議」のポスターを頼まれました。他の人からも仕事を頼まれたりして、一人でもやっていけるかもしれないと思ったんです。これ以上会社にも迷惑をかけられないし、それで独立して、MARVINを設立しました。でも2年くらいは暗黒期で何もしていなかったです。2006年頃からやっと仕事をし出して、ADCやTDC、JAGDA年鑑に載ったものを見た人から仕事の依頼がくるようになりました。4年目になって、今やっと光明が見えてきたかんじです。かなりほんのりとした、消えそうな光ですが(笑)。

作品にコラージュの手法を用いたきっかけ
アートディレクターの中島英樹さんの事務所に行った時に、彼が大掃除をしてポスターも捨てたという話を聞きました。その時に0(ゼロ)年代が終わるねっていう話もして。改めて2000年代が終わりかと考えたら、僕も多摩美を卒業してからそろそろ10年になると気づいて。それでこれまで仕事で手掛けたポスターも沢山あったし、これを機に捨てちゃおうって(笑)。それで捨てるために破いたら、これがかっこよかった。今まで創ったものを破壊する行為も、クリエイティブに置換できると思ったんです。それで破った断片をB1サイズくらいにコラージュして、それを複写し、印刷してみました。破る度にこの時はこうだった、ああだったってどんどん自分と向き合っていく作業になりました。丁度この作品を創り始めた時期に澤田さんに誘われて、今年の5月に「JAGDA TOKYO」で二人展をしました。この時は印刷して校正を出すという作業を、何度も繰り返しました。網点がほしかったんです。校正で出たものを更に破いてコラージュして。時には元のコラージュ作品に戻ってそれを破って、校正で出たものとあわせたり、そういう作業を繰り返して創りました。

新作「graphizm」について
「JAGDA TOKYO」の時は人に見せようとか考えずに、ひたすら自分と向き合い、自分のために創ってました。でも「graphizm」は、外に発信しようと思って創った作品です。外といっても、主には僕が講師をしている渋谷美術学院の生徒へのメッセージとして創りました。 この作品は、渋谷美術学院内の空間やそこにあるものを組み合わせて、それを写真に撮って素材にしています。色へのこだわりもあって、何度も校正を出して、多いものは10回近く繰り返しました。印刷してみないと完成形が分からないものを創りたかったんです。だから出力見本もない。4色の調合で色を出していますが、印刷屋さんも初めてやる色の掛け合わせだったりして困惑していました(笑)。例えば、金、銀、蛍光イエロー、スーパーブラックの4色を掛け合わせて創った作品は、最初に校正を出したら変な茶色になってしまって。それで網の角度を少しづつずらしたり、色の刷り順を変えてみたりして、ちょっといい感じになってきたと思ったら、ここは良くなったけどここはさっきの方が良かった、さてどうしよう。そういうことを何度も繰り返して創り上げたものです。イメージはぼくの頭にしかなくて、校正が出る度に「イメージと違います」と言うのは心が痛みました。最後まで一回も「無理です」と言う事の無かった印刷屋さんに非常に感謝しています。改めて自分以外の人が介在するクリエイションの面白さを体感することが出来たと思います。

山本ヒロキ

アートディレクター・グラフィックアーティスト・詩人・音楽家・教育者・MARVIN(クリエイティヴエージェンシー・マーヴィン)代表・渋谷美術学院主任・NYADC・TDC・JAGDA各会員“MARVIN is the graphic team which aims at making people happy by
the design. ”

受賞:第9回テヘラン国際ポスタービエンナーレ審査委員特別賞、第10回メキシコ国際ポスタービエンナーレ入選、第9回メキシコ国際ポスタービエンナーレ審査委員賞、第8回モスクワ国際グラフィック・デザインビエンナーレファイナリスト、第7回モスクワ国際グラフィック・デザインビエンナーレ入選、第21回ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ入選、第9、8回世界ポスタートリエンナーレトヤマ入選、2010年上海万博・国際ポスターコンペティション、台湾国際ポスターデザインアワード2007ファイナリスト、香港国際ポスタートリエンナーレ2007 ファイナリスト、ニューヨークアートディレクターズクラブ2007(ADC賞)、日本グラフィックデザイナー協会2007新人賞ノミネート、グッドデザイン賞等、多数

主な仕事の領域:グラフィック全般 / 広告 /CI / ブックデザイン / パッケージデザイン / 教育