1. TOP
  2. 展覧会・イベント
  3. 公開最終審査会レポート

公開最終審査会レポート

2017.3.23 木

3月23日(木)、第16回写真「1_WALL」公開最終審査会をガーディアン・ガーデンで行いました。
「1_WALL」は一次審査、二次審査を通過した6名のファイナリストがグループ展を行い、1年後の個展開催の権利をかけて公開最終審査会の場でプレゼンテーションし、その場でグランプリが決まるコンペティションです。今回からグランプリ受賞者には、個展制作費として10万円を授与します。
前身の「ひとつぼ展」の時代から、数多くの若手アーティストを輩出してきた「1_WALL」。果たして今回は、どんな新しい才能に出会えるのでしょうか。第16回写真「1_WALL」公開最終審査会の様子をお伝えしていきます。

FINALISTS

白井晴幸、阿部直樹、姚遠、藤澤洸平、千賀健史、富澤大輔
※プレゼンテーション順

JUDGES

飯沢耕太郎(写真評論家)
菊地敦己(アートディレクター)
鈴木理策(写真家)
高橋朗(PGIギャラリーディレクター)
百々新(写真家)
※五十音順・敬称略

進行

菅沼比呂志(ガーディアン・ガーデン プランニングディレクター)

当日、ファイナリストが続々と集まる中、会場では審査員による作品チェックが行われました。そのうちに、審査会を見届けようと一般見学者も集まり、今回の審査会も大賑わい。そして、ファイナリスト一人ひとりによる作品のプレゼンテーションがスタートし、審査会が始まります。

プレゼンテーション&質疑応答

白井晴幸「Invisible man」

僕のものづくりは10代の頃の映画制作から始まり、20代からは写真を撮り続けて、今に至ります。その過程で自分のつくることに対する欲望とは何かを考えてみると、それは自分の知らない何かに出会うことにあると思いました。今回の作品も、鑑賞者が目に見えるものとは別の側面に出会うことができないかと考え、空想上の地図を作り、そこで暮らす住人「Invisible man」を撮影する作品を制作しました。この物語を通じて、現実と空想の境界線を揺さぶることができたらと思っています。個展では、空想上の人物として、住人を研究する博士が登場するとか、別の物語の軸を加えた作品を展示したい。

Q.鈴木:「物語」と言っていたが、作品の人物はいつも同じサイズ、同じ構図で、まるでカタログや図鑑のよう。空想上の人物と突然遭遇したような写真には見えないが?
A.白井:これは、僕自身と被写体との「物語」。僕がハンティングした設定なので、こうなります。

Q.高橋:研究者や博士の目線で「Invisible man」を撮影しているの? 白井さんの役柄は?
A.白井:僕自身の目線ですが、博士と出会ったという目線で撮影しています。僕は、唯一そこへ行くことができるカメラマンという役柄です。

Q.菊地:「怪獣カード」のようなものを収集している作品に見える。白井さんの考えているコンセプトと撮影方法や展示方法にずれを感じるが、それについてはどう思う?
A.白井:最終的な到達点は、自分の中でまだ不明確なところもあります。今回の作品は物語の中の1つの点なので、うまくいっていないのかも。それが、審査員の方たちがおっしゃるずれなのかなと思います。

阿部直樹「Endpoint #3」

日常生活の中で目には見えない壁のような存在を感じた瞬間に、写真を撮って作品にしました。かつては、光や影が作る奥行きやその先の広がりを撮影していましたが、だんだんとその感覚が幻想であるかのように感じられて、見えない壁を撮ることが制作の目的になりました。壁のようなものに対してアプローチをするうちに、今度は手応えを感じると同時に、倦怠感を感じるように。そこで、何か他の方法でアプローチできないかと思い、作品選びに数学的な要素を取り入れてみました。具体的な方法は、写真を遠近法で捉えないことと、乱数を用いて偶然性を取り入れてみること。個展では、乱数だけではなく関数などを用いて新たな作品作りの可能性を探っていきたい。

Q.飯沢:倦怠感を感じていたから乱数を作品選びに用いたと言っていたが、具体的にはどういうことをするの? また、なぜそんな選び方をするの?
A.阿部:自分で大枠を考えた後に写真をパソコン上のフォルダに入れて、自作のプログラムで展示する作品をランダムに選びました。作品を自分で選ぶのではなく、自分の意思とは関係なく選ぶということをしてみたいと思いました。

Q.百々:写真を撮る時には、数学は使わないの? 写真のサイズ選びや配置には?
A.阿部:撮影する時には、数学は使いません。写真のサイズや配置は数学的なものから発想し、決めました。

Q.高橋:数学という無機質なものにセレクトを任せるのではなく、自分以外の人間に選んでもらうということは考えなかったの?
A.阿部:人はランダムに選んでと言われても、どうしても感情が入ってしまうもの。そういうことを排除して、ドライなものにセレクトを任せたかったので、人間は選択肢にありません。

姚遠「SAKAIME」

子どもの頃から孤独な存在に溺れ、現実の背後にあるものがどのように見えるのか疑問を抱いていました。成長するうちに、自分の中にある矛盾が存在することに気づきます。それは、無意味に意味を見出そうとすることと、その意味から逃げ出そうとすること。日常の小さな幸せと漫然とした不満。徐々に物事は全て、僕に対して逆説的だと思うようになりました。幸福、あるいは絶望。勝利、または敗北。揺るぎない現実、まばゆい夢。それらの境目は曖昧。生きることは、曖昧で不条理、それでも諦めきれない。流動性があり、美しいものだから、写真を撮り続けていきます。個展では、バリエーションを増やし、地理的、精神的な境目の関係性を探求して、会場のスペースに余白をとって、リズム感があり、感動をもたらす展示にしたい。

Q.菅沼:桑沢デザイン研究所の学生ということだが、専攻は? 将来は、どうなっていきたい?
A.姚:学校ではグラフィックデザインを専攻していて、写真は高校生の時に母にフィルムカメラをもらったことがきっかけで撮り始めました。将来は、いろんなことをやりたい。写真もデザインも、どちらもやっていきたいです。

Q.百々:心理的な境目は表現できていると思うが、個展に向けて、地理的な境目を具体的にどのように探っていこうと思っているの?
A.姚:展示作品の真ん中あたりの風景の写真が、地理的な境目を表現していると思っているので、こういった写真をもっと出していきたい。人はそこにいないけれど、遥か遠くに生を感じるような。そんな関係性のある写真を個展に向けて探っていきたいと思っています。

Q.高橋:フィルムカメラの質感がいいし、特に人が写っている写真は上手だと思う。姚さんの美学は、どこからやって来るの?
A.姚:僕は、日常の中でちょっと非日常を感じる瞬間に惹かれる。今回の作品も、その瞬間を撮影したものです。

藤澤洸平「CLIMAX OITA USUKI」

この作品は、お正月に地元の大分県に約5年ぶりに帰った時に撮ったもの。僕は普段、コンセプチュアルな絵画を描いています。写真の場合は、伝えたいことを決めて撮影することが多いのですが、今回は地元を歩いていて出会った生きものや、見て気持ちいいと感じた光に反応しながら、無意識で撮影したものばかりです。その後に東京へ帰ってこの写真を見たら、素直にいいなと感じました。作品は日常を写すものではなく、意味を持たせることで初めて成り立つと思っていたのが覆されたようでもあり、まだ答えは出ていません。個展では、今回の作品の答えとなる展示に仕上げたいと思っています。

Q.鈴木:アクリルのフレームを作って展示をしたのは、なぜ?
A.藤澤:僕はまだ、胸を張って写真作品を出せない。透明なアクリルのフレームという弱いバリアを使うことで、その恥ずかしさのようなものを表現しています。

Q.飯沢:ポートフォリオには人が写っていた写真もあったのに、今回の展示作品には人の写真がない。展示しなかったのは、なぜ?
A.藤澤:人の写真を入れると、どうしても情緒的に見られてしまうと思ったから。単純に、人を撮るのが苦手だという理由もあります。

Q.高橋:タイトルに「CLIMAX」とあるが、選んでいる写真はアンチクライマックスというような印象を受けるが?
A.藤澤:写真は、日常の記録ではないことを言いたかったので。

千賀健史「Bird, Night, and then」

将来に希望を抱いて勉強をするインドの学生たちに出会って、何かできないかと、このプロジェクトを始めました。今のインドは、アウトカーストであっても、医者やエンジニアを目指すことができる環境。それゆえに親からのプレッシャーに耐えきれず1時間に20人以上の若者が自殺をしています。本作品の主役であるインド人の青年は、医者を目指していましたがそれは叶わず、だけど、他の道を選ぶことで自殺を考えなくて済みました。彼のように、自殺ではなく、他の道もあることを示したくてこの作品を作りました。鳥は学生のメタファーであり、左上の写真でフレームを外れて飛び立っているのは、周囲の重圧から逃れて自由になってほしい、という僕の思いを表現しました。本として発表することを考えていたプロジェクトだったので、二次元的な表現をしていますが、個展では空間全部を使って三次元的な構成で物語を作っていきたい。

Q.菅沼:置いてある携帯電話には、どんな意味があるの?
A.千賀:この携帯電話は、今作品のモデルであるインド人の青年のもの。彼が本当に実在する人物で、彼の存在を近くに感じてもらえたら、という意図で作品の一部として置きました。

Q.菊地:テーマ性が強い作品だと思うが、何か社会に訴えたいことがあるの?
A.千賀:この作品の場合は、何か1つ挫折することがあったとしてもそれで終わりではないことを伝えたい。

Q.飯沢:千賀さんの作品は、これまでのフォトジャーナリズムの方法論とは違う、新しいドキュメンタリーのかたちの模索だと思うが、これからどうやっていく?
A.千賀:ノンフィクション作品だけがその人の物語を伝える手段ではないと思うので、この作品のように、フィクションを混ぜてつくることをしたい。この作品はノンフィクションであり、フィクションでもあると思っています。

富澤大輔「アンダンテ」

未来は過去からしか見出せず、過去は記録からしか見出せない。私たちの生活が未来にしか存在しないのなら、自らの眼差しを残し、他人の記録を読み解く営みこそが日常と呼べるのではないか。カメラを覗く視線は私の主観ですが、カメラは等価に写し、写真を生み出す。それは虚偽の真実かもしれないけれど、それこそが記録であり、私の生活を決定的な過去のものとして未来につなげてくれるのではないかという考えのもと、この作品を作りました。今回の展示作品は、つい最近撮ったものばかり。個展では、過去になっていくことと、そうではないことを表現したい。また、プロジェクターを使い物理的な時間が絡むことをしたいと思っています。

Q.百々:カラー写真とモノクロ写真があるのは、なぜ? また、大きさが揃ってはいないのに、妙な統一感を感じる。写真の大きさの決め方に基準はあるの?
A.富澤:カラーかモノクロかは、だいたい2つのカメラを持ち歩いていて、その時の気分で決めるので、ルールは特にありません。大きさに関しては、せっかくの展示の機会なので、ポートフォリオでは見られないサイズで見てもらいたかった。

Q.菊地:「日常」がテーマの作品だが、そこにタイトルをつけることについては、どう思う?
A.富澤:僕の写真は「日常」なので、タイトルをつけないと永遠に続くもの。なので、タイトルは一区切りつけるものとして捉えています。

Q.鈴木:「日常」を撮り続ける写真家です、と今後も言い続けて、鑑賞者を説得できる自信はある?
A.富澤:そこまでは考えていません。自分でも「日常」というテーマが広すぎて収集がつかなくなる時もありますが、今やっていることをそのまま出しているという感じです。

ファイナリストそれぞれの個性が光るプレゼンテーションと、質疑応答の時間が終了しました。今回も審査員から鋭い質問が多く飛び出し、ファイナリストはひとつ一つの質問に対して一生懸命に答えていました。
そして、この後はいよいよグランプリ決定のための審議へ。まずは各審査員に、ファイナリストの作品について感想をいただきました。

白井晴幸「Invisible man」について

飯沢「発想を形にするやり方に彼なりの確信があるのだと思う。この形が彼にとって一番気持ち良い見せ方だと思うので、これはこれでいいと思う。ただし、個展になった時、数を増やすだけではうまくいかないかもしれない」

百々「最初に見た時にインパクトやおもしろさは感じるが、物語となった時に、この先どうストーリーを紡ぐのか先が見えない。もしかしたら、写真ではなく、VRとか別の方法があるのかも」

高橋「おもしろいけど、ファニーとインタレストは違う。興味深いところまで持っていけるかどうかが疑問だ」

菊地「彼の趣味性は一貫している。この作品もオタクっぽい作品なので、変にアートマーケットに媚を売ったり、文脈を考えたりしなくていい。このまま続けて、どうなるのか興味がある」

鈴木「ポートフォリオや展示作品の数を見ると労力を感じるし、ある種の過剰さがあっておもしろい。でも、今のカタログ的な見せ方が合っていない。今回のシリーズはこれで一旦やめて、違うことにチャレンジしてもいいかもしれない」

阿部直樹「Endpoint #3」について

百々「数学の話に集中してしまったが、彼の本来のテーマは見えない壁。目線や詰め方が上手なので、数学的な考えはヒントにとどめて、自分だけの価値観を見出してほしい」

高橋「写真自体は、ほんとうにすばらしい。しかし、自信がなくて数学的な考えを持ち込まざるを得なかったのではと思う。個展をやるのなら、その辺りを考え直してほしい」

飯沢「写真のクオリティーは高い。彼の言う壁や倦怠感、それらを打破するのではなく、写真を通じて向き合うべきなのかもしれない。しかし、彼が迷うのもわかるので評価するのが難しい作品だ」

鈴木「魅力のある作品だ。でも、彼自身は自信がないように感じる。自分の写真の一番の味方は自分なので、もっと自信を持ってほしい。自身の写真に対する一種の盲目的な部分も必要なのでは」

菊地「目に見えない壁、それが何なのかが掴みづらい。彼はねちねちしているようだけど、人はねちねちするからこそ創作するもの。切実につくっている姿勢に共感する。今後も続けていけば、独自のものが醸成されていくのでは」

姚遠「SAKAIME」について

鈴木「写真作品は、選ぶ時よりも撮る時に個性が出るもの。そういう意味でいうと、写真自体には彼の人柄や思いが見て取れるが、展示でレイアウトするときに、写真を素材として使う潔さがあり、ポートフォリオで見た時より作品が遠のいてしまった気がする。それは一概に悪いことではないので、どう判断しようか迷う」

飯沢「境目を求めて、撮り続けていってもらいたい。まだ経験が足りないだけでセンスはいいし、期待値も高い。最近のファッション写真を撮っている人たちと似た雰囲気があるので、それとは異なる自分のスタイルを作ってほしい」

菊地「ファッション写真をやったらいいのでは? 向いていると思う。彼の作品は、未熟さも含めて素直に写真に感情が出る。その青臭さもいい。でも、それだけでは続けていけないので、深さみたいなものを獲得しないといけないのかもしれない」

百々「彼の持っている繊細さや愛を、写真にぶつけて捉える力がある。彼の独自性をどのように追求できるかが勝負だと思う。境目をしっかりと咀嚼して、発表する作品を見てみたい」

高橋「すごくいいと思うし、言葉もセンスがある。でも、写真経験の少なさが表れている。文学的にも、写真的にも、どう経験を積んでいくのかが今後のキーになる。いろんなものを吸収していってほしい」

藤澤洸平「CLIMAX OITA USUKI」について

菊地「これまでの美術の作品体系についてきちんと勉強していて、熱心だ。でも、『作品はこういうものだ』という思い込みが強く、純粋に写真を撮るのではなく作品を作るために写真を撮っている感じがする」

飯沢「この作品は、彼の体が反応した写真。彼は、彼の体で何かを見つけたんだと思う。確かに頭が先行する傾向があるが、身体感覚には信頼できるものがある」

百々「コンセプトを定める既存の写真を否定しているが、僕から見れば、この作品こそがコンセプチュアルに見える。深め方は、彼次第だ」

高橋「今回、地元で写真を撮ることで何かを見つけたんだと思うが、展示して元に戻ってしまった印象を受ける。作品は、自分では制御できない時もあるもの。自分の中からぽろっと出てしまったものを、きちんと認めてあげてほしい」

鈴木「写真らしい写真だなと。迷いなく撮れている。せっかく実験的なことをやってみたのに、それまでの考え方に戻すのが早い」

千賀健史「Bird, Night, and then」について

飯沢「ポートフォリオは抜群によかったが、展示は圧倒的な経験不足を感じる。構想力や実行力、編集能力はあるので、場を与えれば、ものすごくおもしろい展示に発展することは十分にある」

高橋「会場に来るまでは、グランプリは千賀さんで決まりだと思っていたが、展示はやはり経験不足。最近は日本の若い写真家の中で社会的な問題をテーマにする人が少ない気がしていたので、こういう人が出てきてくれるのは嬉しい」

菊地「考え方が6人の中で一番デザイン的だと思う。設計がきちんとあってその中でぴたっとできている。テーマ的な作品に見えるけど、実を言うとその構造こそが作品の主題に見える。社会的なことを発信しているようには見えないが、ポートフォリオはよかった」

鈴木「ポートフォリオの出来と展示の差が激しい。しかし、これまでのドキュメンタリーとは異なる考え方がおもしろい。展示方法によっては、これまで誰も見たことのない作品に仕上がるのでは」

百々「彼は、生きている中で琴線に触れるものを撮っている。でも、展示作品は一枚一枚が映画の断片のようで、彼がほんとうに伝えたいことを伝えられているのかどうか。ポートフォリオはとてもよかったので、展示でそのよさが出ていないのがもったいない」

富澤大輔「アンダンテ」について

高橋「前回、ファイナリストとして展示した時は写真のセレクトのバラバラ感がよかったが、展示方法は今回の方が圧倒的によかった。一枚一枚の写真を見ても、いいスナップばかり」

百々「どう判断すればいいのか、難しい。テーマやコンセプトのある写真を出す人が多い中、彼のような作品は珍しい」

鈴木「写真を撮る上ではテーマはなくてもいいが、コンペティションという場だとテーマがある作品が多く、彼のような作品は逆に目立ってしまう。だから、他と比べて何か足りないように感じてしまうのでは?」

飯沢「私小説として再構築することが、彼の作品には必要なのかも。ただ、そのための方向性や手応えはまだ彼の中に出てきていない。これから何かが見えてくるはず。今のままでも魅力的だし、写真家としての力がある」

菊地「イメージが空間にあるためには、何かしらの物質性がないといけない。前回よりもサイズを大きくして直張りにしていることで見やすくはなったが、物質として見せるにはまだ他に方法があるのでは? ストーリーを排除するのもありかも。でも、おもしろい作品だ」

こうして、ファイナリスト一人ひとりに対しての講評が終わり、投票へと移ります。まずは、審査員の方々に良いと思った2名を選んで発表していただきました。

投票結果
飯沢:千賀・藤澤
菊地:姚・富澤
鈴木:千賀・富澤
高橋:千賀・阿部
百々:千賀・富澤

集計すると、千賀 4票/富澤 3票/阿部 1票/藤澤 1票/姚 1票という結果に。票が分かれたものの、3票以上集まった千賀さんと富澤さんからグランプリを選ぶことになりました。そこで、この2人に票を入れた審査員の方から、それぞれ一言ずついただきます。

千賀健史「Bird, Night, and then」について

飯沢「構築力があるし、現実をきちんと見ている。なぜインドなのか? という疑問を、きちんと納得させてくれる力もあるし、潜在的な可能性を十分に感じられる作品だ」

鈴木「見たことのないドキュメンタリーのかたちを見ることができそう。彼にはその可能性があるので、期待したい」

高橋「今日指摘されたことをきちんと咀嚼できれば、展示も期待できる。それに、こういう作品が日本から出ることを期待したいので」

百々「新しいドキュメンタリーを見ることができそうな気配のする写真なので、期待したい」

富澤大輔「アンダンテ」について

菊地「個展で飛躍できそうだ。彼がどのように成長するのかを見届けたい」

鈴木「写真っておもしろいものなんだな、ということを確認させてくれるいい写真だ。捉えどころがない作品のように見えるが、写真のある部分を彼はものにできている」

百々「他の人に比べて圧倒的に撮っている量が多いし、前回から確実に進歩しているので期待ができる」

審査員にそれぞれ千賀さん、富澤さんの魅力を改めて話していただいたところで、2人のうち、どちらか1人を選ぶ最終投票へ。
会場に緊張が走る中、スタッフがゆっくりと投票結果を読み上げていきます。千賀さん、富澤さん、富澤さん、千賀さん、そして最後も、千賀さんという結果になりました。最後まで結果の分からない接戦でしたが、千賀さんがグランプリに決定しました!

千賀さんには、菊地さんからトロフィーが授与されます。千賀さんは「展示についていろいろな意見があったので……個展では、必ずおもしろいものにしたいと思います。ほんとうに、ありがとうございました」と、1年後の個展開催に向けての決意と喜びの声を聞かせてくれました。こうして第16回写真「1_WALL」公開最終審査会が閉幕しました。
千賀さん、グランプリおめでとうございます! 個展は、約1年後にガーディアン・ガーデンで開催する予定です。みなさん、どうぞお楽しみに。

出品者インタビュー

白井晴幸さん
これまでに2回応募して、どちらも入選。そして今回が、初めてのファイナリストでした。もっと展示は別のやり方があったなとか、考えれば反省点は出てきますが、今は審査会を終えたことで達成感を感じているし、応募してよかったなと感じています。これからも、変わらず作品を作り続けていきたいです。

姚遠さん
今回は悔しい結果になったけれど、審査員の方からいろいろな指摘をしてもらって気づいたことがたくさんありました。今後も審査員の方からいただいたアドバイスをもとに、写真だけではなくデザインも両方やっていきたい。一度休憩して、次の「1_WALL」に向けてまた頑張りたいと思います。

藤澤洸平さん
審査会を終えて、どっと疲れました。でも、プロの写真家や評論家の方たちからいろいろなことを聞けて、それがひとつひとつ的を射ていたなと感じています。特に印象に残ったのは、菊地さんの言葉。審査員の方はみなさん本気でぶつかってきてくれるので、ありがたいです。ほんとうに、ありがとうございました。

阿部直樹さん
2年前にも「1_WALL」に応募してファイナリストになったのですが、その時よりも視野が広がったし、新たなことにも挑戦できたので悔いはありません。自分の中では、100点中100点の出来だったと思っています。これからも、自分の撮る写真に変化が感じられるうちは、作品づくりを続けていきたいですね。

千賀健史さん グランプリ決定!
もちろんグランプリをとるつもりで応募をしたものの、周りの人たちがすごい人ばかりだったので正直不安でした。今は、グランプリをとれたことがほんとうにうれしいです。審査会を通じて、今後やるべきことが見えたような気がします。個展では、今まで誰も見たことのないような新しい作品を展示しますので、たくさんの人に見に来てもらいたいです。

富澤大輔さん
前回もファイナリストに残ることができたのですが、その時よりもリラックスできて、いいコンディションで臨むことができました。前回は展示のことでダメ出しされてしまったけど、今回はその一歩先の段階の話をしてもらえたので、うれしかったです。これからも、ライフワークとして写真を撮り続けていきたいと思います。