松本美枝子は、自宅そばで起きた茨城県東海村の臨界事故と生活をテーマにした「美しき町」で第15回『ひとつぼ展』に入選しました。続く第16回同展では、水戸にある祖父宅の取り壊しの様子を追った「みんなの家」で連続入選を果たします。その後、水戸芸術館や、近年では、いちはら×アートミックス、鳥取藝住祭、茨城県北芸術祭などで作品を発表し、活躍の場を広げています。
茨城県水戸市を拠点に活動する松本は、日常をテ ー マに、身近な人々や馴染みのある場所などを撮影してきました。2014年以降は、地域の歴史や産業などについて現地でリサ ー チを行い、社会的な事象も捉えた作品を発表しています。
本展では、2011年の震災直後から現在まで、各地で撮影した写真を、新作のスライドショーなどと合わせて展示します。自然がもたらす変化や人の力ではどうにもならないことが起きた時、場面が変わるように状況が 変わります。そのような出来事を経て、何が変わり、何が変わらないのかをテーマに、時間の経過や人々の記憶から紡ぎ出された物語を空間全体で表現します。
作家挨拶
「考えながら歩く」制作メモより
あの日から私たちは、実に多くのものを失ってきた。
本当のことを言うと、別にあの日の前からだって、それはそうだったのだけども、あの日を境に私たちは、自分たちが作り上げてきた時間帯を『失う』こともある、ということを、急に思い出したんだと思う。
どこで生まれても、いつの時代に生まれたとしても、人生はいつも同じだ、と私たち は言い切れるだろうか。
私たちはいまや夢から覚めた。
忘れたままでいるよりは、そのほうが良いんだろ、と思いながら、私たちは地面の上をあてどなく歩く。
松本美枝子
松本美枝子写真展「ここがどこだか、知っている。」 会場風景
「考えながら歩く」マルチスライドプロジェクション、音(2017)
「考えながら歩く」マルチスライドプロジェクション、音(2017)
「考えながら歩く」マルチスライドプロジェクション、音(2017)
「考えながら歩く」マルチスライドプロジェクション、音(2017)
「考えながら歩く」マルチスライドプロジェクション、音(2017)
「考えながら歩く」マルチスライドプロジェクション、音(2017)
「海は移動する」(1:古生代ゴンドワナ超大陸の海底あるいは高鈴山)(2017)
「山のまぼろし」マルチスライドプロジェクション、音、ラムダプリント 茨城県北芸術祭 2016(2016)
松本美枝子
1974年茨城県生まれ。1998年実践女子大学文学部美学美術史学科卒業。 2005年写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)で平間至写真賞受賞。生と死や、日常をテーマに写真とテキストにより作品を発表。主な展覧会に個展「クリテリオム68 松本美枝子」(2006年水戸芸術館)、「森英恵と仲間たち」(2010年表参道ハナヱモリビル)、「影像2013」(2013年世田谷美術館区民ギャラリー)、「原点を、永遠に。」(2014年東京都写真美術館)など。このほか、2014年中房総国際芸術祭、いちはら×アートミックス、烏取藝住祭、2016年茨城県北芸術祭、2017年Saga Dish & Craftに参加。2017年7月より「Reborn-Art Festival 2017」(石巻)に参加。主な箸書に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)。
主催:ガーディアン・ガーデン
協力:エプソン販売株式会社、株式会社堀内カラー 音源制作:白丸たくト