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公開最終審査会レポート

2016.4.1.金

桜が咲き誇り、お花見日和となった4月1日(金)。今年最初のグラフィック「1_WALL」公開最終審査会が行われました。「1_WALL」の審査会は、一次審査、二次審査を通過した6名のファイナリストが一年後の個展開催の権利をかけて、思い思いにプレゼンテーションを行い、審査員がその場でグランプリを決める、ユニークなもの。これまでに数多くのアーティストを世に送り出し、14回目を迎えました。はたして今回は、どんな作家たちに出会えるのでしょうか。第14回グラフィック「1_WALL」公開最終審査会の様子をお伝えします。

FINALISTS
山川結女さん 関川航平さん 佐貫絢郁さん 楢崎萌々恵さん 吉田芙希子さん millitsukaさん ※プレゼンテーション順

JUDGES
大原大次郎さん(グラフィックデザイナー)/白根ゆたんぽさん(イラストレーター)/大日本タイポ組合 秀親さん 塚田哲也さん/長崎訓子さん(イラストレーター)/室賀清徳さん(『アイデア』編集長) ※五十音順

進行
菅沼比呂志(ガーディアン・ガーデン プランニングディレクター)

4月1日(金)の夕方、6名のファイナリストがガーディアン・ガーデンに集まりました。別室で審査会のガイダンスを受けている間に、ギャラリーでは審査員による作品チェックが行われ、ピンと張りつめた空気が漂います。そして、18時過ぎにいよいよ第14回グラフィック「1_WALL」公開最終審査会がスタートしました。
プレゼンテーション&質疑応答

山川結女「NOWHERE and SOMEWHERE」

寂しいときに、私のそばにいてくれる架空の動物の姿をした“おともだち”を描きました。彼らはどこにもいないけれど、同時にどこにでもいる存在。他の人には見えないので、いつもこそこそ話しながらいっしょにいます。イラストの中心にいる女の子は私自身でもあるし、女性の鑑賞者でもあります。個展では、たくさんの“おともだち”の絵や、ぬいぐるみを展示したい。

Q.白根:“おともだち”を描いた線が細くて一見みえにくく、ここにもいたんだと、後から発見する“おともだち”もいる。それは意図的なものなの?
A.山川:はい。見れば見るほど、“おともだち”の数が増えていくようにしたかったので。
Q.長崎:女性中心、男子禁制という感じがして、鑑賞者が限定されてしまう印象を受けるが、それでもいいのかな?
A.山川:私も自覚しているので、個展では女の子のイラストは描かずに“おともだち”だけを登場させ、男性、女性は関係なく鑑賞者全員にこの絵の主人公として楽しんでもらいたいです。
Q.塚田:“おともだち”は、想像で描いているの? それとも、具体的なモチーフが何かあるの?
A.山川:想像で描いたり、経験をもとに描いたものもあります。たとえば失恋したときに、そこから着想を得て描いた絵も。

関川航平「Figure」

実際にはないモチーフをあたかも実在しているかのように、頭の中で具体的に想像しながら描きました。描くことで絵の中にそのものを存在させて、実際にあるのかもしれないと鑑賞者に思わせる。それがうまくいくと、リアリティーだけが紙の上に残ります。個展では、今回のサイズにこだわらず、大きなサイズのイラストにも挑戦し、自分がそれをどう扱っていけるのかを試してみたい。

Q.室賀:大きなサイズのイラストを描く場合、何が今とは変わると思う?
A.関川:そのサイズに合わせた、大きな鉛筆で描いているかのように見せたいです。
Q.塚田:二次審査を受けて新たに描いた作品は、それまでの作品と比べてどんな違いがあった? 新たに挑戦した部分は?
A.関川:前回のモチーフはおもちゃでしたが、今回は土偶や能面など違うジャンルのモチーフも加えました。また、前回よりも透明感のあるイラストにも挑戦しました。
Q.白根:今後は、どのような作品をつくっていくの?
A.関川:今は、これが自分の一番やりたいテーマ。しばらくは、このシリーズで作品づくりを続けていきたい。

佐貫絢郁「脱臼と卓球」

たとえば、粉々に砕けてしまった陶器。風に吹かれて、何の柄なのかわからなくなったスカーフ。それらのモチーフを描くための線を減らしていくことで、モチーフの意味がわかりづらくなっていくことに興味があります。鑑賞者とのコミュニケーションがないという意見を二次審査で審査員の方々からいただいたので、個展ではそのフィードバックとなるような展示を行い、鑑賞者との距離を近づけていきたい。

Q.大原:今回、イラストではなく、描線の形に切り抜いた紙を貼っているが、これはなぜ?
A.佐貫:ギャラリーのライトが当たってできた影により、線が増えているように見えて線が面のように見えるのがおもしろいと思ったことと、日にちが経つにつれて紙が剥がれて、壁からなくなっていくことを期待していました。
Q.白根:壁に貼られた4つの木の板は何を表しているの?
A.佐貫:これも、切った紙と同じように線を表しています。紙の線の中に木の板をいっしょに混ぜこんで展示することで、ひとつの壁の中で個体差を出しました。
Q.長崎:プレゼンテーションを聞かないと、佐貫さんの意図やコンセプトが伝わってこない作品。自分では、タイトルやキャプションで作品を説明したい? それとも、作品単体で見てもらいたい?
A.佐貫:理想としては、この作品だけで見てほしい。その場合、意味が伝わりづらくなってしまうこともやむを得ないと思っています。

楢崎萌々恵「ディア、大文字の誰か」

日々の中で出会い、感じたものを自分というフィルターを通して描いています。イラストは、今日でなければ見えなかった光景や偶然のシチュエーションから生まれる私だけの世界を、記憶の一部になってしまう前に描き残したもの。今回の作品は、ニューヨーク、ベルギー、日本を巡って描き続けたスケッチブックが原点になっています。一年後の個展では、アニメーションや立体など、さまざまなことにチャレンジしたい。

Q.室賀:今回、白黒の線画の上にマーカーで色を重ねるという手法をとったのは、なぜ?
A.楢崎:外国を旅する中で、手軽に購入でき、安価で、持ち運びができるこのマーカーが一番だと思ったから。色数にも限りがあるので、今、手元にある色だけで塗るという制限さえも心地よく感じました。
Q.大原:展示作品の中で、線がない絵があったり、白黒の絵があったりとスタイルが定着していない印象を受けるが?
A.楢崎:自分でも気づかないうちに画風が変わっていくことがあり、今回の作品の中でもいくつかのスタイルの絵があります。
Q.秀親:いろんなことにチャレンジするのはすばらしいが、展示するからには伝えたいことやスタイルを何かひとつに絞らないと、鑑賞者は困惑するのでは?
A.楢崎:私は飽きっぽいというか、気が多い性格なので、その言葉は心にしみます。でもしばらくは、今のスタイルの絵を突きつめていこうという気持ちはあります。

吉田芙希子「ミスター・スノードロップ」

子どもの頃に夢中になった、アニメや少女漫画に出てくるヒーローや美少年。彼らはまるで、私にとって白馬の王子様です。でも、いつまで待ってもそんな美少年は迎えにきてくれないので、自分でつくることにしました。今回は粘土で美少年のレリーフをつくりましたが、個展では陶器や磁器で制作したい。そして、ブランドとのコラボレーション作品の展示などして、銀座という土地でする意義を感じられる展示にしたいです。

Q.長崎:作品の飾る位置が低く、壁の上の方が空いてしまっている印象。これは意図したもの?
A.吉田:私から見て、一番イケメンに見える位置に飾りました。もちろん、展示するにあたって空間も意識しましたが、この位置で問題ないと思ったので。
Q.秀親:ポートフォリオの作品では色のついた美少年の作品もあるが、どうして今回は色をつけなかったの?
A.吉田:たとえば髪の色を金色にすると、この人はイギリス系なのかなといった思い込みを、鑑賞者が持ってしまうかもしれない。作品を見てくれる人には、できるだけそういった先入観を持たずクリアな気持ちで見てほしいので。
Q.白根:実在する人物で、誰かモデルにしたい人はいるの?
A.吉田:特にはいませんが、たとえばアイドルのCDジャケットなどをつくってほしいというお話があれば、私目線でデフォルメしてデザインするということはやってみたいです。

millitsuka「理想の環境」

私は、散歩が好きでよく街中を歩きます。ビルを見上げながら、駅構内を見ながら、その向こうにある生活を想像します。特に、ビルを見上げたときに窓から見える、天井の角や部屋の隅など、建物のエッジを見るのが好きで、そこで営まれているであろう人々の生活をイラストとして描きました。個展では、壁はもちろん床にも作品を置いて、さまざまな角度や位置から見せていきたい。

Q.大原:ビルを見上げるのが好きだということだが、今回のイラストはほぼ全部上から見下ろすような、監視カメラから見たような位置のイラストが多い。それは、なぜ?
A.millitsuka:最初は見上げる角度で描くことがむずかしいということもありましたが、頭の中で一度整理したときに、この角度のイラストが私にはしっくりきたので。
Q.白根:一枚のイラストの中に必ずひとり人物がいるが、それはなにか意味があるの? また、女性が多いのはなぜ?
A.millitsuka:描き込みたいモチーフのかたちや大きさ、用途などをわかりやすく表現するための要素として人物を描きました。女性が多いのは、髪の長さで色々なバリエーションで表現できることと、女性特有のやわらかなからだの曲線を描くことで、絵に動きが出るので。
Q.長崎:エッジが好きなのであれば、イラスト自体を四角だけではなく、三角形にしたものがあってもよかったのでは?
A.millitsuka:今回、自分の中でイラストは四角形にするというルールを設けました。でも、個展では立体の箱を三角形にしたりすることも考えています。

ファイナリストそれぞれの個性が発揮されたプレゼンテーションと、白熱した質疑応答の時間が終わりました。その後、休憩をはさみいよいよ審査員によるグランプリ決定のための審議へ。菅沼の進行で、まずは今回のグラフィック「1_WALL」全体に対する感想や意見を、審査員一人ひとりに聞いていきます。

第14回グラフィック「1_WALL」について

大原「空間の捉え方や社会との向き合い方が、それぞれアウトプットの違いとして出ている印象を受けた。今後の制作に関わってくる大事な部分だと思うので、そこを基準に評価したい。」

室賀「二次審査で提示していた展示プランを、忠実に再現できている人が多かった。ただ、その分あまり驚きが感じられなくて、作品の持つ力が弱い印象だ。」

白根「ギャラリーに入った瞬間、いい意味で驚かされた。それぞれのやり方でのアプローチができていて、予想の上をいっている作品ばかりだった。グランプリを選ぶのに迷ってしまう。」

秀親「見た目のおもしろさ、作品の完成度をどこまで高められているか、作家がなにを考えているか、その三つが大事だと考えている。今回は、誰がグランプリでもおかしくはない。でも、プレゼンテーションする作家自体が、わりと普通な人ばかりで、もう少しインパクトがあるおかしな人がいてもよかったかな。」

塚田「今回初めて審査員を務めたが、予想以上に展示がよかった。ただ、展示を最初に見たときとプレゼンテーションを聞いてからでは、それぞれの作品の印象がだいぶ変わって、ここからどうグランプリを選んでいくか非常に悩ましい。」

長崎「今までの審査会では、常連さんがいたりして、こちら側で作品の変化を汲まないといけなかったが、今回はそういうこともなく、全員20代ということもありフレッシュさを感じた。全員まじめに作品づくりをしていて、いいプレゼンテーションだったと思う。グランプリを選ぶのが大変だ。」

続いて、ファイナリスト一人ひとりの作品について、感想を聞いていきます。

山川結女「NOWHERE and SOMEWHERE」について

秀親「プレゼンテーションでは、彼女が一番キャラクター性を持っていておもしろかった。だが、今回の作品に関しては、ミクロの視点で見ると、まだいけるのではないかと感じた。それは、伸びしろと言えるのかもしれない。」
白根「ポートフォリオのときには、大丈夫かなとちょっと思ったが、今回の展示を見てびっくりさせられた。原画の完成度が高いと思った。」
室賀「60年代、70年代以降の日本のイラストレーションの流れや、80年代後半あたりからの漫画を取り込みながらうまくアウトプットしている。だが、“女の子クリエイターカルチャー”といったようなくくりで終わってしまう可能性も。そこでどう勝負していくかが楽しみだ。」
塚田「サイズの大きい絵に挑んでいるが、描かれた線は細く、その書きぶりも含めて近くで見ることで魅力がある。そういう意味で、これは遠くから見る作品ではなくて、近寄って見るべき作品なのかな。手描きの線をしっかり見せるためにも、背景として貼られた拡大出力したものはいらなかったように思う。」
大原「見えないものが見えるということが、いいなと思った。見えていないものを見える化できることも、彼女のひとつの能力だ。」
長崎「見る人を選んでしまうのはもったいない。作品自体は説得力があったので、自分の世界観の中に閉じこもらなくてもいいのかな。」

関川航平「Figure」について

白根「目に見えないものを、あたかも実在するかのように描くという考え方がおもしろい。絵も達者すぎて怖いくらいだし、額装方法に関しても満点だ。ぜひ個展を見てみたい。」
塚田「完成度が高すぎて、正直このコンペティションの“新しい作家を発掘する”という趣旨には合わないのではと思っていたのだが、プレゼンテーションを聞いたところ、実はさらに伸びしろがあると感じた。」
長崎「“フィギュア”というモチーフのせいか、なんとなく古いような、老けているような印象を受けた。もっと驚きがほしい。」
秀親「完成度が高いので、もう既に本の装丁などで使われていそうだ。このコンペティションの選考基準の中にある“完成していない途中の人でもかまわない”というレベルではない。」
大原「イラストのまわりに白い空間があるが、隙がなくて入り込めない印象。デザイナーとしてどうあの作品に向き合えばいいのかを考えてしまう。」
室賀「出来すぎているといった印象だ。ただ、描かれているモチーフにも、描き方の手法にも一本筋が通ったものがあってもいいのかもしれない。」
 
佐貫絢郁「脱臼と卓球」について

大原「線と線をつなげないオープンパスのような表現が、今っぽい雰囲気。ただ、それはもう終わりかけている流れだと思うので、彼女の発想はどこから来ているのかが気になる。」
白根「線と線をつなげないことで風通しがよく、鑑賞者が作品を受け入れやすくなるという傾向はあると思うが、彼女の作品はそれが行き過ぎていて意味がわからなくなってしまっている。」
塚田「審査のたびに状況が変化する先の見えないわからなさを面白く思っていたが、プレゼンテーションを聞くと計画通りだという。そのギャップを埋めないと、何を伝えたいのかが見えなくなってきてしまう。」
長崎「マスキングテープで雑に貼っているところも含めて、板の物質感がいいし、展示のセンスはある。ただ、もう少し自分の考えを整理しないといけないのかな。」
室賀「実績を積んだアーティストが同じ作品をつくったら、なるほどと納得させられてしまうような作品だ。」

楢崎萌々恵「ディア、大文字の誰か」について

白根「マーカーでここまで大きな絵が描けることが、驚きだ。原画が見れたのもうれしい。」
長崎「私が感心したのは、今回のために描いた扉の上の大きなイラストが、普段描いている小さな絵と同じようにきちんと自分の線になっていたこと。そういうことができるセンスがある人だ。」
塚田「扉の上の大きなイラストがよく描けていた分だけに、その隣に塗り絵用として置かれた同じモチーフのイラストが手描きではなくIllustratorで作られていたのは残念。」
秀親「壁の前の台にスケッチブックをカラーコピーしたものが置いてあったが、そのまま印刷してしまったのが残念。原画の色がこの作品の見どころなので、どうせなら白黒で印刷してマーカーで一つひとつ色を塗ってほしかった。」
室賀「世の中を記号化させて、平坦な感じに落とし込んだ絵なのだろうかと考えながら見ていた。そういう意味では、一番こだわっている部分をもう少しはっきりと出してもいいのかな。」
 
吉田芙希子「ミスター・スノードロップ」について

白根「ポートフォリオで見たときからすばらしいと思っていたが、現物はさらによかった。世の中に受け入れられる作品だと思う。ただし展示方法には疑問が残る。1点のみの展示というのもあり他の作品に対して弱い印象をうける。ポートフォリオには花びらを散らせた作品なども他にあったので、あんな風に壁を全面的に使ってよかったと思う。」
室賀「キッチュな作品だ。そこを本人は自覚しているのかどうかが気になる。イケメンというくくりで作品をつくっていると小さな世界で終わってしまう可能性も。髪が長いと表現の幅も広がるはずなので、女性をモデルにしたレリーフをつくってもいいのかも。」
塚田「今回の展示作品自体はすごくいい。ただ、個展プランにこの作品は含まれないということで、違った方向性への展開を評価するのはなかなか難しい。」
大原「半立体なのに正面から見ることだけを考えてつくられていて、まさに漫画のような、平面のよさがうまく出ている。」
秀親「今回の作品がすごくいいので、個展のプランはあまりいいとは思えない。今回と同じような作品が何個も展示する感じがいいのでは。」
長崎「みなさんの意見は、歌手に昔のヒット曲を歌い続けろと言っているようなもので、彼女にとってはつらいことなのかもしれない。でも、まずはヒットする作品をつくらなければいけないので、今はこのシリーズを続けていくべきだ。」

millitsuka「理想の環境」について

白根「二次審査のときはそれほど強い印象がを持っていなかったが、今回の展示はとても良いと思った。箱の影が下の絵にかぶるほどイラストを展示する間隔が狭いが、それがまたよかった。」
長崎「二次審査から推していたものの、展示はどうなるのだろうと心配な面もあった。でも実際に展示を見ると、すごくよくできていたので安心した。」
秀親「ビルのエッジが好きというところが、イラストを貼っている箱に表現されていておもしろいなと思ったが、イラストと箱の関係性がもう少しあるとさらによくなりそうだ。」
塚田「コンピュータ上で描かれた彼女のイラストは、ネット世代らしさを受ける。イラストを貼った箱も、コンピュータ上でつくられた幾何形体という印象があり、イラストと箱との親和性が非常に高く効果的に見える。」
大原「イラストを貼った箱の設計図を、何で描いているのかが気になる。そこが今後の活動の分岐点にもなっていくのではないか。」
室賀「展示の内容も手法もすごくよかった。自分の世界や考えをしっかりと持っている人なので、審査員から言われたことを活かして、展示ではさらにいいものを見せてくれそうだ。」
審査員の方からさまざまな意見が飛び出し、会場はますますヒートアップ。そして、いよいよ投票へ。まずは、審査員の方にファイナリストの中からそれぞれ二人を選んでもらいます。大日本タイポ組合のおふたりには、三人を選んでいただきました。

投票結果
大原:関川・楢崎
室賀:楢崎・millitsuka
白根:楢崎・millitsuka
長崎:関川・millitsuka
大日本:関川・佐貫・吉田

集計すると、関川 3票/楢崎 3票/millitsuka 3票/佐貫 1票/吉田 1票という結果になりました。ここで、トップを争う三人での投票を前に、票を入れた審査員にひと言ずつ三人の魅力について発表してもらいます。

関川さんについて
大原「自分が踏み込むことのできない領域だから。」
大日本「発想の仕方も、完成度も、作品のおもしろみもあってよかった。」
長崎「今日審査員からもらった意見を活かして、個展はいろいろとおもしろいことをやってくれそう。」

楢崎さんについて
室賀「いろんなことに挑戦しているので、これからに期待したい。」
白根「絵がすごくいい。もっと見てみたい。」
大原「空間の捉え方は、そのまま社会の捉え方でもあると思う。そこに将来性を感じる。」

millitsukaさんについて
室賀「展示方法も内容もよかった。より大きなスケールで、彼女の作品を見てみたい。」
長崎「絵がすごくいい。今回の展示の手法をとらずに、絵だけを展示していたとしても、彼女を選んでいたと思う。」
白根「絵もいいし、今回の展示方法もよかった。」
そして、トップを争う三人の中から審査員に一人ずつを選んでもらい、ひとりずつ名前を読み上げていきます。millitsukaさん、関川さん、millitsukaさん、関川さん……と4人目まで読み上げたところで会場からはどよめきが起こります。そして、最後に名前を読み上げられたのは……関川さん!

集計すると、関川 3票/millitsuka 2票という結果に。

菅沼が「異論はないですか?」と聞くと、審査員のみなさんはゆっくりと頷き、ついに関川さんがグランプリに決定! 会場からは大きな拍手と歓声が沸き起こります。

そして、最後に審査員からひと言ずつ、関川さんへ応援メッセージを送りました。

大原「大きなサイズの絵が楽しみ。期待したい。」
室賀「絵本作家のような、すれていない貴重な存在。その感覚を大事にしていってほしい。」
白根「大きなサイズの絵も鉛筆で描くと言っていたけど、ちょっと心配。でも楽しみ。」
秀親「こう来たか! と思わせてくれるような、展示にしてほしい。期待している。」
塚田「あれこれ説明しなくとも、スコーンと気持ちのいい展示にして。」
長崎「最後まで接戦だったので、ほんとうに疲れた。展示では、私たちをびっくりさせてほしい。」

審査員の代表として長崎さんから関川さんへ記念のトロフィーが手渡され、会場はふたたび拍手に包まれます。関川さんは、「審査員の方からいろいろな意見をもらえて、その分考える時間も長くて、体力がついた気がします。ありがとうございました」とよろこびの声を聞かせてくれました。

こうして、おおいに盛り上がり、ヒートアップした第14回グラフィック「1_WALL」公開最終審査会が終了。ファイナリストのみなさん、審査員のみなさん、最後まで審査会の様子を見守ってくださったご来場いただいたみなさん、おつかれさまでした。関川さん、ほんとうにおめでとうございます!

関川さんの個展は、約一年後にガーディアン・ガーデンで開催される予定です。みなさん、どうぞお楽しみに。

出品者インタビュー

山川結女さん
「1_WALL」のファイナリストとしてここまで残るのは大変だったけど、他の出品者の方と話すことができたり、審査員の方の生の声を聞けておもしろかったです。大学でやってきたことを全部出し切れたので、大満足。これからは、夢に向けてがんばります。

関川航平さん グランプリ決定!
審査員の方からたくさんの意見をいただけて、考えさせられることの多かった「1_WALL」。これから作品をつくり続けていく上での、糧になったような気がします。今日見えてきた課題もあるので、一年後の個展に向けてまたがんばっていきたい。みなさん、ぜひ展示を見にきてください!

佐貫絢郁さん
「1_WALL」に参加したのは、はじめて。まさかファイナリストになれるとは思っていなかったので、二次審査に通ったときはほんとうにびっくりしました。今日は、審査員の方に直接意見を言ってもらえて、自分の作品を客観的に見つめ直すことができました。これからもどんどん作品づくりをしていきたいです。

楢崎萌々恵さん
留学を終えて、なにかやらなきゃと応募したのが、今回の「1_WALL」。審査員の方が真剣に私の作品と向き合って、丁寧に意見や感想を言ってくれるのがうれしかった。次回もまたチャレンジしたいです。

吉田芙希子さん
今回「1_WALL」に参加して、審査員の方からたくさんの意見をもらえてうれしかった。でも、グループ展のむずかしさや、プレゼンテーションのむずかしさを痛感しましたね。すごく勉強になった審査会でした。

millitsukaさん
ここ最近、グランプリをめざしてやってきたので、審査会を終えてひとつの区切りができてしまったことが、なんだか寂しいです。今は、自分の作品と向き合うことはむずかしい状態。でも、やっぱり作品づくりはやめたくないのでこれからもがんばっていきます。